ピース又吉「火花」語る!小説はお笑いより大変

東京ウォーカー(全国版)

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デビュー小説「火花」(文藝春秋)が35万部のベストセラーとなっている、お笑いコンビ、ピースの又吉直樹。今回は、“小説家”又吉と芥川賞・大江賞作家の長嶋有が大激論!他では語られていない「火花」執筆秘話に迫る。

<お笑いで学んだ「表現のルール」>

長嶋「文芸誌『群像』の創作合評で僕が担当した時、『火花』が選ばれて、選考委員3人で話したんです。すると、いっそ私小説みたいに書いたほうが良かったんじゃないかという意見と、もっとエンタメにしたほうが良かったんじゃないかという意見と、大きく分かれたのです。でも、どの意見にも共通してあったのは、作者には『照れ』があったんじゃないかということ。これはどうですか?」

又吉「どうなんですかねえ。もし『照れ』があったとしても、僕やなあと思いますけど。小説の作法は分からないですが、恥を全て書く、やましいことも性的なことも全て書くというふうにやったら、多分、僕に限らず誰かがそれを完全にやりきっても、ちょっと狂ってるように見えると思うんです。ほとんど見世物小屋じゃないですけど、『こいつ、変やな』という面白さだけになった時、それが果たしておもろいんか…」

長嶋「全部剥き出してやればありのままに伝わるかというと、違うふうに見られる」

又吉「この世界で表現されるものである限り、読む側が持っている道徳であったり常識を踏まえないと、自分の思い描いているものが表現しきれないんじゃないかなと。お笑いをやっていて思うことですけどね」

長嶋「そうか。だから、半分『剥き身』感が見えたんだと思う。『怖い』じゃないけど、何か思いを見せてやるという感じが半分見えたような気がして」

又吉「それはあると思います。完全に私小説やったら、もっとマイルドになります。もっと悪口も言わへんし。日常にあるいろいろな出来事が積んでいくようなものになったと思います。それはそれでいいと思うんです。でも、それはエッセイでもできるなあと思ってる」

<「バケモンのコント」と「火花」の共通点>

又吉「『火花』を書く時は自分自身にすると書きにくくなるかなというのがあって、自分と別の、コントを作る時の感覚に近かった。コントの場合だと、例えばバケモンというキャラクターがあったら、バケモンにその瞬間、僕が考えられる最強の台詞を言わすのではなくて、バケモンが持っている言葉の中の最強の言葉を言わせる。バケモンやったらこれくらいのことは言うな、ということやから、僕のことは言わない。それは『火花』を書く時はわりと気を付けたというか。『僕ではない』という距離は一応気を付けました」

長嶋「気を付けてもうまく行ききるのか。十何年、小説を書いていても分からないんだ。そこまで気を付けても、そのバケモンはやっぱり自分だった、みたいなことを思ったりするんですよ。そして、ある日突然、『これはつまり長嶋さんですよね』って指摘されて、『なんで分かったんだ』てことはどこまでもある気がするんです」

又吉「例えば長嶋さんがバケモンのコントを作ったとします。僕がそれを見た時、そのバケモンの中にも僕がちょっとおると思うんです。人の作った人格であっても、自分が共感して、この部分は一緒やなと思うところがあるから、仮に僕がバケモンを僕と距離を離して作ったとしても、すべてが完全には切り離せない。その辺が一緒になることはあまり気にしないというか。でも、最低限、バケモンはこれは知らんやろ、この感情はないよなということは踏まえますね」

<“小説家”又吉と“芸人”又吉>

長嶋「『火花』は『芸人さんが書いたちょっとうまい小説』ではない。『群像』で評論するような『小説』。又吉さんは小説家ってことです。これから1年1冊のペースで書いて、5年で5冊出してほしい。5年くらいたった頃から、やろうとしていることがみんな分かってくると思うから。そんなトライをする甲斐のある世界ですよ。今、すごく大変な提案をしているんですけど(笑)」

又吉「それはめちゃめちゃ理解できるし、その通りやなと思うと同時に、僕は長嶋さんが小説に対して持っている熱と同じかそれ以上に、お笑いに対して熱を持っているんです。毎月、自分のライブをやってるんですけど、今年か来年くらいにちょっとデカイところで、この数年でやってきたことを2時間くらいでやりたいなというのがあって。それと、今回書いて思ったんですけど、小説って大変ですよね(笑)」

長嶋「小説は大変なんですよ。なんかこう、辛気臭い。コントも書いている間は辛気臭いと思うけど」

又吉「そうですね。小説は2~3時間のライブを自分一人で作ることと一緒か、それ以上に労力がかかることなんでね。でも、小説を書くのはめっちゃおもろかったので、なんか、いいなあと思いますけどね」

長嶋「じゃあ2年に1冊でいいですから、ぜひ、書いてください(笑)」

【東京ウォーカー/記事提供=俳句】

※記事の内容は、「俳句」5月号から一部抜粋、再構成したものです

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