「バケモノの子」大ヒットの秘密は“草の根”プロモーションにあった!?【前編】
東京ウォーカー(全国版)
細田守監督の3年ぶりとなる新作アニメーション映画「バケモノの子」。7月11日の公開からわずかひと月で観客動員数300万人を超える大ヒットとなっている。その作品の魅力と、LINE公式アカウントによるプロモーションについて、プロデューサーでありアニメーション映画制作会社、スタジオ地図の代表を務める齋藤優一郎さんと、日本テレビのぽこPさんに話を聞いた。

子どもの成長を励まし未来を肯定するための映画
――まずは、「バケモノの子」を制作した経緯を教えてください。
齋藤「『バケモノの子』は、『時をかける少女』(06年)、『サマーウォーズ』(09年)、『おおかみこどもの雨と雪』(12年)に続く細田守監督の最新作で、交わることのない人間界と異世界を舞台に、ひとりぼっちの少年とバケモノが、強さを求める修行や共同生活を通して、いつしか本当の親子にも負けない絆と互いの成長を得ていく物語です。また、夏の思い出を彩る子どもと大人が一緒に楽しめるアニメーション映画の王道を目指した作品でもあります」
――前作「おおかみこどもの雨と雪」とは雰囲気ががらりと変わった印象です。
齋藤「前作は、細田監督の他界された母への思いや、いつか自分も親になりたいという憧れが映画制作の動機になった作品でした。本作は一児の父親となった細田監督が子どもの成長を見守る中で、これからの未来を生きていく子どもたちの励ましとなるような映画を作りたい…そして、その子どもたちの成長に対して、社会が何をしてあげられるのか?映画を通して考えていきたいと思ったことが映画制作の動機となっています」
――主人公に男の子を選んだ理由は?
齋藤「一つは、前作公開後に生まれた細田監督のお子さんが男の子だったこと。もう一つは、子どもと大人が一緒に楽しめる夏のアニメーション映画の王道を目指そうと思ったとき、脈々としたその歴史の中で、少年が不思議なものと出会い、一緒に冒険をし、一皮むけて大人になっていく成長物語を、現代で普遍性あるテーマと共に、新しい王道にチャレンジしたのが『バケモノの子』なのです」
――主人公の周辺には様々な背景を持った大人が登場します。
齋藤「親に限らない大人や社会が、これからの未来を生きていく子どもたちの成長にどう向き合っていくべきなのか?社会全体に親の役割があり、到達可能な理想を持って、新しい家族のあり方というテーマにもチャレンジした作品でもあると思っています」
――WEBを使ったPRも行っていますね。
齋藤「子どもたちが大人になっていく成長のプロセスというのは世界共通の体験であると思っています。その成長をみんなで祝福し、賛歌したい。そして、この夏に子どもと大人が一緒にアニメ映画を通して、ひと夏の素敵な思い出を作ってもらえたら。そんな事をみんなで考えて楽しんでいきたいと思ったとき、身近なコミュニケーションツールとしてのWEBをみんなで面白く使うことが出来たらなと考えていました。そんな時、日本テレビのぽこPさんに出会ったんです」

キーマン・ぽこPが語るLINE公式アカウントの人情展開(?)
――ぽこPさんは、スタジオジブリで鈴木敏夫プロデューサーとともに活動していたのだとか。
ぽこP「“ともに活動”というと恐れ多く、鈴木さんにいつも仕事を教わっていました。ぼくはWEBが元々大好きなのですが、スタジオジブリはお客さんからちょっと離れた場所にいるブランドイメージがあったので、WEBでのインタラクティブなプロモーションを控えていました。一方、スタジオ地図の細田監督作品は、『サマーウォーズ』でネット空間をモチーフにするなど、WEBとの相性も抜群に良い。そこで、ジブリではやらなかったWEBプロモーションを存分にやろうと思いました」
齋藤「『バケモノの子』は新しいアニメーション映画の王道にチャレンジをしたエンタテインメント作品。だからこそ、その楽しさや感動も、これまでとは違った新しい面白さとチャレンジで送り出していきたいと思っていました」
ぽこP「ジブリの鈴木さんの宣伝手法で面白いのが、草の根運動を仕掛けて、“味方・共犯者”を見つけていくんです。僕も『バケモノの子』やスタジオ地図に賭けてくれる会社や人を見つけるために、100社ぐらいのWEB企業を周りました。そうして出会ったのが、LINEの出澤剛社長です。出澤さんが細田監督作品のファンということもあって『LINEで面白いことをやりましょう!』と、トントン拍子で話しを進めていただきました。作品はもちろん、スタジオ地図の認知向上もLINE上で展開しました」
――公式アカウントはキャスト発表と予告編が公開された直後の、4月16日に開設されました。
ぽこP「当初、7月の公開間際に始めるつもりでしたが、LINEさんから「期間が長いほど友だち数が増えますよ!」とアドバイスされて。そんな理由があり、キャスト発表に間に合わせました。LINEさんの言うとおりで、おかげさまで4カ月で約26万人が友だちになっています」(後編へ続く)
【東京ウォーカー/取材・文=杉山元洋】
■齋藤優一郎(さいとう・ゆういちろう)
「時をかける少女」以降、細田守監督作品のプロデューサーを歴任し、その制作の拠点となる、スタジオ地図の代表取締役を務める。
■ぽこP(ぽこぴー)
はてなでのアルバイトののち、スタジオジブリを経て、日本テレビ放送網に入社。「バケモノの子」ではアソシエイトプロデューサーとして、スタジオ地図のWEB関連のプロモーションを一手に引き受けている。
この記事の画像一覧(全8枚)
いまAmazonで注目されているスタジオジブリの商品
※2025年05月02日12時 時点の情報です
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!
ゴールデンウィーク期間中に開催する全国のイベントを大紹介!エリアや日付、カテゴリ別で探せる!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介