25歳女子のリアル恋愛を描く…映画「ピース オブ ケイク」田口トモロヲ監督にインタビュー
関西ウォーカー
これまでの人生、恋愛も仕事も、流されるまま、なんとなく生きてきた、梅宮志乃、25歳。心機一転、引っ越しをしたその夜、新しい隣人・京志郎と出会う。しかも京志郎は、新たなバイト先の店長だった! 原作は幅広い層から絶大な支持を得るマンガ家・ジョージ朝倉の「ピース オブ ケイク」。これまで「アイデン&ティティ」「色即ぜねれいしょん」で、ロック・ミュージシャン、男子高校生のほろ苦い青春を切り取ってきた田口トモロヲ監督が、“25歳・女子のリアル恋愛”をどう描くのか。来阪した田口監督に聞いてみた。
―この作品の監督のお話が来たときはどういった印象でしたか?
自分でも「大丈夫か!?」と(笑)。原作のファンの方も多いと聞いていましたし、ジョージさんのお名前は知ってたんですが、この作品は読んだことがなかったので。お話をいただいてから読んで、一筋縄ではいかないラブストーリーだなと。まず、自分が50過ぎたオッサンで25歳の女子の恋愛を描けるのかっていう不安はありましたね(笑)。
―原作を読まれての印象はどうでしたか?
背景になっているカルチャーが自分が影響を受けたものと一緒だったんです。主人公の志乃が働いてるレンタルビデオ屋さんの場面で、出てくる作品の名前だったり監督の名前だったり。あと、劇団です。アングラ劇団や小劇場は、自分が体験したものだったし。登場人物の名前が、仁義なき戦いの登場人物の名前からきてるんだってことにも気付いて。それで、ジョージさんが好きなもの、影響を受けたものと自分に共通項があると。そこを入口に探っていけば、もしかしたら自分にもできるかもしれないなって。脚本の向井君にも読んでもらって、できるだろうという結論に至って、やってみます!となったんです。
―主人公が25歳の女の子ということで、意識したことはありますか?
全体的に男子目線、男目線の映画にはしたくないってことは注意してました。男から見た女性像だよねって言われない作品にしたいなって。それはもう、全女子力を総動員しました(笑)。スタッフに女性がいたらリサーチ、出演者の女優さんにも脚本を読んでどう思いましたかって。違和感があったら言ってもらってました。
―主人公・志乃を演じた多部さんと、京志郎を演じた綾野さんは意外なキャスティングでしたが、役作りや演技についてお話はされましたか?
綾野くんは体が動く俳優さんなので、いろいろ動いてくださるんですけど、京志郎には太い幹のような本能的に優しい大きな人間っていうイメージがあったので、女性の言葉ひとつひとつをどっしりと構えて受け止めるっていうイメージを伝えて、話し合いながら作っていきました。
―多部さんとはいかがでしたか?
撮影が始まって立体化していったときに、ここは違うと思いますって実際に動いてみて言ってもらって、じゃあこうしましょうかっていう形で現場の共同作業で作っていきましたね。
―物語が進んでいくうちに、どんどんお二人が志乃と京志郎に見えてきて…
多部さんは僕もよかったと思います。志乃のキャスティングは難しいと思うんですよね。リアルで等身大に見える人は誰かってなった時に、多部ちゃんしかいないんじゃないかってなって。多部ちゃんは、ちょうどいい。主人公がおとぎの国の人に見えてしまったら、ピース オブ ケイクの原作の意義がなくなりますからね。原作を読んだ時、シンデレラの物語、夢見る話ではないと思ったんです。もちろん夢見るような表現もあっていいと思うんですけど、そういうものばかりじゃないんで。ビジュアルも含めて、共感できるキャスティングという点にはすごく気を使いました。
―一番見てほしい、気に入っているシーンはありますか?
見てほしいところは…うーん、全部なんですよね…(笑)。向井君が作り上げてくれた最終的な脚本は、5巻を凝縮させたうえで、志乃と京志郎の恋愛がメインになってる。その間に劇団とかが入ってきて、構成上非常にバランスのいい脚本でした。どこも気を抜けない、息を抜くところのないシーンの連続だったので、ココっていうのは…。前半の志乃が京志郎に好きって告白しちゃうところは、僕にとってはまずひとつの難関で、納得できるまでやろうって思ってました。
―原作でもとても印象的なシーンですよね。
原作を好きな人を納得させたいっていうのはありました。あとは、原作者の方に喜んでもらいたいっていうことは、最初の目標として思ってました。原作ありきなので。
―劇団のシーンなどは細かな部分まで原作と同じで驚きました。
劇団のビジュアルは、ほんとマンガのままです。「マンガのまんま動けばいい、あなたたちは」って(笑)。で、関西の劇団鹿殺しさんにお願いしました。現在進行形で旬な劇団にやっていただけたので、描写とかに嘘はないか監修してもらって。
―映画「ピース オブ ケイク」をご覧になる方にメッセージをお願いします。
メッセージはこの映画自体ですね。言葉にできないから映画にしましたっていうのが正直な気持ちです。でも敢えて…敢えて言うと、「東京のリアルな背景のなかで堂々巡りをしながら自分たちの真実を見付けようとする恋人たちのオルタナティブなラブストーリー」っていうコピー…(笑)。それぞれのキャラクターたちにも素直に感情移入できるように仕上がってると思いますので、ぜひ見てください。
―最後に、大阪でよく食べられるものなどあれば教えてください!
こないだお芝居で大阪に来た時に行ったんですが、揚子江ラーメンってあるじゃないですか。あれ、めっちゃおいしいですね。今、こってり系が多いですけど、年寄りにはちょっと胃にキツイんでね(笑)。今日なに食べたいですか?って聞かれて、「揚子江ラーメン」って答えちゃうとすっごい安上がりになっちゃうんで、今まで言わなかったんです。そうはさせないぞって(笑)。
【取材・文=松浦紗希】
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