フィギュアスケートJr大会で見た“未来のスター候補”【後編】
東京ウォーカー(全国版)
8月28日(金)から30日(日)まで、ダイドードリンコ・アイスアリーナ(東京・東伏見)にて東京夏季フィギュアスケート・ジュニア競技大会が開催された。通称、夏季ジュニアと呼ばれる伝統あるローカル大会であり、かつては関東一円のジュニア以下の選手がこぞって参加していた。昨今は選手数の増加に伴い、東京都連盟所属選手を中心とした大会となっている。新プログラムのお披露目をする場として活用する選手も多く、夏の練習の成果を間近で見られる大会でもある。今回、飛躍的な成長を見せてくれた選手のなかから、前後編に分けて数名を紹介したい。

佐藤伊吹(さとう・いぶき) / ジュニア女子
今回は得意とするループジャンプで痛恨のミスを犯してしまい、低い得点・順位に留まってしまった。当初予定していたトリプルループ-トリプルループの連続ジャンプが入らず、2つ目のループがダブルループのダウングレード…にもかかわらず後半の3連続ジャンプでダブルループを2度実施してしまった。この結果、ダブルループを3度実施したこととなり、3連続ジャンプがキックアウトの扱いとなってしまったのだ。
ところで佐藤選手、ノービスBの頃に注目を集めた選手だったが、その後、不調に陥った時期があった。この点について聞いてみたところ、「けがの影響でルッツ、フリップといった難度の高いジャンプの練習を控えなければならない時期が長かった」とのこと。得点源のジャンプを思うように練習できないことはさぞ歯がゆかったことだろう。
そのけがもようやく癒え、満足のいく練習ができるようになったことが復活につながったようだ。トリプルループの連続ジャンプは世界でもなかなか成功例のない難度の高い技。加えてジャンプだけでなく、スピン、スケーティングなど他の要素も上手な選手だ。「全日本ジュニアでは10番以内に入りたい」そうだが、それ以上の活躍が十分に期待できそうだ。

松原星(まつばら・あかり) / ジュニア女子
この夏、その復活振りに最も驚かされた選手だ。2011年の全日本ノービスBクラスで優勝。その時の2位が本田真凜、3位が樋口新葉と聞けば、当時彼女がいかに期待を集めた存在だったかが分かることだろう。ところがその後、松原は長いスランプに陥る。その原因を「けがの影響もありましたが、それよりも精神的なものが大きかったんです」と自己分析する。
全日本ノービスで優勝し、耳目を集める存在となったことで極度の緊張を覚えるようになったそうだ。実際、練習では難しい技も継続して成功していた。ところが試合になるとその実力が発揮できない。それがこの夏、関東サマートロフィーのフリーで112点、続く夏季ジュニアでも109点という圧巻の演技を連発。昨シーズンは、全日本ジュニアへの出場すら叶わなかったことが嘘のようだ。
どのように緊張を克服したのだろうか?「以前は緊張のためか、ふわふわ浮いているような感覚で滑っていました。試合になると、練習の時のようなしっかりしたスケーティングができなくなっていたんです」。そこを徹底的に修正したのだという。その結果、以前であれば転倒していたようなきわどい降り方のジャンプでも、今は転倒せずに立てるようになった。少しずつ“自分を信じて滑る”ことができるようになったのだ。
「去年は東日本ジュニアで落ちてしまい、全日本ジュニアに出られなかったので、今年は全日本ジュニアでトップ選手と一緒に滑りたい。ショートプログラムではまだ緊張してしまうので、それを乗り切ることが課題です」。
まだまだ半信半疑のところがあるようで、自信のコメントよりも課題を多く口にする彼女。だがエレメンツの内容と得点は、十分に国際大会でも通用するレベルだ。全日本ジュニアで入賞し、国際大会への派遣も勝ち取ってほしい。

紀藤裕香(きとう・ゆか) / ジュニア女子
熱心なフィギュアスケートファンの間では良く知られた存在で、表現力に秀でた選手だ。今年、彼女はペアへの転向を検討し、パートナーを探すトライアルにも参加した。この先、どんな競技生活のプランを考えているのだろうか。「カップル競技が好きなんです。ペア、アイスダンス、どちらにも興味がありますが、相手が見つかればペアをやってみたい。ただ今季はシングルに専念します」。
アクロバティックな技にも魅力を感じているのだという。「踊ることが大好きですが、同時に投げられたりするのも好きなんです」。今季のプログラムはまだ完成しておらず、この日も本来の構成よりも難度を落として演じたという。「まずはプログラムを仕上げることに全力を注ぎます。東京ブロックではもっといい演技をしたい。そして今年が最後の全国中学校大会なので、フリーで最終グループに入ることが目標です」。将来のカップル競技への転向も視野に入れ、もっと力をつけたいという。

樋口新葉(ひぐち・わかば) / ジュニア女子
この大会で最も注目を集めた選手である。昨シーズンの活躍で一躍、日本のエース候補と目されるようになったが、このオフはけがに苦しみ、満足のいく調整はできなかったようだ。「練習ではあまりうまく行かなかったんですが、試合では大きなミスなく滑れたので良かったと思います」。
3月の世界ジュニア選手権の折、新シーズンの目標の1つとしてトリプルルッツ-トリプルループの連続ジャンプの成功を掲げていたが、それがこの試合で認定されたことで一定の手ごたえは掴んだようだ。とはいえ調整不足は明らかで、この試合の直後に行われたジュニアグランプリシリーズのオーストリア大会では5位と苦戦。ファイナルへの進出は苦しくなってしまった。だが長いシーズンは始まったばかり。調整の遅れを取り戻し、全日本ジュニアでは本来の輝きを見せてもらいたい。今季中のトリプルアクセルの成功、そして世界ジュニア選手権優勝という目標は変えない、そんな頼もしい言葉を聞くことができた。【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】
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