東京とんかつ会議・殿堂入り店「すぎ田」

東京ウォーカー

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おいしいとんかつを求めて、東京中のとんかつを食べ歩く3人の食いしん坊・山本益博、マッキー牧元、河田剛が同じ店をそれぞれ採点する「東京とんかつ会議」。そのなかでも、3人が太鼓判を押す店舗が「東京とんかつ会議・殿堂入り店」。審議の結果、第5回の殿堂入り店として選ばれたのは浅草にある「すぎ田」だ。

すぎ田「とんかつ ロース」(2100円)


【写真を見る】キツネ色に揚がり香ばしい「とんかつロース」(2100円)


東京とんかつ会議メンバー3人による採点表


山本益博「東京を代表するとんかつになる日は遠くない」


私が小学生だった昭和30年代、上野と浅草はとんかつの聖地だった。上野の「双葉」「蓬莱屋」「ぽん多」は“とんかつ御三家”と呼ばれ、浅草にも洋食屋以外のとんかつ専門店が何軒もあって、それぞれの店に御贔屓があった。我が家は上野と浅草の中間、永住町にあって、私の一番のお気に入りは国際劇場(現在の浅草ビューホテル)の横にあった「河金」で、とんかつにもかかわらず、自分でナイフ・フォークで切り分けて食べるのがお気に入りの理由の一つだった。「百もんめ(約360g)」のとんかつが名物で、小学6年生の時これをペロリと平らげて、主人の河野金太郎さんに頭を撫でられた。「昭和のとんかつ小僧」誕生の瞬間でもあった。この「河金」はすでにないが、それに代わるとんかつ専門店と言ってよいのが「すぎ田」である。

洋食出身の初代の志を引き継いだ2代目が、立派なとんかつを揚げている。店は何より清潔感に溢れ、とんかつを揚げる二つの鍋はいつもピカピカに磨き上げられている。とんかつはきつね色に香ばしく揚げられ、豚肉はもちろんのこと、揚げられたパン粉の味は出色のうまさである。とんかつにとって、衣がいかに重要であるかを教えてくれる最適の店と言ってよい。この衣同様に、ご飯、味噌汁、お新香に心血を注げば、浅草どころか東京を代表するとんかつになる日はそう遠くないはずである。「とんかつ ロース」(2100円)の他「とんかつ ヒレ」(2400円)「エビフライ」(2500円~)もおすすめである。(山本)

マッキー牧元「江戸の粋を感じさせるとんかつ」


初めて訪れたのは20数年前だろうか。全てに渡って丁寧な仕事に目を丸くしたが、何より感心したのが、とんかつの切り分け方だ。他店より細い幅に切られるそれは、一度口にしてみると分かる。ロースもヒレも、肉の厚み、肉の幅、質から考え、口に入れた時に最もおいしくなるように切られた幅なのだ。持て余すことがない。一切れ一切れが完成された料理となって、満足させる。そして、次のもう一切れへ箸を伸ばさせる喚起を呼ぶ。豚肉への敬意を感じる切り方は、無駄がなく、押しつけがなく、さらりとして、江戸の粋を感じさせるとんかつだった。

今は先代から受け継いだ息子さんが厨房に立つ。余談ながら、オムレツ(1200円)はまだ親父さんには追いつかないものの、とんかつは並びつつある。先代の後半は、切り幅の細さから、やや衣が肉と剥がれている点もあったが、今は見事。カリリと音を立てる細やかな衣が、ピタリと張り付いて、肉を盛り上げる。ただ、粗さが全く見当たらなかった先代の衣に比べ、若干バラつきが見られ、その点で2点の評価とした。

肉は、しっとりと甘い肉汁から甘い香りがにじみ出て、脂身もきれいに舌の上で溶けていく。とんかつ屋としては十二分においしいのだが、第二次とんかつ黄金時代、極めて上質な豚を使い新しい店が増えているなかで、「すぎ田」なら、なお上を目指せるはずだ。

油は軽く香ばしく、最後の一切れまで軽い。また、キャベツに乗っている面も蒸れておらず、カリッとした衣が楽しめた。他店より細く切られるキャベツも、 みずみずしい甘味に溢れている。ソースは甘めのとんかつ、ウスター、リーペリンと用意されており、前者二つは、甘味に頼ることのないコクがあっておいしい。また、リーペリンは、キャベツやとんかつの端の脂身が多い切り身にかけるとおいしい。ご飯も上出来。根菜の土の香りと豚肉の甘味が、見事に合う豚汁もいい。白菜にミョウガとショウガの浅漬け、キュウリ、大根の新香もシンプルながら、とんかつの合いの手としての役割を見事に果たしている。(牧元)

河田剛「おいしいとんかつを食べさせる雰囲気が漂う店」


清潔な白木のカウンターときれいに磨かれた二つの鍋、それを見ただけでおいしいものを食べさせる雰囲気が漂っている。今は二代目がとんかつを揚げている。ロースかつとご飯、豚汁を頼んだ。温度の違う二つの鍋を使いながら、じっくりと揚げている。とんかつの肉は特に銘柄豚の使用などは謳っておらず、比較的脂身が少ないが、旨味は十分にある。

きつね色に揚がった衣はパン粉がきめ細かく、油切れもよいが、惜しむらくは皿に接する部分が剥がれやすい。キャベツは時々まとめて切るようだが、開店時だったので切り立てだった。ソースはとんかつソース、甘口ウスターソース、リーペリンの三種類だが、それほど個性の違いが感じられないので、もう少し工夫があってもよいかもしれない。ご飯はおいしく、新香は昆布で味を補強していた。豚汁は野菜の旨味も出ておいしいが、ややとんかつに勝ってしまうきらいがあった。(河田)

【東京ウォーカー】

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