土屋太鳳、ターニングポイントは「香川照之との出会い」

NHK連続テレビ小説「まれ」でヒロインを演じた土屋太鳳。2015年の大ヒットドラマとなった「下町ロケット」での好演も話題となり、2015年最も大きく飛躍した女優の一人となった。2016年はテレビアニメ「僕だけがいない街」(放送中)での初の声優業へのチャレンジで幕を開けた。本作は、三部けいによる人気コミックが原作の時間逆行サスペンス。「あの時こうしていれば」との思いが物語を引っ張るが、土屋自身にとって「あの時があるから今がある」と感じるターニングポイントはあるのだろうか？

うまくいかない現実を抱えた青年の藤沼悟が、自分だけの時が巻き戻る現象“リバイバル (再上映)”に悩まされつつ、“同級生の死”や“救えなかった友人”など、過去に起きた出来事に向き合い、もがく姿を描く。土屋は10歳の悟の声を演じている。

主演映画『orange-オレンジ-』(15)に続いて、時間を逆行しながら命の大切さを噛みしめる内容の作品となったが、「不思議ですね」と穏やかに微笑む。「『鈴木先生』もそうですが、命に関する作品に携わらせていただくことが多くて。『まれ』で命を育んで、『orange-オレンジ-』と『僕だけがいない街』で大切な人を守ること、命の大切さを知って。悟は“大切な人を救いたい”という使命感を持っていますが、私もそういった使命感を持って演じたいです」

作品を重ねる毎に「命に対する大切さや重みを感じています」とじっくり語る。「その重みを知る分、苦しさや辛さも体験します。でも最近、その辛さは意味があるものなのだと実感しているんです。例えば、お仕事をしていて不安になる時もある。でもそれにも意味があるから、不安に思うことを怖がらず、意味があると信じて過ごしています」。作品を通して女優としての成長だけでなく、人としての強さも身につけてきたようだ。

そんな彼女にとってのターニングポイントを聞いてみると、「香川照之さんとの出会い」と先輩俳優の名前を挙げた。「『トウキョウソナタ』(08)で共演させていただいて、撮影自体は2日間しかご一緒できなかったんですが、『太鳳が女優になるなら、カメラマンさん、照明さん、録音部さん、記録さん、美術さんなど本当に色々な方がいて、やっと自分がお芝居をできているのだから、絶対に感謝を忘れないように』と教えてくださったんです」

さらには「『自分が不利かなと思ったら、大きな声で挨拶しなさい』と言っていただいて、それで受かったのが『龍馬伝』のオーディションだったんです。朝ドラに決まった時も一番にメールをくれたのが香川さんでした。すごく支えていただいて本当に感謝しています。恩返ししていければ良いなと思います」と、大切な出会いに感謝の気持ちが溢れ出す。

2015年の大きな出会いを振り返ってもらうと、「まれ」の共演者を次々と挙げながら「皆さんすごく優しくて、本当に楽しかったです！」と声を弾ませる。「その時は必死でしたが、改めて素晴らしい方々の中でお芝居をさせていただいたんだなと思って。先日、常盤貴子さんにお会いしたんですが、全然久しぶりという感じがしなくて。お互いに不思議だねと話していたんです」

2015年は「駆け抜けた1年、出会いと迷いを得ることができた1年でした。ありがたいです」と輝くような笑顔を見せる。女優道を駆け上がる彼女だが、「僕だけがいない街」でとりわけ印象に残ったセリフがあるという。「『君が信じてくれたから、俺はまだ頑張れる』というセリフがあるんですが、私は作品を見てくださる方がいて、感想を伝えてくれる人がいるから頑張れると思います。日々、そのことを実感しています」。周囲への感謝を胸に、ある使命感すら抱きながら邁進する彼女。2016年も土屋太鳳が大いに新たな風を吹かせてくれそうだ。【取材・文/成田おり枝】