本拠地シアトルで迫る!“流通の巨人”Amazonの謎

東京ウォーカー(全国版)

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ショッピングだけでなく、音楽から映画まで、エンタメサービスも展開する巨大企業、アマゾン。その実像は意外と知られていない。そこで、2015年12月某日、同社の多様性がどのような環境で生まれるのかを探るべく、アメリカ・シアトルの本社を訪ねた。

キャンパスを案内してくれた広報部のティール氏。キャンパス内にもあるローカルのコーヒーショップ「Little vita」がお気に入り


シアトル・タコマ国際空港へは成田国際空港から空路で約9時間。空港からアマゾン本社のあるユニオン湖に向かう、フリーウエイ5号線から見るシアトルは落ち着いた港街で、横浜や神戸に似た雰囲気を持っている。航空機メーカーであるボーイング社の研究所や、イチロー選手が所属していたシアトル・マリナーズの本拠地「セーフコ・フィールド」、さらには、スターバックスの本社を横目に見ながら、20分ほどでユニオン湖に辿り着いた。

「デイ・ワン・サウス」の屋上からはユニオン湖南岸の美しい景色が楽しめる


“コーヒーシティ”のシアトルらしく、本社屋のスターバックスをはじめ、キャンパス内には地元のコーヒーショップなど10軒が立ち並ぶ


アマゾンの歴史は、同社CEOジェフ・ベゾス氏が、カナダとの国境に近いシアトルでオンライン書店を開設した1995年に始まり、2010年にユニオン湖南岸のサウス・レイク・ユニオン地区に拠点を移し現在に至る。湖からほど近い「デイ・ワン・ノース」という風変わりな名前のビルに入ると「アマゾンにようこそ!」と、案内役の女性、ティール氏が出迎えてくれた。

ビルにはロゴなどは見当たらず、建物の名前が控えめに表示されるだけと至ってシンプル


「アマゾニアンと呼ばれる同社の従業員は全世界で約23万人。シアトルのこの一帯には約2万人が働いていて、大学のキャンパスのように複数のビルに分散していることから、“アマゾンキャンパス”と呼ばれています」とティール氏。

どの建物にも、社のエピソードにちなんだニックネームがつけられている。例えば、「デイ・ワン・ノース」は、ベゾス氏が株主に宛てた手紙に書いたように、“まだ1日目(Still Day1)の気持ちで仕事に取り組む”という同社の姿勢を表した言葉で、その南側にあるのが「デイ・ワン・サウス」だ。

レンガ造りの建物は、アマゾン最初の顧客ウエイン・ライト氏にちなんで命名された


その他のビルは、アマゾンから最初に本を買った顧客の名前である「ウエイン・ライト」や電子書籍リーダー「Kindle」の開発コードネーム「フィオナ」など、ユニークな名称を持つ。しかし、周辺にはアマゾンの看板やロゴマークのようなものはほとんど見られないし、どのビルも世界最大の流通企業の社屋としては拍子抜けするほどシンプルだ。

その理由をティール氏に尋ねると「アマゾンはfrugality(倹約)の精神を大切にしており、お客様のメリットにならないものにはコストをかけません。その象徴の1つがオフィスで使う机の“ドアデスク”(ドア用の木材で作られた簡易デスク)。創業時にホームセンターで買ったドア板に、自分たちで脚をつけて質素な机を作ったエピソードを受け継いだものです」と笑いながら話してくれた。

ドア板で作ったデスクと、チームでアイデアをシェアするための大きなホワイトボードが特徴のミーティングルーム


また、キャンパスを散策していて気づくのは、多種多様なイヌを連れた従業員が次々と社屋に入っていくこと。「登録すれば一緒に仕事場に入れるので、1000頭のイヌが飼い主と出勤しています。アマゾンではイヌを大切にしており、最初に出社したイヌ「ルーファス」にちなんだビルがあるほど。それから、自転車や路面電車など、クルマ以外で出勤する割合が半数以上というのもアマゾニアンの特徴ですね」とティール氏。

愛犬と共に出勤するアマゾニアン


アマゾンの半数の社員がクルマ以外の交通機関で通勤。自転車を停めるサイクルラックも充実しており、会社もエコ通勤をバックアップしている


急増するアマゾニアンのための新社屋を建設中


次に向かったのは、2015年12月にできたばかりの36階建て新社屋「ドップラー」。さらに、急速な事業領域業務の拡大に伴い増え続けるアマゾニアンの仕事場を確保するため、キャンパスから歩いて10分ほど離れたダウンタウン地区に高層ビルを建築している最中だという。

ダウンタウンに建設が進む新社屋を案内してくれた広報部のサム氏。新社屋は最先端のリサイクルエネルギー技術を組み込んでいるのだそう


新社屋の案内役、サム氏によると「『ドップラー』は人工知能を搭載したデバイス『Amazon Echo』の開発コードネーム。2016年の夏に完成する『トランスペアレント』に加え、球体型の植物園と会議スペースの複合施設『スフィア』(仮称)も建設中です。同施設は来年には完成し、1年かけて35カ国から集めた300種類の植物を植え込みます。新社屋は地域コミュニティーの一員として、地元に貢献する存在でありたいので、社員でなくても利用できるように検討しています」とのこと。

2017年の完成へ向けて急ピッチで工事が進む「スフィア」(仮称)


複合施設「スフィア」(仮称)の完成予想図、シースルーの3つの球体の中に約300種類の植物が植えられる ※写真はイメージ


「トランスペアレント」が完成する来年には1万5000人の社員が引っ越し、4~5年後には5万人を超えるオフィス街となる予定なのだとか。スターバックス1号店があることで知られる、パイク・プレイス・マーケットからも近い新社屋は、シアトルの新しいランドマークになりそうだ。【東京ウォーカー/取材・文=杉山元洋、撮影=恩田拓治】

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