山田太一、脚本を書くコツは?「相席でヒントをもらった」

東京ウォーカー(全国版)

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今もなお語りつがれる傑作ドラマ「ふぞろいの林檎たち」シリーズや「男たちの旅路」「岸辺のアルバム」などの脚本を手がけた名匠・山田太一。山田が、女性をメインターゲットにして、映像クリエイターを育成する「ラブストーリー・クリエイター・スクール」の特別講師として1月30日に登壇した。

時代を経ても色褪せることのないドラマたちを、山田はどんなアプローチをして生み出したのか?インタビューして制作秘話を話してもらった。

もともと松竹に入社後、木下惠介監督の下で助監督を務めていた山田は、その後退社し、脚本家としての道を選んだ。当時の映画やドラマの傾向について「映画は、美男美女が恋をしてどうこうなる。そして、周辺の人物が奉仕する、といった作品が当時は多かった。でも、テレビドラマにはもっと時間がある。物語を広げて描けるのが面白かったです」。

テレビドラマ「想い出づくり。」は、田中裕子、森昌子、古手川祐子という、今でいうトリプルヒロインを迎えているが、当時は画期的なドラマだった。「3人の女の子を出して、『本当はあなたが主役だと思って書いたんです』と、3人に言えるような作品を目指しました(笑)。それが上手くいったので、その人数を増やした拡大版『ふぞろいの林檎たち』を書いたんです」。

深い洞察力を持ち、登場人物の心のあやを丁寧にすくい取っている山田の作品群。普段から人をよく観察し、それを作品に反映させるのだろうか?「若い頃は、人のセリフを聞くということがとても大事でした。その頃のエッセイに書いたのですが、当時は(コミュニケーションをとろうと)食堂の“相席”。向こうも1人じゃ駄目です。2人連れとかね。3人とか。そのうち様々な内輪の話などもしはじめる。そういうヒントをよくいただきました」。

実際、山田作品では男性だけでなく女性の心理描写もリアルに描かれているが、山田は「女の人は永遠に分からないです」と柔和な笑顔を見せる。「訓練ですね。たとえば、電車に乗っていて、人の話を聞いたなかで、『うわあ。これは良い』と思うことは、ライターならよくあることです。でも、実際、それを自分のものとして使おうとすると、タッチが合わなかったりして使えなかったりもしますし」。

役者陣は、ごく自然体で演じているように見えるが、実はほとんどアドリブはなかったそうだ。「セリフは1つ1つに気を遣っています。その代わり、アドリブは言うなと。アドリブを1人許せば、他の人がもっと言いたいとなり、収拾がつかなくなってくるので」。

活き活きしたセリフ回しがとても心に響くが、手掛けるにあたり、何かコツはあるのか?「ありきたりなんだけど、リアルなのが一番良いね。ストーリーを運ぶためだけのセリフはなるべく書かない方が良いと思う。たとえば帰ってきた時、普通は『ただいま』と言うけど、それを言わないようにすることを考える。たとえば『俺』と言うだけとか、少年だったら『おかあさん、いまね』とか言わせる。なるべく、ありきたりなセリフは避けますが、これみよがしじゃダメ。それは、言うが易しで難しいんだけどね。連続ドラマだと、ずっと登場人物たちと付き合っていくわけだから、あまり恥ずかしいセリフを言わせちゃかわいそうでしょ」。

セリフ1つ1つをとても大切に紡いできた山田。全ての作品からは、人間そのものへの深い愛も感じられるし、もしかして脚本家に大切な資質というのは、そこなのかもしれないと改めて感じたインタビューだった。【取材・文/山崎伸子】

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