国立新美術館にて”水の都ヴェネツィア”を彩った名画展
東京ウォーカー
東京・乃木坂にある国立新美術館は、7月13日(水)から10月10日(祝)までの期間、水の都ヴェネツィアのルネサンスを彩った絵画が一同に会した「日伊国交樹立150周年特別展 アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」を開催する。
本展では、15世紀から17世紀初頭にかけての“ルネサンス期のヴェネツィア絵画”に焦点を絞り、選りすぐられた約60点の名画を展示する。ジョヴァンニ・ベッリーニからクリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼまで、名だたる巨匠たちの傑作が一挙に来日。ヴェネツィア盛期ルネサンス最大の巨匠ティツィアーノが晩年に手掛けた祭壇画の大作「受胎告知」(サン・サルヴァドール聖堂)が特別出展されることも、本展の大きな見どころとなる。
ルネサンスの黎明 15世紀の画家たち

15世紀のヴェネツィア派最大の巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニは、父ヤコポ・ベッリーニの工房で兄ジェンティーレと共に修行・共同制作した後、次第に油彩技法を極めながら、祭壇画や肖像画を多数手掛けた。神々しくも人間味を漂わせるベッリーニの「聖母子」、通称「赤い智天使の聖母」は、16世紀にヴェネツィアに花開くことになる盛期ルネサンスを予告するものだった。イエスを膝の上に抱く聖母のポーズは、ビザンティン美術の定型に基づいており、視線を交わす母と子の姿には、あたたかな感情のやりとりが感じられる。
黄金時代の幕開け ティツィアーノとその周辺

16世紀・盛期ルネサンスのヴェネツィア画壇の第一人者として君臨したティツィアーノ。この巨匠の晩年を代表する作品の1つが、サン・サルヴァドール聖堂の右側廊の祭壇を飾る大作「受胎告知」である。聖なる神の子が、人間であるマリアのうちで生身の肉体を授かる神秘が、この世ならぬ輝きを放つ色彩そのものによって見事に表現された本作は、当時の批評家から“色彩の錬金術”と評されたティツィアーノのまさに錬金術の極みといえる。
3人の巨匠たちティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノ

16世紀後半、ヴェロネーゼと並んでヴェネツィア画壇に君臨した巨匠ティントレットは、ヴェネツィアの聖堂や同信会館、ドゥカーレ宮殿などの公共建築のために、膨大な数の大規模な絵画を次々と手掛けた。かつて同地のサン・スティン聖堂の祭壇を飾っていた「聖母被昇天」には、使途たちの囲む石棺から聖母が天に昇る様子がダイナミックに描かれている。絵の前に立つと、聖母の上昇する動きや、驚きの身振りをとって聖母を仰ぎ見る使途たちの視線に導かれて、感情的に画中に誘い込まれ、奇跡を目撃しているかのような気持ちを味わうことができる。
ルネサンスの終焉 巨匠たちの後継者

パドヴァ出身で、1614年よりヴェネツィアを拠点に活動したパドヴァニーノは、アンニーバレ・カラッチに端を発した17世紀初頭のローマの古典主義的な流れを汲みつつ、一方では16世紀前半のティツィアーノ作品を重点的に学び、盛期ルネサンスのヴェネツィア派ならではの鮮やかな色調と柔らかな筆触の魅力を17世紀に伝えてきた。本作「オルフェウスとエウリュディケ」は、詩人のオルフェウスが、亡き妻エウリュディケを冥界から地上に連れ戻そうとするギリシャ神話の一場面を表している。
ヴェネツィアの肖像画

ティントレットは、大画面の祭壇画や装飾画を精力的に手掛ける傍らで、肖像画にも優れた手腕を発揮した。「サン・マルコ財務官 ヤコポ・ソランツォの肖像」は、ヴェネツィア統領に次ぐ高位の役職“サン・マルコ財務官”を1522年より務めたヤコポ・ソランツォの最晩年の肖像画で、サン・マルコ広場に面する財務官の庁舎に飾られていた。豪奢な質感が巧みに演出された財務官の緋色の衣服を纏い、射るような眼差しを放つソランツォは、堂々たる威厳にあふれ、精神の老練さをも感じさせる。
ヴェネツィアの画家たちは、自由奔放な筆致による豊かな色彩表現、大胆かつ劇的な構図を持ち味とし、感情や感覚に直接訴えかける絵画表現の可能性を切り開いてきた。国内ではほとんど例がない、ヴェネツィア絵画の中でルネサンス期に焦点を絞った本展。水の都ヴェネツィアのルネサンスを彩った名画の数々を、ぜひこの貴重な機会にご堪能あれ。【東京ウォーカー】
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