シリコンバレー流で地域づくり!地域ビジネスの仕掛け人を直撃

東京ウォーカー(全国版)

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ここ数年、地方創生やふるさと納税など、“地方”関連の話題が盛り上がっている。今回はその中でも「地方×起業」にまつわるトピックに注目し、地方の起業環境や地方で働く魅力などについて、地域ビジネスプロデューサーの齋藤潤一さんに話を聞く。

齋藤潤一さんはNPO法人「まちづくりGIFT」代表理事を務めながら、地域ビジネスプロデューサーとして活躍中


齋藤さんはアメリカ・シリコンバレーのITベンチャー企業での活動を経て、帰国後はNPO法人「まちづくりGIFT」を創設。自身が移住した宮崎県では「宮崎スタートアップバレー」を立ち上げるなど、日本各地で地域ビジネスや起業を支援する活動に数多く携わってきた。齋藤さんはなぜ地方でのビジネスに目を向けたのだろう。

【写真を見る】伝統的工芸品など地方に眠っている価値を掘り起こすことがビジネスチャンスへ繋がっていく


「日本の地方にはたくさんの資源が眠っています。ビジネスチャンスに恵まれているという点だけ見ても、地方は起業に向いている場所、と言えると思います」と齋藤さん。

眠っている資源の一例として、伝統工芸品が挙げられる。「日本各地の伝統工芸品は、職人たちの技術や美意識がつめ込まれている。当然、その品質や美しさは世界にも通用するレベルで、日本の伝統工芸品を持って行くとニューヨークのバイヤーたちは必ず欲しがりますよ」

伝統工芸品の場合は、すでにある価値を再発見するという形だが、新しい価値を生み出す場合でも、地方は高い可能性を秘めているという。

「地方の人々、いわゆる地元の人たちは、自分たちの土地で新しいものを作っていこうという気持ちを強く持っている場合が少なくありません。起業家のチャレンジを地元の人々がいっしょに共有してくれます。地方はまったく新しいイノベーションを生み出す場になり得るという実感を僕は持っています」

起業する際には行政とやりとりする場面も多い。以前はもしかしたら、頭の固いお役所がよそ者を冷たくあしらう、といったイメージもあっただろう。しかし、そんな先入観を持っているほうが頭が固いということなのかもしれない。

「例えば僕が手掛けた宮崎スタートアップバレーでは、役所と商工会議所と民間企業ががっちりと手を組んで、起業家の新しいチャレンジをともに盛り上げていこうとしています」

地方で仕事を始める際に考えなくてはならないポイントのひとつは“移住”。齋藤さん自身も2011年に宮崎県へ移住している。起業と移住、切っても切れないこの2つを絡めた取り組みで注目に値するのは、秋田県の「ドチャベン・アクセラレーター」だ。「田舎発、事業創出プログラム」とも呼ばれており、秋田という土地に根ざした“土着ベンチャー”=ドチャベンを新しく生み出すべく、2015年からスタートしたものだ。ビジネスプランコンテストを開催し、2015年の受賞者はすでに新しいビジネスをスタートさせている。

秋田県の「ドチャベン・アクセラレーター」からは、秋田ならではの新規事業がすでに走り出している


「ドチャベンのおもしろさは、秋田への移住がコンテストの応募条件のひとつになっているところ。土着ベンチャーですから『地元をよく知っている秋田県在住者に限る』という発想になってもおかしくなかったと思いますが、逆に県外からやって来る移住者に限定した。これを見て僕は『秋田県は移住者に対してオープンなんだな』と思ったし、『新しいことにチャレンジする気持ちを強く持っているな』とも感じました」

そして、移住者がその土地で果たす役割も大きい。

「移住者は新しい文化をつくることが求められていると僕は思います。求められたからやるという受身的な意味ではありません。地方の人々はオープンに移住者を迎え入れようとしています。自分たちの土地から新しいものを生み出そうという熱意もある。そういう“機が熟した場所”があるわけですから、外部からの視点を持つ移住者が新しい文化の担い手となっていく、というのは自然な流れではないかと思います。」

NPO法人「まちづくりGIFT」では行政×民間×NPOによる連携プロジェクトとして、宮崎県・綾町をPRする映像を制作した


地方で仕事をする魅力についても齋藤さんに聞いた。

「僕はシリコンバレーの仕事に一区切りつけて帰国した後、旧友の会社の再建をお手伝いしたんですが、その会社が秋田県の会社でした。その仕事をしているといろんな人たちが『ありがとう』と言ってくれて。その充足感はお金には代えがたいもので、人の役に立っていることが実感できた。この体験がその後のNPO法人設立へと繋がる大きなきっかけになりました」

新しいビジネスを始める場所として見ると、東京などの大都市圏とは違う魅力が地方にはあるという。

「地方経済の規模は東京よりも小さい。実は小規模だからこそのメリットがあって、それは事業を始めようと思ったらすぐにでもスタートできることです。もう少し砕けた言葉で言うと、話が早いんです。例えば役所や商工会議所などになにか申請書類を出すとしましょう。大都市だと役所の担当者が誰なのかなんてわかないから、問い合わせをする場合は担当部署になるし、問い合わせの数も多いだろうから即答を求めるのは難しい。でも地方の役所だと、立ち寄ってみたら担当の方がすぐそこに座っていて、出向いたその日に名刺交換をして説明もしてもらって、という場合もざらです(笑)。同じように、ビジネスシーンで顔を合わせる人たちもすでに顔見知り同士ということが多い。経済が小規模だからこそ、ビジネスに携わる登場人物の数が少ないし、少ないがゆえに密な人間関係もできあがっていく感じがします」

「起業も移住も、自分らしい生き方を実現する手段のひとつ」と齋藤さんは語る


もうひとつ、地方で起業するメリットを挙げるなら、自分らしい生き方を選び取れることだ、と齋藤さんは話す。

「東京のように毎週新しいカフェがオープンするとか、そういう意味での刺激は地方ではあまり感じられないかもしれません。しかし、ここまでにお話してきたような、新しいチャレンジを受け入れる気風が根付きつつある地方も増えています。新しいカフェはなくても新しいチャレンジがある地方は、刺激的で楽しい場所だと僕は思います。強調しておきたいのは、起業や移住が目的になってはいけないという点です。起業も移住も、自分らしい生き方を実現する手段でしかないのです」【東京ウォーカー】

石福文博

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