【WEB連載:はーこのSTAGEプラスVol.30】鴻上尚史が虚構の劇団で「天使は瞳を閉じて」を大阪13年ぶり上演!

関西ウォーカー

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1988年、劇団「第三舞台」を率いる鴻上尚史の作・演出で生まれた舞台「天使は瞳を閉じて」。イギリス公演のインターナショナル・ヴァージョン、ミュージカル公演などと進化してきた作品が、大阪で13年ぶり4回目の登場だ。今回は、鴻上尚史が「日本の演劇界を支えるような俳優が1人でも2人でも生まれれば」と、若者たちを集めて2008年結成した「虚構の劇団」での上演。

同劇団で11年に上演した舞台が好評を得、再登場となって大阪でも上演が決まった。鴻上の作品は、第三舞台時代から、上演当時の時代性を巧みに取り入れて作られる。が、そこで示唆される未来や物語設定に、現実がシンクロする、といった感覚を再演の度に味わう。予言的ファンタジー? と言うのは言い過ぎだろうけど。

そのひとつが今作の「天使は瞳を閉じて」。東京公演と鴻上の出身地・愛媛での公演を終え、いよいよ大阪に登場する。稽古中に来阪会見した鴻上の思いと共に紹介しよう。

【物語】

原発事故で放射能に満ち、人間がほろんだ地球。2人の天使が現れ、自分たちの受け持ち区域に人間がいないと話す彼らだが、透明なドーム状の壁に守られた町に人間を見つける。そこでの生活に感動した1人の天使が、人間になると宣言し…。

「反原発の話ではなく、若者たちの共同体と生き方の話。ある店に集う人たちが、愛したり、憎んだり、ぶつかったり、ウソついたり、負けたり、くじけたり…普遍的な構造のSFファンタジーです」。

【作品について】

「29歳の時に書いた作品で、当時はチェルノブイリ事故の2年後。ヴィム・ヴェンダース監督の映画『ベルリン天使の詩(うた)』が大ヒットしていて、この2つに想を得て書きました。当時は思わなかったけれど、とても細かな感情が求められる緻密な戯曲で、いまだに演出家として発見があるような作品です」。

いろいろな形で上演を続け、今回で6回目の上演。物語だけ読むと暗い感じに思えるが、笑えるし、ダンスも歌もあり、けっこう派手だ。

「僕の書く作品は、完全なハッピーエンドはひとつもない。ハッピーエンドじゃないんだけど、なぜか生きる希望を感じるというのが、僕が作りたいもの。これもその流れのひとつです」。

【前回公演は2011年8月】

東日本大震災、そして原発事故の直後。放射能にまみれた地球で人類が滅ぶというイメージがリアルになった時期だ。

「本当に上演するのか、と多く言われましたが、こういう時だからこそ上演しないと意味がないと。それが芸術・芸能の使命だと思っているので上演しました。設定が、ちょうど時代とシンクロしたんだと思う。枠組みとして、古びてなかったんですね。自分でもびっくりしました。ますます今につながる作品になっていると感じます」。

【今回は?】

作品の枠組みは初演から変わらないが、物語の始まりが全作品で違っている。5年前の第1章は、放射能管理区域にいる人たちという設定だった。

「2011年は設定が生々しかったけど、5年経つとほんとに記憶が薄れ始めている。日本全体がいい意味でも悪い意味でも、なかったことにしようとしてる感じがして。あぁ、5年経ってしまったんだ、というところから始まります」。

【虚構の劇団を初めて観る人、もと第三舞台のファンの人に】

「希望でしかないですが、僕が29歳の時に書いた作品が今でも今の若い観客に届くであろうと思って作っています。初めて観る若いヤツらにも自分たちの物語として受け取ってもらえたらいいし、そうなるんじゃないかなという大胆な予測のもとに(笑)。第三舞台の記憶がある人たちは、また「天使」が、今の若いヤツらで甦ったというふうに観てもらえるんじゃないかなと思うんですけど。こういう形でまたユタカに会う、マリに会うみたいな形になるんだと思います」。

【最近の若いモンはどう?】

「実に優しくなってますね。第三舞台を旗揚げしたころは、筧利夫を代表とする噛みつくような野獣のような眼の男たちと、あなたまかせの女たちが多かったんですけど。今から15年ぐらい前になると、噛みつくような女優と、あなたまかせの男たちが増えてきましたね。最近は、男も女もあなたまかせの、受け身の男と女が増えています」。

【演劇人口が減っています】

「それはしょうがないとは思いますね。娯楽がたくさん出て来たわけだから。僕らが20代の時の演劇の地位から見たら、ほんとにアクセサリー的。今は、クリエイターになりたいなら、この芝居はマストで観なきゃいけないみたいな意識が演劇界は獲得できてないんだと思うんですよね。自分がクリエイター志望の人間にとっては、マストであるひとつに、ポケモンGOがどんなに忙しくなっても、アイホールに行きたいと思えるような作品を作るポジションであり続けたいと思っています」。

演劇ライター・はーこ

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