フィギュアスケート新潟・夏の発表会【中編】
東京ウォーカー(全国版)
今回取り上げている二つのクラブの発表会には、それぞれゲストスケーターが出演していた。その中から、アイビスクラブの発表会に出演した三原舞依、そして新潟クラブの発表会からは松原星のインタビューをご紹介したい。
復活した三原舞依の全日本選手権への強い思い

まずは三原舞依。この取材の日の前日に、グランプリシリーズへの派遣が決まったばかりだった。昨シーズンは夏場から好調で、大きな飛躍が期待されたが、膝の疾患のためにシーズン後半を棒に振ってしまった。
「病名は突発性多発性若年性関節炎でした。一万人に一人の病気だそうです」(三原)
分かりやすく言うと、若年性のリウマチだ。フィギュアスケートの世界で、この病気にかかって復活を果たした選手の話は過去に聞いたことがない。関節の病気だけに、トレーニングを続けながらの治療は苦労を伴うものだったはずだ。
「ずっと入院、通院を繰り返しましたが、その中でどれだけのことが出来るかが新シーズンにつながる、そう考えてやってきました」(三原)
昨シーズンの全日本ジュニアは膝の痛みもあり、不本意な出来栄えに終わってしまった。その後のジュニアグランプリファイナルにも強行出場したが、その頃の病状は特に深刻だったようだ。ファイナルから帰国後、彼女は入院生活を余儀なくされた。
「全日本は病室のテレビで見ていました。2週間ほどの入院期間でした」(三原)
退院後、1月のアイスショーには出演したが、その頃は全くジャンプ練習ができない状態だったという。3月頃からようやく氷上練習ができるようになったが、スケーティングと陸トレ中心の日々だったという。ジャンプ練習ができない期間は5か月の長きに渡ったが、その時期に頑張った甲斐もあってスケーティングは飛躍的に向上した。今季のフリープログラムは佐藤有香振付の“シンデレラ”。
「有香さんが良い振付をして下さったので、それを私がどう作り上げていけるか、やり甲斐があります。有香さんに振り付けてもらったことがプラスになるように頑張りたい。難しいけれど、可憐で優雅なプログラムに仕上がったと思います」(三原)
そして今季、グランプリシリーズへの派遣が決まった。それもスケート・アメリカ、中国杯、2試合への派遣だ。彼女の高い能力に対する、期待の表れだ。
「1戦でも派遣があればいいな、と思っていたので、ネットで知って飛び上がるほど嬉しかった。目標は順位ではなく、ひとつひとつの試合を大切にすることです。病気のことは意識せず、昨シーズンの続きを頑張る意識で臨みたいと思います」(三原)
不本意な結果に終わった昨シーズン、そのリベンジを今季の試合で果たしてほしい。そして、昨シーズンは出場できなかった全日本選手権への思いも強い。
「今季は、全日本の舞台に帰りたいんです。そのためにはミスを減らさなければならない。自分ではジャンプはあまり高い方ではないと自覚しているので、自分に出来るジャンプを確実に成功させていきたい」(三原)
この日は、3ルッツ+3トウループの連続ジャンプを何度も成功させていた。とても5か月間もジャンプ練習が出来なかったとは思えない仕上がりだ。得意だというループジャンプも、更なる加点を狙って難しい入り方に挑戦していた。今季のフリーの構成は、3ルッツ+3トウループに挑戦し、後半の3ルッツを3連続ジャンプにして、更に2アクセル+3トウループも入れる予定だという。現在の彼女にとっての最高難度の構成だ。グランプリシリーズで、世界にアピールする演技を大いに期待したい。
ジュニアGPシリーズ出場を目指す松原星

7月9日の新潟クラブの発表会には松原星が出演した。昨シーズンは夏場に素晴らしい活躍を見せ、大きな飛躍が期待されたが、全日本ジュニアでは手痛いミスを犯してしまった。ミスの許されないショートプログラムで、緊張のため、連続ジャンプを転倒してしまったのだ。
「昨シーズンは、一歩前に進めた良いシーズンだったと評価していますが、全日本ジュニアでのショート落ちは本当に悔しい思いをしました。今季の全日本ジュニアでは絶対にショート落ちしないこと、フリーでノーミスの演技を目指すこと、そしてシニアの全日本に出場することを目標に頑張ります」(松原)
この日の練習では3フリップ+3トウループの確率が高かった印象だ。「靴を換えた直後なので、まだ絶好調とはいえない」とのことだが、調整は順調に進んでいるようだ。3ルッツ+3トウループも調子が良いようで、フリーでは両方入れる計画があるようだ。そして出場を熱望するジュニアグランプリシリーズでは、現在のところ補欠1位のポジション。まだ出場は決まっていないが、「どこでもいいのでとにかく出たい」という。このオフに身長も伸びたが、ジャンプが崩れることはなかったという。
この日の演目は今季のショートプログラム、“シングシングシング”。激しく踊る、躍動的なプログラムに仕上がっていた。以前からの憧れの存在、鈴木明子に振り付けてもらったとのこと。「明子さんに作ってもらったステップは難しくて、まだ滑り込みが足りない」というが、それでも要素を抜くことなく頑張っているそうだ。ショートプログラムでの緊張癖はかねてからの課題だが、今季のショートプログラムの構成は3サルコウ+3トウループと3ループ。ノーミスの演技を目指し、安全策で臨むという。普段通り、練習通りの演技を、是非大舞台で見せてほしい。今年も更なる飛躍を期待してシーズンを待ちたい。<後編に続く>
【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】
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