フィギュアスケート・夏のローカル大会で見つけた東京のホープ達【前編】
東京ウォーカー(全国版)
8月26日から28日の日程で、東京夏季フィギュアスケート競技会が、ダイドードリンコアイスアリーナ(東伏見)にて開催された。東京のローカル大会として、春のスプリングトロフィーと並ぶ伝統の大会である。今年からシニア選手も参加できるようになり、昨年までのジュニア年代までの夏場の調整試合との位置付けから、シニアも含めた新プログラムのテストの場となった。毎年、ひと夏で急成長を遂げる選手が多数おり、そんな選手を発見するのも大きな醍醐味だ。今年の大会から注目選手をご紹介したい。
シニア初年度、順調な仕上がりを見せる樋口新葉

順調な調整ぶりを感じさせた樋口新葉。今季のショートプログラムは“Lady Caliph”。エンニオ・モリコーネ作曲の映画音楽だ。選んでくれたのは振付のシェイリーン・ボーン。何曲かの候補の中からこの曲を「誰も使っていないし、樋口選手に最も合っているんじゃないか」と提案してくれたそうだ。
この曲は、元となった映画自体が日本では知られていないもので、表現することは難しそうに思えるが、「映画のあらすじを読んだので、そこからイメージを作っています。友達がいなくなった寂しさ、切なさを表現するイメージで滑っています」とのことだ。初見では難解なイメージだが、滑り込むことでより素晴らしくなりそうな印象の、奥深いプログラムに仕上がった。
「今回は初戦で緊張しましたし、まだ足りないところがあります。ただ自分が想像していたよりはうまく表現できました」
シェイリーン・ボーンの作ったステップはとても難しいとのこと。ステップを練習するだけで筋肉痛になったという。実際、この日の演技では後半にスピードが落ち、ステップの要素も抜けてしまった印象だった。もっとも樋口選手はさほど気にしていない様子で「次の試合までには仕上げます」と力強くコメントしてくれた。
フリープログラムは“シェヘラザード”。正統派なプログラムに仕上がった。振付はマッシモ・スカリ。過去に彼が振付けた田中刑事のプログラムを観て以来、振付を依頼したいとの思いを持っていたという。「振付作業は楽しかったです。とても優しい先生で、ステップもやりやすいように、でも同時に難しいものに作ってくれました。強い女性をイメージして滑りたいと考えています」
7つあるジャンプのボックスは、前半に3、後半に4という構成だ。昨シーズンは前半2、後半5というハードな構成で、それが安定感を損ねた印象もあったのだが、今季は標準的なものに落ち着いた。ただ決して楽な構成になったわけではなく、後半に3ルッツ+3トウループが入っている。「ジャンプだけではなく、他の部分でもアピールしたい」と意気込みを見せた。
今季はショート、フリー、共に海外の振付師に依頼した。その効果について、「皆が思っていたことと違うような振付をしてくれる」と語る。予想外の引き出しを提示してくれる振付への挑戦によって、新たな面を引き出すことができたようだ。
昨シーズンはオフに怪我をして、万全なシーズン入りが出来なかったが、今季は極めて順調に来ている。
「今年は本当に、怪我をしたくないという思いが強いんです」
昨年の轍を踏みたくない、そんな思いが端々ににじみ出る。
今季の目標については「世界選手権への出場です。そのためにも全日本でいい成績を残したい」
初挑戦となるシニアのグランプリシリーズでの活躍も期待されるが、「まずはフランス大会で頑張って、ひとつずつ積み上げていきたい」と慎重な姿勢を見せた。以前と比べ、強気な自信をのぞかせるコメントは減ったのだが、内に秘めた、期する思いを強く感じるインタビューだった。
樋口新葉の後輩、今季急成長を見せた松岡あかり

この大会において圧巻の演技を見せ、一躍、注目選手へと躍り出たのが松岡あかりだ。100.33というスコアはノービスA女子ではめったに出ないものだ。
「100点越えは初めてです。3フリップでミスをしてしまったので100点は行かないと思っていました。ビックリしました」
過去にノービスA女子で100点越えを果たしたのは、樋口新葉、青木祐奈、紀平梨花など数えるほどしかいない。当然、全日本ノービスでも優勝争いを期待される立場になったのだが、
「岩野桃亜選手がとても上手で、まだ雲の上のような存在なので、そこまでは考えていませんでした。全日本ノービスでは表彰台に乗って、全日本ジュニアに出場するのが今年の目標です」
と謙虚な姿勢を見せる。とはいえ、100点越えを果たしたことが自信につながり、「もっと完璧なノーミスをしたい、もっと点数を伸ばしたい」とさらに高い目標を意識し始めたようだ。今年の全日本ノービスは、岩野桃亜と松岡あかりの一騎打ちになりそうだ。
そんな松岡選手の憧れの存在は、同じ岡島コーチのチームに所属する先輩、樋口新葉だ。
「スピードと、そのスピードから跳ぶダイナミックなジャンプに憧れます。自分もあんなジャンプが跳びたい」
松岡選手の今季のプログラムは、“こうもり序曲”。フィギュアスケートでは定番ともいえる、クラシックの名曲だ。
「元気な曲が好きなので、この曲を選んだことは私にとってチャレンジです。将来は大人っぽい曲もこなせる選手になりたいと思います」
将来を嘱望される存在へとなった松岡選手。今週末の東京ブロックでも素晴らしい演技を期待したい。<中編に続く>【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image Works)】
編集部
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