映画「お父さんと伊藤さん」上野樹里&藤 竜也インタビュー

関西ウォーカー

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映画「百万円と苦虫女」など登場人物の心の機微を描くのに定評があるタナダユキ監督の最新作「お父さんと伊藤さん」が、10月8日より公開された。本作は、アルバイトをしながら自由気ままに暮らす34歳の彩(上野樹里)と20歳年上のバツイチ男・伊藤さん(リリー・フランキー)の元に、息子夫婦の家を追い出されて舞い込んできた彩のお父さん(藤 竜也)の3人による奇妙な同居生活が描かれるヒューマンドラマだ。今回は本作の魅力について、上野樹里と藤 竜也に話を聞いた。

10月8日公開の映画「お父さんと伊藤さん」上野樹里&藤竜也インタビュー


――家族間の問題や気まずい空気感をリアルに切り取っている一方で、シリアスではなく明るく軽快なタッチで描かれるところに本作の魅力を感じました。

藤「この映画を観れば、みんな身につまされると思いますよ。というのは、家族であることの良い部分だけでなく、家族で起こってほしくないことや面倒くささ、なるべく避けたいシチュエーションだったりが描かれているんです。そういう時に起こる、あまり人には見せたくないイライラした感情だったりをライトに楽しく見せているところがすごい作品だと思います。彩がずっとお父さんと連絡を取っていなかったと分かるシーンがあるけれど、実際にそういうことってよくある話じゃないですか。みんな家族というプロセスを経て知っているからこそ、映画の中の気まずい空気まで共感できるから楽しんで観てもらえると思いますよ」

上野「みんな外で見せている顔は明るいですけど、家では両親や兄弟姉妹の嫌なところがきっとあると思うんです。自立して家を出ても、今まで育ててくれた親のことを顧みずに自分たちの幸せを築いてしまっていたり、都合のいい時だけ親に頼ったり、都合の悪い時は連絡を無視したり…。そういう誰にだってある“家族”という普遍的なテーマを描いた作品なので、この映画のように3人で暮らすシチュエーションじゃなくても、自分を投影しながら楽しく観ていただける作品になっていると思いますね」

――ライトに描かれているという点では、リリー・フランキー演じる伊藤さんの存在がカギを握っていますよね。彩にとって、伊藤さんはどういった存在だと思いますか?

上野「伊藤さんと彩は年齢が20歳も離れているけれど、彩は特におじさんだとは感じていないと思います。だけど、伊藤さんの方が長く生きているからこそ知見も豊富で、彩のダメなところも可愛いと思ってくれているので、歳の差があるからこそ良い関係でもあります。家庭菜園をしたり朝ごはんを作ってくれたりと暮らしを豊かにしてくれるだけでなく、周りの人が言ってくれないような的を射た注意も諭すように言ってくれるので、10代でお母さんを亡くした彩にとっては甘えられる母のような存在ではないでしょうか。細々とでも自分たちなりのささやかな幸せが築けたらいいなと、現実を見ながら二人は一緒に生きているんだと思います」

――上野さんは彩として、藤さんはそのお父さんとして、実際に役と同じように生きてこられたんじゃないかと錯覚してしまうぐらいに、細かい所作や表情までとても自然で生き生きと演じられているなと感じました。一体どのように役作りをされたのでしょうか?

上野「まずは衣装合わせの段階で、彩はどんな服を着ているイメージなのか監督とディスカッションをさせていただきました。その後は監督と食事に行って、私自身は普段どういった生活をしているのかの近況報告から始まり、彩だったらどう過ごしているのか、どんな女の子だろうかと、いろいろな妄想を話しましたね。そこで出てきたディティールをヒントに、さらにディスカッションをしてキャラクター像を掴んでいきました」

藤「僕はいつも自分の足を使って、全部プロファイリングをしていくんです。見た光景からなにまで全部知りたいので、今回は演じたお父さんが暮らしていた長野に行ったりしました。役を演じるというのは、その人間になりたいわけだから血液から何から全部入れ替えたいぐらいに欲が出るんです」

――タナダユキ監督との現場はいかがでしたか?

上野「これまで監督の作品を観ていると、役者さんのお芝居がとても生き生きとしているので細かい演出があるのかなと思っていたんですけど、実際には特に現場で演出することはなく、スムーズにシンプルに、なるべく手を加えずありのまま生まれてくるお芝居のいい部分を掴むといった感じでした。脚本やロケーション、キャスティング、スタッフが全て決まった時点である程度が出来上がっているからこそ、いい部分が出てくるまで待てる。このスポットで釣りをすれば、マグロが絶対に一本釣りできるみたいな状態に出来上がっているんです(笑)。カメラも全く気にならないような位置にあったり、カットを割ることもそんなに無く、自然に演じられるように全てが調和のとれた現場でしたね」

藤「女性か男性かの違いも多少はあるだろうけれども、カット割りは監督の言語なので、タナダユキという監督ならではの切り取り方で、彼女の視線で言語を使って、この映画の世界を作っている感じがしっかりとありましたね。具体的にどこがどうとは言えない、タナダユキ監督の空気がきちんとある。いい監督ですね、タナダさん」

上野「藤さんが演じるお父さんは、本当に良かったです。問題を抱えた家族なのに、途中からお父さんが可愛くも切ない存在に思えて同情できてしまうんですよね。観てくれるお客さんの気持ちを決して暗く、重くさせない存在というか…。ギスギスした彩とお父さんの関係が、愛しく思えなかったら楽しくないじゃないですか。自分の家族のことで頭を抱えている人だって実際いるのに、それを映画で見せつけられても辛いと思うんです。だから本作は、そういうシリアスな意味でのリアリティではなくて、“持ちつ持たれつで、なんだかんだやっているな”という程良くて、滑稽で笑って楽しめる作品になっています!」

映画「お父さんと伊藤さん」は10月8日より全国の公開劇場にて上映中


映画「お父さんと伊藤さん」は、10月8日より梅田ブルク7ほか全国の公開劇場で上映中。

【関西ウォーカー編集部】

大西健斗

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