【シン・ゴジラ連載Vol.9】「シン・ゴジラ 感動のエキストラ出演体験記」

東京ウォーカー

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2016年に公開された実写の日本映画興行収入暫定1位の「シン・ゴジラ」。日本を代表する特撮シリーズの最新作は、復活を待ち望んだ観客だけでなく、制作に協力した多くの人々の愛と情熱で誕生していた。

ゴジラ復活にかけるゴジラ映画への参加


特撮映画マニアであれば、一度は経験してみたいのがゴジラ映画のエキストラだTM&(C)TOHO CO., LTD.


特撮映画マニアであれば、一度は経験してみたいのが、ゴジラ映画のエキストラ。怪獣が街を破壊し蹂じゅう躙りんするなか、恐怖に震えつつ逃げる群衆を演じ、その姿を劇場の大スクリーンで追体験するというのは、まさに「男の本懐」(by泉修一)です。

しかし同シリーズが「ゴジラ FINALWARS」(04)で一旦ピリオドを打ち、ゴジラ映画は再び冬の時代へと突入、そういう機会も久しく失われてしまいました。そして気がつけば、映画界は女子相手のスイーツ風味な作品が蔓延し、怪獣映画というジャンル自体が風前の灯火に。ああ、もうゴジラに追われる体験なんぞ夢の夢なのだな…と思っていたところ、「新作ゴジラがエキストラ募集をしている」という情報が自分の耳にも入ってきて、めでたく映画「シン・ゴジラ」撮影参加となった次第であります。

「ヘラヘラ笑いながら逃げるヤツに見本を示すべく、迫真の演技を見せてやる!」

2015年9月某日。JR武蔵野線から千葉の某私鉄に乗り換え、目的地の某駅へと到着。地下ホームから駅出口に向かうと、すでに駅前のロータリーには同じエキストラ目的の方々が、指示どおりのスーツ姿で待機しているではないですか。都心にほど近いベッドタウンとはいえ、日曜夜には似つかわしくない一団だけに、行楽帰りと思しき家族連れの視線がグサグサと突き刺さります。

そのうちスタッフらしき人々がやってきて、記念品と弁当、そしてお茶を配りはじめました。その弁当を食べながら駅前広場でボーツとしていると、やがて200人ほどの人、人で駅前があふれかえる状態に。スタッフも撮影体制を整え、エキストラの中から警官や自衛隊員役を見つくろい、順番で着替えさせていきます。

そして終電をむかえた深夜1時、我々エキストラたちは地下の駅構内へと誘導されたのですが、正直こんな場所で、どうせ第二班監督とかが来て撮影すんじゃね?と思っていたところ、改札前に集まった我々の眼前には、庵野秀明総監督と樋口真嗣監督がー!!まさかまさかの二大トップ揃い踏みに、ちょっとしたどよめきが起こりましたよ。

ここでスタッフいわく、「えー、今回はゴジラが東京に上陸し、猛威をふるった結果、米軍による空爆が決まり、霞が関近辺で取り残されたサラリーマンらが地下鉄に避難するシーンの撮影です」とのこと。そしてまず撮ったのは、地上からの避難民が改札に殺到するシーン。構内で両監督が見守るなか、我々は勢い良く改札の中へと飛び込んでいきます。最初のテイクが終わり、改札から出ようとする我々の姿を見た樋口監督が、いきなりこちらのほうに近づいてくる!!

「だめだよー、もっと大きな声出して、元気よく飛び出してこないと!」

ここぞとばかりに、直にダメ出しを食らう我々。その後も同じシーンを何回か撮影し、そのつど密な会話を交わし、シーンの方向性を固めていく庵野&樋口の両監督。今回の「シン・ゴジラ」は二大監督制ということで、その役割分担を気にしている人も多いと思いますが、現場を見る限り、お互いが密に確認しあい、撮影の方向性を決めていたようです。

夢にまで見たエキストラ。ゴジラのいる世界の住人に


【写真を見る】映画「シン・ゴジラ」よりTM&(C)TOHO CO., LTD.


それにしてもロケ当日はやたらと蒸し暑く、また終電後の駅構内ということもあって、その不快指数は異常なほど。いちおう撮影側からも熱射病対策として冷水サーバーが用意してあったものの、事前の指示もあり、自前でお茶やスポーツドリンクを用意するエキストラの姿もチラホラ。自分も水筒を持参したのですが、ここで悲劇が発生!!暑さに耐えきれずチビチビと飲んでたら、水筒のフタが完全に閉まりきってなかったため、なんと撮影途中にお茶が漏れ出してカバンがビショビショに!!おかげで本番中にもかかわらず「うわっ!!」と大声で叫んでしまい、カット後「床が濡れて転ぶ人が出ると大変ですので」と、明らかにオレのことを差してると思しき注意が入ってしまいました。

改札シーンの撮影終了後、待機時間を経て、今度はホーム内での撮影。「不安な面持ちでゴジラと米軍の空爆をやり過ごす人々」という設定のもと、狭いホームの中だけでなく、電車内までギュウギュウにすし詰めにされ、人の波に揉まれながらの大変な現場を体験…と言いたいところですが、それなりに人と人とに間隔がとられ、パニックに陥る演技も「反狂乱にならず、適度に暴れてくれればそれで絵になりますんで」という指示に従って演技をしました。完成した映像では、それがちゃんと大パニックに見えるのですから、身をもって映画のマジックを実感しましたね。やはり現場は安全第一なのです。

こうして午前3時半ごろ、撮影は無事終了。蒸し風呂のような駅構内での撮影だったため、スーツ姿で臨んだ大半のエキストラに疲労の色がうかがえるものの、みな満足気に見えたのは気のせいではないと思います。あとは編集でカットされないことを祈りつつ、家路へと就いた自分でありました。ああ、こうして何百何千という人たちが、同じようにゴジラという作品に関わり、幸せな瞬間を満喫してきたんだろうなあ…と感慨に耽る間もなく、夜を明かしたツケで家に着くなりバタンキュー。

そして約一年が過ぎ、ついに「シン・ゴジラ」が公開。自分がエキストラ出演したシーンがカットされずに流れるかな…と、ワクワクしながらスクリーンを注視していたところ、地下鉄ホームが真っ暗になる瞬間、見事に画面中央に映り込んでいるではないですか!!長年の夢、ついに果たせり!!ところが、何度か劇場に通ううち、その喜びは次第に絶望へと変わっていきました。

「オレ、思いっきり笑顔になっとる…」

そこにはゴジラの猛威に怯える人たちに紛れ、ヘラヘラと笑みを浮かべる自分の姿が確認できるようになったのです。まさに「言うは易し、行うは難し」ということで、以上、エキストラ撮影の現場から見た「シン・ゴジラ」のバックステージでありました。

【テリー・天野(てりー・あまの)●ドリー・尾崎(尾崎一男)と共に映画ガチンコ兄弟としてTV、イベント等で活動するほか、構成として「フィギュア王」に、ライターとしてweb「メンズサイゾー」などに寄稿。その他にもピンク映画の脚本協力やロケバス運転手などなど、いろいろとやってます】

編集部

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