【川淵三郎×前園真聖】「バスケって本当に面白いですか?」2人に本音を聞いてみた【後編】

2016年11月12日 18:00更新

東京ウォーカー(全国版) 浅野祐介

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9月に開幕したBリーグ。紆余曲折を経て誕生した日本バスケットボール界の統一プロリーグについて、Bリーグ誕生の立役者と言える川淵三郎さん、同リーグの特命広報部長を務める前園真聖さんに話を聞いた。

Bリーグ、日本バスケの可能性を語る川淵さんと前園さん

Bリーグ、日本バスケの可能性を語る川淵さんと前園さん
(C)吉野洋三

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――他のスポーツもそうですし、日本には競合ともなり得る、たくさんのエンターテインメントが存在します。その中でBリーグが存在を確立するためにはどうすればいいとお考えですか?

川淵「先日、うちの娘が初めてテニスを見て、『面白い!』と言っていたんだけど、初めて見ても楽しめるものと、ルールがわからないとちょっと、というものがある。バスケは初めて見た人でも絶対に面白いと思えるスポーツであることは間違いない。それは、自信を持って言える。時間という意味でも、あまり比較することでもないんだけれど、たとえば野球と比べてみて、1クォーター10分でトータル40分。ハーフタイムも入れて1時間20分前後で、実際のプレーしている時間しか測らないから、終わる時間がだいたい予測できるというのは、見る側としては大きいと思う。映画を観るよりは短いし、会社が終わった後に行けるし、雨が降ろうが雪が降ろうが関係ないし。映画と決定的に違うのは、仲間と一緒に声を出して応援できるっていうところだね。人生の、有意義な生き方の選択肢の中のひとつに、スポーツ観戦というのは入れてほしいね。」

前園「友達と一緒に行っても楽しめるし、少人数でも会場の一体感でみんなで応援している気持ちになれるし、途中から会場に来ても点数がたくさん入るので、そういう盛り上がれるシーンをたくさん見られますよね。ハーフタイムくらいから行ったとしても、第3、4クォーターを観ても楽しめると思うんです。それは、もしかしたら他のスポーツに比べたらあまりないことかもしれませんね」

――サッカーの場合、遅れてスタジアムに入ったら既に1点入っていて、そのまま試合が終わってしまうこともありますね。

前園「肝心なところを見られないっていう(笑)」

川淵「バスケはそういうことはないよね(笑)」

――お二人はBリーグが成功するという点について自信があると。

「バスケは初めて見た人でも絶対に面白いと思えるスポーツ」と川淵さん

「バスケは初めて見た人でも絶対に面白いと思えるスポーツ」と川淵さん(C)吉野洋三

川淵「僕はもう、始めから自信がある。責任者になったから言うわけではないけれど、本当にバスケは、観に来る人、やる人にとっても面白いスポーツであることは間違いない。だから、『成功することは間違いない』と最初からずっと言ってるんだ。それは本心からで、仮に『どうなのかな?』と思っていたら、僕はそういうことは言わないから。自分が疑心暗鬼なのに、『面白いよ』なんて人に勧めない。そういう意味では間違いないと思うんだよね」

前園「僕もそう思います。Jリーグの時もそうでしたが、選手たちが、よりプロの意識を持って、一人でも多くの観客を呼び寄せるつもりでプレーをして、質を上げていって、それが2020年のオリンピックに向けての盛り上がりにつながっていけばいいと思いますね」

――新しいプロリーグが始まり、選手の心構えが変わるというのはとても大きいことですよね。

Jリーグ創設時の話しを例にBリーグのスタートで「選手の心構えが変わる」と話す前園さん

Jリーグ創設時の話しを例にBリーグのスタートで「選手の心構えが変わる」と話す前園さん(C)吉野洋三

前園「変わってくると思います。今までにないレベルで注目されて、メディアに取り上げられて、選手のモチベーションもこれまでとは全然違うと思うんですよね」

川淵「先程話に出た川村選手も、3点シュートの成功率が46%なんだよね。普通は40%もいけばいいと言われている中で、練習量がかなり豊富なんだと思う。前園が言ったように、Jリーグがスタートして、同じ人間が、アマチュアからプロになった時『何が変わるんですか?』と当時、メディアからよく聞かれたんだよ。アマチュアの間は、ともかく“そこそこやればいい”、いざとなってサッカーがダメなら会社に戻って仕事をすればいい。勝ったから、負けたからといって別に給料が変わるわけでもない。観る側もそこまで大きな興味や関心を持っていない。いったんプロになった同じ人間がどう変わったかというと、とにかく活躍したらお金が増える、周りの関心度が高くなってメディアも注目する。100mダッシュひとつをとっても、とりあえず走って、コーチの目を盗んで適当に走ればいい、というのはそれまでのアマチュアの選手。ところが、プロになったら、必死になってやらないと自分が試合に出られないかもしれない。後ろから追い越されるかもしれない。自分の力ですべての環境を良くするために、ともかく日ごろの練習態度から、放っておいても変わる。そこが根本的な部分なんだ。言われて変わるわけじゃない。選手の自己努力は、Jリーグができた時に完全に変わった。『変わるだろう』と僕は言っていたけど、その通りだったね」

――前園さんは選手として実際に経験されて、いかがでしたか?

前園「それは間違いないですよね。プロという環境で、今までスタジアムにあまり人が入っていなかったところに、たくさんの観客がきて、メディアが注目をして、選手の意識も当然、変わってくる。それは今のBリーグの選手たちも同じで、今まで感じたことのない、注目されているという意識を持ってプレーしていくようになる。当然、これから質の面でももっと要求されるようになるので、大きく変わってくると思います」

――川淵さんも開幕戦で観客に向けて『厳しい目で一緒に育てていってください』とおっしゃっていましたね。

川淵「それが一番重要なんだよ。選手にとって一番大きく変わるのは給料、年俸でしょう。仮に今まで4、500万円もらっていたとして、それが2000万円とか、3000万円になったらそれだけでも大きく変わるよね。そのためにどうしなきゃならないかというと、ずっとトップレベルの選手でいたいと思った時、普段の練習が一番大事だから、それが変わってくる。だからこそ、プロというのは値打ちがある。アマチュアの練習とは全く違う。選手の心構えが、言わなくても勝手に変わる、それが大きな意味だね」

――前園さんに質問です。熊本で選手と間近で触れ合ってみていかがでしたか? 地震の被害もありましたが……。

前園「開幕に向けて、最初は5人からスタートしていましたし、開幕戦の会場も、県立の体育館で二日前に完成させたような状態だったので、選手たちは、いろいろな人たちの支えで自分たちがプレーできているという想いを抱きながらコートに立っていたと思います。テレビの番組でずっと取材をさせてもらって、今回の震災があって、『頑張れ』というのはすごく大事なんですが、選手たちはプロだから、ここからは勝っていかなきゃいけないと思うし、勝つために何をしなきゃいけないかっていうことが大切です。『勝ってB1に上がることが目標だ』と選手たちも言っているので、周りが厳しい面も持っていないといけないと思います。ただの『頑張って』ではなくて、プロは勝って評価されるものだと思うので。そこに向けて、いいスタートを切れたと思います」

――熊本ヴォルターズの開幕戦は約5000人の観客が入りました。

川淵「キャプテンの小林(慎太郎)選手が熱いヤツで、しゃべりだすと止まらないんだよな(笑)。でも、開幕戦で彼が3点シュートを一番決めていた。大した練習量だなと思ったね。ケガをしていたから十分でなかったのかもしれないけど、根性というのか、『ここは』っていう必死の思いが得点に結びついていたんだよね」

――ケガからの完全復活ではない状態で向かえた開幕戦でしたね。

川淵「いつも、講演などで話すのですが、指を曲げて、ボキッと折れるとする。本当に指が折れる限界が生理的な限界。ところが、『痛い痛い、もう折れる』という精神的な限界は、骨が折れるのが10だとしたら、3から4くらいなんだよ。アマチュアのレベルは、『これ以上できない』というくらい激しい練習をしたといっても3から4くらい。プロになったら、それが5とか6に変わるってことです。今まで『もうこれで終わりだ』と思っていたものが、もうちょっと練習しなきゃ、というふうに、プロになって変わるんだよね」

――選手にとっての変化が大きいということですね。

川淵「そう、世間からの注目の浴び方なんて、今は全然違うと思う。熊本の選手が一番そうじゃないかな。テレビカメラが来て、練習風景をすべて撮影されるなんて、今までなかっただろうから」

――小林キャプテンはだいぶ有名になりましたね。

川淵「だから、それだけでも、選手として下手なプレーをしたら恥ずかしいからね。もっとレベルを上げたいと思うだろうし、自分なりのものを見せたいと思うのは普通の人間なら当たり前。そうならない選手は去ってもらえばいい、そう考えているよ」

――バスケットボールの情報はとても増えてきていますね。川淵さんが先ほどおっしゃった『素材がたくさんある』というのをうまく拾っていければというところですね。

川淵「そうだね。秋田ノーザンハピネッツの白濱僚祐選手は女性ファンがとても多い。選手のサイン会をやったら、一番最後まで行列が続いていたのは彼だったらしい。秋田県は彼を前面に押していけばいいのに、まだあまり知られていない。女性ファンが圧倒的に多かった新潟アルビレックスBBの五十嵐圭選手も男前なんだけど、結婚したとたん女性ファンが減っちゃった(笑)。それだって知られないよりは知られていた方がいいよね。そういう情報が、田臥選手以外、まだあまりないのが現状。先ほどの北海道の折茂選手も、年齢の話だったり、1万ゴールがいつ達成されるのか、というテーマでもメディアは取り上げやすいよね。1試合10点だとしても1年間で600点入るわけだから、3年か4年で『50歳までいけば、ちょうど1万点に行くな』って思ってるんだけど。それを知ってもらうだけでも、『今日は何点決めたの?』と話題になるでしょう?」

――節目が来るたび話題になりますね。

川淵「彼の今までの努力に報いる意味でも、ぜひメディアに取り上げてほしい。そのために、僕はあちこちで言っていこうと思ってるんだ。だって、当時新設だったレバンガ北海道時代に加入して、ホーム開幕戦に3000人くらいの観客が来て、ホームでのあまりの歓迎ぶりに感動しちゃったんだって。その後、いろいろな事情でチームがなくなりそうになった時、北海道のチームをトップリーグに残さなければと考えて、自ら選手兼オーナーになってやってきた人なんだから、バスケ界、Bリーグがこういう人を称えないでどうするんだって。Bリーグになって、『1万点まであと何点』って盛り上げていきたいと思うよ」

――数字はわかりやすいですね。日本のメディアやファンの方は数字が好きですから。

川淵「そうすれば『今日は折茂、出場したの? 何点だった?』って聞くようになるからね。そういうのが、興味の原点ですから。ここ、強調して書いておいてね(笑)」

前園「こういうスター選手が出てくるのは大事なことですね」

――はい、スター選手の存在は本当に重要だと思います。

川淵「極論、チームを観に行くんじゃないんだよ。やっぱり“選手”なんだよね。このチームは好きだけど、この選手がいるから観に行くんだ、と」

――では最後に、まだBリーグを見たことのない読者に向けて、「ここを是非!」という呼びかけをいただければと思います。

「とにかく会場に足を運んで、あの盛り上がりを体感してほしい」と前園さん

「とにかく会場に足を運んで、あの盛り上がりを体感してほしい」と前園さん(C)吉野洋三

前園「とにかく会場に足を運んで、あの盛り上がりを体感してほしいです。そして野球、サッカーに続いて3番目の団体競技プロスポーツですが、その2つとはまた違う魅力があるので、一度足を運んで、バスケをぜひ、会場に観に来てもらいたいと思います」

「一度足を運んでもらえれば、『面白い!』と絶対に思ってもらえる。その自信がある」と川淵さん

「一度足を運んでもらえれば、『面白い!』と絶対に思ってもらえる。その自信がある」と川淵さん(C)吉野洋三

川淵「日本にはアリーナ文化というものはなくて、今まであったのは体育館なんだよね。観る側の立場に立ったアリーナというのはないわけで、琉球ゴールデンキングスも1万人収容のアリーナを作ろうとしているんだけど、いいアリーナを日本の中にどう作っていくか、それは、とりもなおさずファンにとって居住性のいい、居心地のいい場所であるに違いないんだ。そのためには、できるだけ多くの方にアリーナに足を運んでもらって、『このままじゃだめだ、1万人規模のものを作ろう』という盛り上がりになれば、さらに一段と良くなると考えてる。そして、日本のバスケットボールが世界の中で活躍できるようになっていく。今は僕が一生懸命、『アリーナ』って言っていて、あえて『体育館』とは言っていないんだけど、心からアリーナと言える場所、文化を作らないとね。一度足を運んでもらえれば、『面白い!』と絶対に思ってもらえる。その自信があるから。そして、そこから好みの選手、好きなチームをぜひ見つけてほしいですね。魅力的な選手がいっぱいいますから(笑)」

Bリーグが今後、どんな発展を遂げるかは、リーグ自体はもちろん、チームや選手の努力、だけでもなく、ファン=観る人の存在に大きく左右される。 「とにかく会場に足を運んで、あの盛り上がりを体感してほしい」という前園さん、そして、「一度足を運んでもらえれば、『面白い!』と絶対に思ってもらえる。その自信がある」という川淵さんの言葉の先に、「バスケって本当に面白いですか?」という問いかけに対する“本当の答え”があるはず。ぜひ一度、Bリーグの会場へ。【ウォーカープラス編集部/浅野祐介】

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