阿佐ヶ谷スパイダースの“暴走する男たち”、12年ぶりに再演!
関西ウォーカー
WEB連載「はーこのSTAGEプラスVol.35」をお届けします。
劇作家・演出家・俳優の長塚圭史が主宰する演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」が、結成20周年を迎えた。その中で、再演希望の声が最も高い「はたらくおとこ」を12年ぶりに再演。紅1点の女優以外、キャスト8名の男は初演と同じメンバーだ。
ツアーは11月3日に東京からスタート。福岡、広島を経て、12月2日㊎・3日㊏、大阪で3公演上演される。
舞台は雪深い北国の村。東京から脱サラした男たちが、一度は破れた幻のリンゴ作りの夢に再起を賭ける物語だ。あ、今もし、「奇跡のリンゴ」的感動作をイメージした人がいたら、ま~ったく違うので。そして、近年の長塚の作風とも、ま~ったく違うので。
久しぶりに来阪会見した長塚が、12年ぶりの「はたらくおとこ」を語った。
【初演の時代】
「はたらくおとこ」の初演2004年は、関西ウォーカー創刊10周年だった。当時、長塚が語ったコメントがある。「気が付けば、すンごい濃ゆいメンバーが集まってしまいました。完全にケモノの匂いが漂っています。これでまた、ひっどい話をやっちまうつもりでありますので、楽しみに」。
当たり前にある日常の風景が、笑いに包まれながら徐々に歪み、狂気へと変貌して行く。これが当時の長塚ワールドだった。狂気を孕んだバイオレンス。これまでにない刺激的な世界観は、他の演劇作品と一線を画し、スリリングでとてもおもしろかった。特に“暴走する男シリーズ”のこの作品は、複数の演劇賞も受賞し、阿佐ヶ谷スパイダースと長塚圭史が、グンと注目された作品だ。
ところが長塚は、2008年~09年の英国留学の以前以後で、作風が変わる。2011年には「葛河思潮社」を始動し、三好十郎の「浮漂(ぶい)」は今年で3回目の上演。時代を超えてある人間の情や思いを、言葉の素晴らしさと共に、力強く繊細に今に届けてくれる。青年から大人に成長した、と思う。うまくなった、とも思う。そして今、演劇界でまた新たな長塚ワールドを構築し始めている。
でも、長塚のエネルギッシュな暴力的初期作品時代、おもしろ怖くて大好きだった。死体を蹴っ飛ばしてウダウダ言ってたり、顔半分が溶けてたり、内臓引っ張り出したり…。血が流れるのは毎度のこと、全員死ぬ、物語が破たんする…。徐々にバイオレンス度もエスカレート。今ならもうR-15指定だろうね、きっと。
【阿佐スパ20周年】
長塚は、近藤良平率いるダンスカンパニー「コンドルズ」のメンバーだった。「コンドルズ」の20周年公演に出演したことで、「あ、オレ達も20周年じゃん」と気づいた。「何度もやめようと思ったけど、続いてきてる。解散は簡単、続ける方がけっこう難しい。でも僕らは、1本やり終えて『まだもうちょっと』、もう1本やって『まだもうちょっと』って、やってるところがある」。中山祐一朗や伊達 暁らメンバーとも、今は「みんな家族も出来て、親戚みたいな感じ」の付き合いになっている。12年ぶりの再演となる今回、「初演メンバーが全員そろって再演できるなんて、なかなかないよ。体力的にも当時のままの印象だしね」。
【今回の作品について】
昔の作品を再演しようと考え「この作品は、乱暴で、ぶっ飛んでて、ハチャメチャ。作品として突き抜けてるけど、構造的にはしっかりしてる。俳優が思いっきりやれるように当て書きするなんて、もうずっとしていないし、音楽も最近じゃ使わないことだってあるけれど、今作は存分に流しまくっている。青臭い部分もあるけど、20代の自分に『最近、考え過ぎるようになってない?』って言われてるような気もしてね。こういう作品を見直すことが、また新たな作品の可能性を導き出すきっかけになったらいいなとも思う」。
作品は今回「昔の感じを大事にして、やっていこう」と、ほぼ当時のまま上演。「スマホもなく、原発問題もなかった時代のものが、どういうふうに今、響くのか、興味があります」。当時は、無色透明で見えないものの恐怖を表す言葉として“サリン”を使っていた。その怖さは、今の方がより強く感じられるのではないだろうか。が「これは奥さんの思い出の味のリンゴを追う話だから。社会派劇じゃなく、ある種センチメンタルな“思い”をどれだけ伝えられるか、です」。
演劇ライター・はーこ
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