うつ病患者の入院する閉鎖病棟とは?/『マンガでわかるうつ病のリアル』(27)
人のやさしさにふれたときの感情、魂が救済されたような感覚は忘れられない

「前述の通り、個室に閉じ込められていた数日間はとてもつらかったです。ですが、寂しいことを伝えると看護師さんは検温などの時間以外にも、時間を見つけて僕の部屋に会いにきてくれました。『時間を見つけて私たちが会いに来ますから』『今ちょっとならおしゃべり付き合えますよ』と言われたときの嬉しさを、退院から5年近くたった今でもハッキリ覚えています」
「僕が『僕はどうせまた自殺する。それが成功して終わるか、失敗してまたここに閉じ込められるか…… 一生それの繰り返しだ。』と訴えたときに『ずっと繰り返されるわけじゃない。いつかそうじゃなくなる日が必ず来ます。』と言われたときの、暗闇の中にたった1つロウソクの灯りが見えたような救われる感覚を、今でもハッキリ覚えています。絶望感や屈辱感でいっぱいだった筆者がこのときはじめて『きっと元気になれる』と希望を持てました。そして自死を図って入院した筆者から、やっと『死にたい』という思いが消えました」
「個室の数日間は人生でトップ3に入るつらさでしたが、この数日間ほど人の温かさを感じたことはありませんでした」
偏見にとらわれず、回復の手段として入院も検討してほしい

「このように、閉鎖病棟はつらい病気に苦しむ人たちが少しでも早く元気になれるように、たくさんの工夫や配慮がされています。つらいこともイヤなこともありましたが、トータルではとても過ごしやすい環境でした」
「筆者は入院してよかったと思っていますし、筆者のうつ病が治るのに絶対必要だった過程だと思っています。もしうつ病が再発したらきっと早めに入院を選びますし、身近な人がうつ病になったら『入院』という選択肢を頭の中に入れておくように言うと思います」
「もちろん筆者が入院したような病院だけではなく、『怖い』『ヤバい』という印象を受ける病院もあるでしょう。目の前で見たら『虐待』というワードが頭をよぎるようなことを患者にしている病院もあるでしょう。実際に刑事事件も起きていますし、検索すればゾワッと鳥肌が立ってしまうような衝撃的な話もあります。家族が受け入れてくれないから、本人が退院したがらないからなど、色んな理由で一生入院する人もいます」
「ですが、“そういう例もある”からといって閉鎖病棟がすべて怖い場所ということにはなりません」
「入院したほうがいい状態なのに、イメージのせいで入院を選択できない。そもそも入院という選択肢が浮かばない。あるいは本人が入院してきちんと治したくても周りが止めてしまう。そのせいで、もし入院していれば防げたかもしれない問題が起きてしまう……こんなもどかしい話はないのではないでしょうか?」
「閉鎖病棟への入院は治療の手段。言い換えれば、患者さんが望む“普通の毎日”に戻るための手段です。どうか閉鎖病棟はヤバい場所ではなく、治療の選択肢の1つなのだと覚えておいてください。いつかあなたや、あるいはあなたの大切な人を助けることになるかもしれません」
次回「閉鎖病棟は監獄じゃない、楽しいこともちゃんとあった」では、今回に続いて、精神病院入院の体験から、入院中の患者さんに用意されていたレクリエーションなどの楽しみを紹介する。