“ポスト鬼滅”に賛否?「呪術廻戦」の人気爆発ぶりをデータと現場の声で紐解く


「鬼滅の刃」の“次にくる”と評されて炎上したワケ

「呪術廻戦」は近日の人気ぶりから、たびたび“ポスト鬼滅”として取り上げてられてきた。その最たる例が、2020年12月に放映された「サンデージャポン」だ。紹介された“ネクスト鬼滅”というワードがTwitterトレンド1位になりつつも、反響の中には、双方のファンからの“ネクスト鬼滅”という言葉への疑問の声が目立った。

そもそも、“ポスト〇〇”といった表現は、広く一般に対してわかりやすくアピールするために用いられるもの。内実を理解しない安易なラベリングのようにも感じられることから、ファンには敬遠されがちだ。それを踏まえたうえで、「呪術廻戦」を“ポスト鬼滅”と評することにファンが特に違和感を覚えたワケを探る。

「呪術廻戦」は前述の通り、連載開始当初から期待値が高く、売上でもそれに応えてきた。アニメ放送開始時点の累計発行部数を比較すると、「鬼滅の刃」の500万部(既刊15巻)に対し、「呪術廻戦」は850万部(既刊13巻)と、単巻平均では実に倍近くだ。

また、「呪術廻戦」では、3巻発売に合わせ、人気キャラクターが作品を紹介するアニメーションPVが配信され、告知ツイートが1.7万いいねを獲得。6巻発売を記念したクラウドファウンディングでは2000万円以上の支援金(※オリジナルグッズの受注・制作に使用)を集めるなど、初期から積極的なPRが行われ、話題を集めてきた。

以上から、アニメ放送開始前からの「呪術廻戦」の注目の高さがわかり、同じ時点での人気や話題性は「鬼滅の刃」を上回っていたという可能性が浮上する。多くのファンを抱えてはいたものの、比較的遅咲きの大ヒットとなった「鬼滅の刃」よりも“先”に「呪術廻戦」のファンになっていた人も多いと予想されることから、“ポスト鬼滅”というワードへの反発が強かったことがうかがえる。

ただ、SHIBUYA TSUTAYA広報担当者が、「呪術廻戦」のブレイクについて「『鬼滅の刃』をきっかけに、アニメを入口にコミックへ興味を持たれる方がさらに増えてきた印象です」と話すように、その現在の急成長の裏には「鬼滅の刃」のヒットの影響もあることは間違いないだろう。

違いを理解したうえで、「鬼滅の刃」と共通する点を挙げると…

また、ファンの声として大きいのは、2つの作品の内容が「全然違う」というもっともな意見だ。「“和”の世界観」「残酷描写を含むダークファンタジー」「呪い、鬼という伝統的モチーフとのバトル」などの共通点がありつつも、舞台となる時代設定をはじめ、ストーリーやキャラクター、作風は大きく異なる。

別の魅力的な作品であることを理解したうえで、あえて「呪術廻戦」が「鬼滅の刃」と類似する点として、著者とジャンプマンガの関わりを挙げたい。

「呪術廻戦」の芥見先生は1992年生まれで、「どこかで見たような作風」を自称。担当編集者は「冨樫義博先生の影響が垣間見えると言われますが、創作の初期衝動としては、『BLEACH』にすごく影響を受けたと聞いたことがあります」「ジャンプ漫画にはひときわの愛着があるんだろうと思います」と語る( 「JUMP j BOOKS」公式note記事 より)。また、連載中の作品では「ワールドトリガー」の大ファンとして知られている。

「鬼滅の刃」の吾峠先生は1989年生まれで、「ジャンプに漫画を送るきっかけは銀魂でした」と告白。元担当編集者は「『ジャンプ』漫画は全般的に読んでいて、何かしら影響を受けていると思いますが、特に『ジョジョの奇妙な冒険』のファンだとおっしゃっていました」と説明する( 「ライブドアニュース」インタビュー記事 より)。また、「このマンガがすごい!2019」のインタビューでは、「ジョジョ」のほか「BLEACH」「NARUTO -ナルト-」などの作品を挙げ連ねた。

このように、いずれの著者もほぼ同世代で、自らが読者として親しんだジャンプマンガの影響を強く受けながら創作していると考えられる。ちなみに、実は上記の担当編集者は、いずれも同じ片山達彦氏。「鬼滅の刃」には連載立ち上げから関わっており、ある著名な作家のSNSでの発言によれば、「呪術廻戦」の立ち上げも同氏によるものだという。

ストーリーはまだまだこれから?アニメ&原作の気になる今後

アニメ「呪術廻戦」は現在16話まで放映されており、3月末に25話前後で終了する見込み。ストーリーの区切りを考えると、放映中の「交流会編」に加え、新たな任務を描く「起首雷同編」まで(原作8巻64話まで)を映像化すると予測できる。

原作15巻は3月4日(木)に発売予定のため、単純計算では、6月には1期と同じ2クール分のアニメを放映できるストックが溜まることになるが、現実的に考えれば、2期のスタートは2022年が濃厚だろう。

一方、本誌では、10巻から続く「渋谷事変編」が終結の赴き。連載中の話数は16巻に収録される予定なので、アニメ2期が2クールだった場合、「渋谷事変編」の完結までを映像化すると考えられる。しかし、「渋谷事変編」がこのまま終了してもなお、メインストーリーや主要キャラクターに関わる謎や伏線、課題は山積みだ。人気はともかく物語としては“まだまだこれから”の作品といえる。

連載3周年を控え、「女子大生が選んだ“2021年トレンド予測”」など数多のトレンド予測でも1位を獲得し、今後さらにヒット街道を駆け上がっていくであろう「呪術廻戦」。昨年、「鬼滅の刃」「ハイキュー!!」「約束のネバーランド」といった作品が完結し、年明けすぐに「進撃の巨人」の次巻での完結が発表されるなど、マンガ界では大人気シリーズの終幕が続く。“〇〇ロス”を抱えているならば、「呪術廻戦」にどっぷりハマってみるのもいいかもしれない。

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