Twitterの絵日記が書籍化、そして連載漫画家に。ハンバーガーさんに聞くネット発の“まんが道”

動画共有サイトやSNSの普及で、インターネット発の作品やクリエイターが人気になることが珍しくなくなった現代。漫画界でもSNSで公開した作品が注目され、それを足掛かりに商業作家への道を歩む人が少なくない。出版社への持ち込みや新人賞の受賞だけではない、新たな“まんが道”が生まれつつある。

Twitterの「ハンバーガーちゃん絵日記」が話題に。プロデビューしたハンバーガーさんにインタビュー


コミック電撃だいおうじ『忍者と殺し屋のふたりぐらし』や青騎士『ハンバーガーちゃんのまんが道。』を連載する漫画家のハンバーガーさんも、SNS発で漫画家デビューを果たした一人だ。ハンバーガーさんは2019年から自身の日常での出来事を、“ハンバーガーちゃん”というキャラクターが体験している体で描いた絵日記漫画をTwitterで公開。ハンバーガーちゃんのかわいらしさや、どこか悲しくも笑える生活の様子が人気を集めている。5月27日には加筆修正や描き下ろしを加えた単行本『ハンバーガーちゃん絵日記』が刊行され、着実に商業漫画家として歩みを進めるハンバーガーさんに、令和の“まんが道”がどういうものかをインタビューした。

Twitter絵日記で話題のハンバーガーちゃんとは?

ハンバーガーちゃん絵日記 書影

――『ハンバーガーちゃん絵日記』刊行おめでとうございます。まずは“ハンバーガーちゃん”を知らない人のために簡単に説明していただけますか。

「自分がTwitterでよく見ていた絵を描く人たちが女子高生化の診断メーカー(※名前を入れるとランダムでお題に対する結果を出すサイト)で遊んでるのを見て、面白そうだなと思って自分もそれでキャラクターを作りました。自分のペンネームがハンバーガーなので、女子高生化したキャラとして生まれたのが“ハンバーガーちゃん”です。もともとブログで日記を書くのが趣味だったので、このキャラクターで絵の練習がてら絵日記を描いてみようかなと始めたのが『ハンバーガーちゃん絵日記』のきっかけです」

――ゲームで遊んだり日常で小さな失敗をしたり、ハンバーガーちゃんの過ごす日常がほほえましい絵日記ですが、内容はすべてハンバーガーさんの実体験なんですよね?

「起きてることは事実ですが、かわいい女の子を描こうとしているので、リアクションは女の子らしい感じにしています。ただ、出来事への感じ方なんかは基本的には自分と一緒ですね」

診断メーカーで誕生したハンバーガーちゃん


――2019年4月に絵日記をはじめられたとのことですが、本数としては現在何本ぐらい描かれているのでしょうか。

「最初の頃は毎日は描いていないですし、たまに休むときもありますが、2年間で600本は描いてると思います」

――「絵日記」というと簡単に聞こえますが、毎日フルカラーの1ページ漫画を描くのって、なかなか大変な気がします。普段はどのくらいのペースで描かれているんですか?

「絵日記は一本2時間ぐらいで描いています。もともと21時ぐらいから0時ぐらいまで夜に絵を描く時間をとっていたので、その間に描いている感じです」

「無料で読めるからこそ」ファンアイテムとして細部まで修正

【画像】単行本には描き下ろし漫画も収録。絵日記の描き下ろしとは……

――『ハンバーガーちゃん絵日記』書籍化では、描き下ろしの漫画も収録されていますね。出版に至る経緯も日記になっていますが、それを読むとあまり書籍化には前向きではなかったようですが。

「簡単に言えば、あまり商業っ気を出したくなかったというか、絵日記はTwitterで無料で読めるからこそみんな見てくれているものかなって。お金を払ってまで見たい人って言うのはそんなにいないだろうと思っていたので、『書籍化しますよ』ってお話にも『いや、あんまり売れないんじゃないですか』って気持ちの方がありました」

――そうした気持ちがあるなか、今回書籍化を決めたきっかけはなんだったのでしょうか。

「以前、絵日記をまとめた同人誌を出したときの感触が悪くなかったんです。ただ同人誌はフルカラーで出そうとすると一冊当たりの頒価が高くなっちゃうんですよ。それが商業出版物として出すと一冊1000円強ぐらいで出せると。紙の本で読むと雰囲気も変わってくるだろうし、所有感もあるだろうなあと思って、ファンアイテムとしてなら出してみてもいいのかなあと」

Twitterで公開された時(画像左)と単行本での加筆修正版(画像右)


――Twitterで公開した絵日記もかなり加筆修正をされていますよね。

「Twitterで描いている時は『見られればいい』レベルで描いているので、書籍にするとき『これがそのまま本に載ったら恥ずかしいな』って部分が結構あったりして。お金を出して買ってくれる人にも申し訳ないなと思って、結構苦戦して描きなおしたりはしました。編集さんからも『早く原稿ください』って言われてるのに『もうちょっと修正したいんで……』と締め切りを伸ばしてもらったりもしました」

読み切りのつもりが連載に。漫画家デビューの心境は?

――絵日記の書籍化に先駆けて、『忍者と殺し屋のふたりぐらし』でオリジナル作品の連載デビューをされましたね。これはどういう経緯からスタートしたのですか?

「絵日記経由といえば絵日記経由です。編集の方から『うちでオリジナルやってみませんか?』ってメッセージが届いて。絵日記じゃなくてオリジナルってことは、ハンバーガーちゃんというキャラクターより、絵や描いてる内容の方を評価してくれてるんだなってうれしくなっちゃって、『それじゃあやってみます』と」

――オリジナル作品での連載に戸惑いはありませんでしたか?

「最初は読み切りのつもりではじめてたんですよ。読み切りならTwitterで『読み切り描きました!』って報告したらフォロワーがびっくりして面白いかなって。でも話していくうちにいつの間にか連載になっていて『これ連載なんだ!?』って自分がびっくりしました」

絵日記はハンバーガーさんの実体験をハンバーガーちゃんが演じるような形で描かれている


――絵日記以外でオリジナル作品をこれまで描かれていた経験はあったんですか?

「ないんです。ハンバーザム(※ハンバーガーさんとバーチャルYouTuberのマシーナリーとも子さんによる同人ユニット)でも、話を考える人間が別にいて、それに絵を足す側だったんで。話を考えるのは本当に苦手で、『忍者と殺し屋のふたりぐらし』がはじめてでした。やり方が分からないので編集さんにも結構相談したりで、めちゃくちゃ大変です」

――これまではイラストや二次創作がほとんどだったんですね。

「中学生の頃からちまちま絵を描いたりしていて、15年くらい前ぐらいからネットにも公開をしはじめて。ハンバーザムより前にも別の友達と同人誌を出したりもしました」

――その間、絵を仕事にしようと考えたことはなかったのですか?

「それこそ小学生のときは、漫画をすごく読んでいたんで『なりたいなー』ってぼやっと考えてて、卒業文集の将来の夢に漫画家って書いたりしたんですけど、成長するにつれプロになるって難しいんだろうなって思ってきたりもして。『いつかは』っていうわけではなく、割とそういう道は諦めて趣味で描いていたんですよ。かわいい絵が描けるようになれればいいなあぐらいの気持ちで」

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