【漫画】「使い方によっては天国にも地獄にもなる」マッチングアプリの恋愛事情を描く漫画家が見たもの

「“ひとりキャリー・ブラッドショー”を楽しんだ」

「私、海外ドラマの『セックス・アンド・ザ・シティ』がずっと好きだったんです。なかでも主人公のキャリー・ブラッドショーが大好きだったんですよね。彼女のような、仕事も恋愛も刺激と出会いでいっぱいの充実した人生なんて夢のまた夢だと思っていたんです。ましてやこの日本で…。ところが、マッチングアプリを始めたら、いつの間にか“ひとりキャリー・ブラッドショー”をしていたんです。『日本でもニューヨーカーな人生送れるじゃん!』って思えたんですよね」

※『セックス・アンド・ザ・シティ』は1998年から2004年にかけて放送されたアメリカの 連続テレビドラマ。ニューヨークに住む30代独身女性4人の仕事や友情、恋愛などを描いてい る。主人公のキャリー・ブラッドショーはコラムニストで、自分自身や友人の恋愛ネタやセ ックスネタなどをコラムにしている。

——私もその作品大好きなんです!確かにキャリーも松本さんも物書き(描き)ですもんね。

「あ、本当だ(笑)。登場人物のなかでも、キャリーが好きな人はアプリに向いているかもしれませんね。ドラマチックな展開が好きな女の子とか」

——日本にもキャリーはいたんですね(笑)。

「まだまだジャパニーズガールには抵抗があるかもしれませんが、おしゃれして、素敵な男の子たちとデートしまくって、適度に羽目を外して遊んだりするのは、最高に楽しいです」

——本当ですね。そう言われたら、もっと気分よく楽しめる気がしてきました!意見や価値観がガラッと変わるかもしれませんしね。

「『グッドルッキング天国』ですしね!それもきっと、出会えるかどうかは人それぞれだけれど」

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突如始まるガールズトーク!求めているものは何?

「アプリを使っているとのことですが、逆に聞いてもいいですか?『真実の愛がほしい』という欲求があったりはしないんですか?」

——インタビューされてしまっている!今は「いい人がいれば」ぐらいですね。私は松本さんとは逆で、仕事がうまくいっている時のほうが誰かに会いたくなるんです。一生懸命仕事したら眠たくなるみたいな、三大欲求に近い感覚です。ただ、コロナのこともありますし多くの人とは会わずに、今は特定の人、作品内でいうとチアキにとっての「先生」のような存在の人だけ会っています。
※「先生」は『38歳バツイチ〜』作品内で登場する、チアキがアプリで出会った“崇める存在”。

「『不特定多数の人と出会いたい』という欲求も強いのですか?」

——そうですね!不特定多数の人と会いたいという背景には、チアキみたいに好奇心というのもありますし、その「先生」に「これ以上ハマりたくない」という理由もあります。

「なんか、切ないですね。その人に『好き』という感情は抱いてないんですか?」

——もしかしたら、好きだし付き合いたいのかもしれないんですけど、心の中に「アプリの出会いに本気になってはいけない」という感情もあるんですよね。「恋」という言葉を使えるほどきれいな関係でもないなと。

「じゃあもしその人が『付き合いたい』って言ってきたらどうするの?」

——それは付き合います。 (即答)

「なるほど(笑)。それは確実に恋心が芽生えているんじゃないのかな。もしこれから関係を続けていくうえで心が苦しくなっていくようだったら、告白して自爆したほうがいいんじゃないでしょうか」

——実は、一度軽く告白したことがあるんですよ。

「え!」

——でもその時「うーん」って顔をされてしまって。けどそこで関係を切ることができなかったのは、相手の顔や声、体温まで全部を気に入ってしまったからです。彼と会うと、仕事のパフォーマンスがすごく上がるというか。だから崇める対象、「先生」なんです。

「すごい!そんなポテンシャルの人に私も会ってみたいです…。そんなにパワーがあるのなら、『私だけにして!』と詰め寄った挙句に、そばからいなくなってしまったらもったいないかもしれませんね」

——松本さんならそう言ってくださると思ってました(笑)。

「これはもうその人から卒業しない限り、アプリはやめられないですね。その人への興味がなくなったら、アプリへの執着心もなくなるかもしれません。なんのしがらみも感情の揺らぎもなくアプリでの出会いや男の子との関係を続けていくというのは、かなりの工夫が必要だと思います。自分だけのルールを決めて付き合っていかないと、いわゆる『沼』にハマってしまうから危ないよな、と思います」

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——そうですよね。今は今ですごく楽しいのが、また困りものです。

「私たちが使っているマッチングアプリのいいところといえば、『遊びの関係でもなんでもありじゃん』という風潮になっているところだと思うんです。婚活アプリでは、遊び目的なのに『恋人を探しています』と言って相手を騙す人がいることもありますよね。だからそのあたりがクリアなのがある意味でいいところなんじゃないかと思います」

——使用目的が結婚や恋愛一択だけじゃないのがいいですよね。同性の友達探しでも、被写体探しや同居人探しでもOKなわけですし。

「沼るのもある意味『アリ』ですよね」

——実はアプリのことをちゃんと話すのは、松本さんが初めてなんです。松本さんのお話を聞いていると、だんだん前向きな気持ちになれました。自分と同じように「“いろんな人と出 会っているのが楽しい”と思える人がここにいるんだ!」と思うと、とても心強いです。

「刺激的なことをおもしろみに変える能力のある人は、アプリを楽しめると思います。まともに扱われないと損した気分になる女性からすると、嫌な思い出しか残らない結果になりそうですが。お姫様みたいに自分を完全に愛してくれて、好意を誠実に持ってくれるだけがおもしろいデートじゃない。“人と出会うこと自体がおもしろい”というくらいの許容範囲でやると、普通に楽しいアプリなんじゃないかな」

——相手に何かを求めすぎなければ楽しい。これは本気の恋愛にも言えることかもしれませんね。心に刻みます!

人との関わり合いであることに変わりはない

恋愛関係になるのも、友達をつくるのも、寂しさを紛らわせるのも、アプリを“上手に”使えばできることだと教えてくれた松本さん。今でこそ「ニューヨーカーみたいで楽しかった」と語るが、それは松本さん自身が体験したからこそ言えることだ。

松本さんの作品を読み、話を聞いて感じたのは、アプリでの出会いではあるが人との関わりであることには違いないということ。松本さんはその好奇心から、マッチングした人たちを 「アプリだから」と雑に扱うことなく1人1人ときちんと向き合っていたように思えた。だから今、前向きな結論を出せているのではないかと思う。

アプリの種類もさまざまなように、ユーザーの目的もさまざま。一概に「いい」とも「悪い」とも言えないものだが、ただ松本さんも“チアキ”も楽しそうだった。それだけは事実だ。

※記事内容はあくまで著者個人の体験談・感想です。すべてのマッチングアプリに当てはまるわけではありません。

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