【漫画】転校生に感じた恋心、惹かれた真相に慟哭――。父親なき少女の初恋に反響集まる
衝撃的に映るラスト、漫画に託した「まったく特別なことではない」という思い

――本作を描いたきっかけを教えてください。
「本作では精子提供においてでしたが、離別やその他の理由で兄弟として共に育たなかった兄弟が、他人として出会った時にお互いがわかるのか、また互いの類似点をどう捉えるのか、という疑問が元々ありました。ある時に、ジェネティック・セクシュアル・アトラクションという近親者間に起こることのある現象を知り、この物語を思いつきました」
――本作はカズキの視点で描かれています。未婚の母を尊敬し、前向きなカズキだからこそ、マコトとの間にある真実に慟哭する姿は胸を突かれました。
「カズキとマコトは大人びた聡明な少女に描こうと努めました。特にカズキは賢く、親友の少女らしい嫉妬にも大人な対応を見せられる子に。取材などで、賢いが故につまづいてしまう10代たちに出会ったことも影響しているかもしれません」
――そうした人物描写は、表情をはじめ漫画表現からも伝わってくるものがありました。作画で特に力を入れた点や、ご自身でも気に入っているシーンがあれば教えてください。
「マコトとカズキがどこか似ているようにとは意識しました。また、マコトは母親に似た鼻と赤髪で母親の面影を。逆に、カズキは母親とは似ていない、父親似に描きました。母親と似てないからこそ、母親に憧れ、父親に思いを馳せたという意味を持たせたいと思いました」

――漫画に描く上で難しい題材だったのではと思います。本作を描く上で苦労したところや、または意外なところからヒントを得た部分はありましたか。
「題材としては難しいものですね。キャラの考えは別ですが、漫画として何事も否定はしないように描くこととしているので、そこは気をつけました。ストーリーとしては、すぐに思い浮かびました」
――結末は衝撃的に映りますが、マコトの母が「記事にするような出来事ではない」という台詞もあり、実は「この世界で当然起こりうる失恋のお話」とも読めると感じました。
「その通りで、全く特別なことではないという思いで描きました。精子提供も、同性を好きになることも。自分の初恋が『ジェネティック・セクシュアル・アトラクションという現象に過ぎない』とカズキ自身が賢さゆえに“気付き、決めつけ、失望してしまった”ということも、多くの方が恋愛や友情で感じてきたものと同じで特別なものではなく、少年少女が大人になるためのイニシエーションなのかもしれません」
取材協力:駒魔子(@pe_roco)