真剣勝負のプロ棋士、頭の中は「天ぷら」に「動画収入」!?雑念多き“非本格将棋漫画”が面白い

花四段の脱線っぷりや、随所で光るくすっと笑えるユーモアが読者の反響を呼び、SNSでのエピソード掲載時には1万いいねを超えることもある本作。2022年6月7日には、朝日新聞出版より描き下ろしも収録した単行本の第1巻が刊行され、好評を受け既に第2巻の制作も決定しているという。

遠い世界に思える“プロ棋士”の、親しみある一面に着目

【漫画】「花四段といっしょ」を読む増村十七 / 朝日新聞出版

作者の増村さんに話を聞いたところ、本作が誕生したきっかけは将棋連盟会長でもあるプロ棋士の佐藤康光九段を紹介する自主制作漫画だったという。

「以前、コミティア(※一次創作作品の即売イベント)で無料で頒布していた、佐藤康光九段の紹介漫画が、現在の朝日新聞出版の担当編集者の目に留まり、『こうしたコメディタッチの将棋漫画が作れないか』とお話を受けたことが直接のきっかけになります。ちなみにその漫画は、将棋を全く知らない方たちに、少しでも興味を持ってもらえればと思ってかなり誇張して作ったのですが、ネットに公開したところ、予想外に将棋関係者の方々にも広まってしまい、最終的にご本人にも伝わってしまったようです」

もともと将棋ファンだという増村さん。真剣勝負のプロ棋士の世界を追いかけてきたこともあり、コメディとして描くことも当初は自信がなかったと語る。

「プロの棋士の皆さんには、本当に尊敬の気持ちしかなかったので、前述の漫画は、誇張した表現でご本人の気を害していないか、心苦しい気持ちもありました。

ですが、取材で実際に、プロの方々や棋界の関係者にお話をうかがっていくと、決して勝ち負けだけに人生の全てを捧げているばかりではなく、人間的な生活の側面も見えてきました。強い誇張でギャグを連発するのではなく、対局中やそれ以外の時間に起こる小さな出来事をちゃんと拾っていけば、少し遠い存在に感じがちな棋士という存在を、読者が自分と“いっしょ”の人間と感じられて、それだけで楽しい作品になるような感触が湧いてきて、制作を本格的にスタートすることができました」

本分は対局にあるプロ棋士自身、初心者やアマチュア向けのイベントや番組への出演など、さまざまな形で、より多くの人に将棋に興味を持ってもらえるよう振興に取り組んでいる。「“非”本格将棋漫画」と銘打っているのも、そうした棋士と将棋界への尊敬があればこそだ。

「この漫画は、将棋の知識ゼロの方でも楽しめる作品となっています。これをきっかけに将棋にも興味を持っていただければ、さらに嬉しいです!いま、現実の将棋界も、藤井聡太五冠のご活躍以外に、ABEMAトーナメントという番組でリアルタイムで素早い応酬の勝負を見ることができたり、里見香奈女流四冠によって女性初のプロ棋士誕生の可能性も出てきたりと、とても盛り上がっています。

将棋は指したことがないけれど将棋観戦には興味があるという人にも、『観る将のための将棋ガイド』(山口絵美菜)など、分かりやすい入門書も現在たくさんあるので、ぜひ楽しんでみてください」

勝負の世界であると同時に、伝統文化としての側面、さらには棋士の親しみあふれる個性も含め、多種多様に広がっている将棋の世界。まさに「花四段といっしょ」に、そんな将棋界をのぞいてみてはいかがだろうか。

花四段といっしょ 単行本第1巻増村十七 / 朝日新聞出版

取材協力:増村十七 / 朝日新聞出版

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