【掟破り】詳しくない人間が描いた「ギリギリ異世界転生しないお話」に「発想が凄すぎ」の声
「わざとはねているのでは?」フラットな興味から生まれたアイデア
タイトル通り、作者のsho.tさん自身、「異世界転生モノ」に詳しくなかった中で生まれた本作。実際に同ジャンルの作品群に触れた際に感じた興味が制作のきっかけになったという。
「とある漫画雑誌の編集者の方から異世界モノの漫画の流行や需要についてお話をうかがったり、普段の仕事で同ジャンルの小説に触れる機会があったので、以前から異世界モノの作品については意識していました。この漫画を描く少し前に、なんとなくいくつかの作品を試し読みしたのですが、転生するお話において主人公はトラックにはねられて死んでしまうという導入が非常に多いことに気づき、強く興味を惹かれました」
「異世界転生しそうでしない」という本作の核となるアイデアも、そうした気付きから生まれたもの。「転生の際に主人公がトラックにはねられるというケースが多かったので『トラック運転手は仕事として主人公をわざとはねているのでは?』と思ったのが漫画の元となっています。それでもし主人公にとどめをさせず、異世界に転生させることができなかったらどうなるんだろう、という形でアイデアを広げていきました」

実際に漫画を描き始めるまでは、死んで別の人間に転生する「異世界転生」と、自分自身のまま別の世界に飛ばされる「異世界転移」の違いもよく分かっていなかったというsho.tさん。「異世界を舞台にした漫画作品には一定の流行があって、中には転生や転移をしない物語があったり、ゲームの世界じゃないのにレベルやステータスの概念があったりしたので、最初はかなり戸惑いました」と振り返る。
そうした背景の下描かれた漫画は、“お約束”を知っている人はニヤリとし、異世界モノに詳しくない読者にも違った目線で楽しめる作品になっている。sho.tさんは自身が詳しくないがゆえに、いわゆる「異世界モノあるある」には固執しなかったという。
「“異世界転生モノの導入部分”をベースにした作品ですが、あくまでも登場キャラクターがどのように行動するかという点に重きを置きました。その方がいろいろな人に読んでもらえると思ったんです」
異世界モノに感じた、作家ごとの強い個性。「自分だったら」と興味
本作のほかにも、英語の教科書のような雰囲気ながら、外国人のジョージが本当に異世界転生してしまう漫画『ISEKAIジョージ』も制作しているsho.tさん。それまであまり深くは知らなかった「異世界モノ」に対する新鮮な興味が、これらの作品を描く源となった。
「異世界モノの作品をレビューする動画などもたくさん観させてもらったのですが、その際に異世界転生・転移を含む“なろう系”と呼ばれるジャンルの作品にはお決まりの様式や流行が存在していることに気づきました。一見すると同じような作品に見えても、導入部分に作家さんごとの個性や演出の工夫が感じられてとても面白かったです。『ISEKAIジョージ』は、自分だったらどういう風に異世界モノの作品を描くんだろう、という純粋な興味から描き始めたものです。ただ突発的に始めた漫画なのでどのように収拾をつければよいか苦労しました」
プロの漫画家として活動するかたわら、WEB上で短編作品を発表し、たびたび注目を集めるsho.tさん。「不定期に投稿してきた『ISEKAIジョージ』も、先日総集編として投稿しました。本作と併せて読んで頂けると嬉しいです」と話しながら、「これからもネット上で短編作品は描き続けていきたいですが、まずは連載用のネタを急いで詰めて、正式な作品としてお送りできたらな……、と思っています」と、漫画家として今後の活動予定についても教えてくれた。
取材協力:sho.t(ショウ)(@shoshot005)