“余命アイドル”と“天使の幻覚”の出会いが生んだほろ苦い奇跡。漫画「東京エンゼルコール」に反響
――「東京エンゼルコール」を描かれたきっかけを教えてください。
「もともと『天使が見えるようになる薬』のお話と『余命アイドル』のお話は、別々のネタとして考えていました。しかし1年ほど前に、それらを合わせると意外に噛み合って、一つのストーリーにできそうだと思いつきまして『東京エンゼルコール』のお話ができました」
――四季が選んだ「余命アイドル」の道はインパクトがありながらどこか現実味も感じさせるアイデアです。
「『余命アイドル』は近年のSNSの普及によって有名になってきた人たちを見ていて思いついたアイデアでした。最近のYouTuberやSNSのユーザーはみんな、人気を得るためならば自分自身さえもコンテンツにしてしまうようなたくましさがあるなと思っていまして、そのたくましさが、もし行き着くところまで行ってしまったらどうなるのか?と自分なりに考えたものが『余命アイドル』の始まりでした」
――また、「薬を飲むと見える天使」も強く印象に残りました。
「『天使が見えるようになる薬』というのは逆に、都会というものにある、漠然とした倦怠感のイメージから連想したものでした。天使が急に現れて、自分の漠然とした辛さを救ってほしいと考えているのは自分だけじゃないと信じています」

――アイドルとしての顔と本心がある四季、そして自らの表情を得ていく天使と、物語が進む中で2人の表情に説得力を感じたのが印象的です。
「作中の人物の気持ちがコマの進行に沿って変わっていく、表情の“流れ”には少しこだわっていました。四季が本当は『余命アイドル』を後悔していたと泣きながら言う場面の表情は、彼女が話をしている内につい感情が溢れてしまったような空気感が出せた気がしていて個人的に気に入っています」
――また、少年ジャンプ+で連載されていた『エイトワード魔法学校へようこそ!』の読者からも画作りに好評の声が集まっていました。本作で変化させた点や意識したポイントはありますか?
「そういった感想があったのはとても嬉しかったです。前作はファンタジー世界が舞台で、今回は現実世界のお話だったので少しベタを多めに使ったりと、柔らかくない絵柄を目指していました」
――このほか、本作を描く上で力を注いだ点があれば教えてください。
「マネージャーの宮瀬という登場人物が個人的に結構いいキャラだと思ってるのでかっこよく見えるように個人的に力を注ぎました」

――四季は救われながらも、結末は切なさが残るものでした。どんな想いを込めて描かれたのでしょうか。
「四季が余命にも、アイドルにも囚われることがなくなったのはこれ以上ない救いなのですが、同時に親友を失ってしまう悲劇も起きました。そしてそれは、四季が望んだことではなく天使の個人的な願いなのです。天使の『あなたは生きて』という言葉の意味を考えながら四季はこの先の人生を生きていく。そういう、希望でも絶望でもない終わりを目指して描いていました」
――漫画家としての今後の目標や活動について教えてください。
「漫画家として大きな目標とかはあまりないのですが、いま私を応援してくれている人たちに楽しんでもらえる作品作りを頑張りたいと思っています。あと、作品がアニメ化とか実写化するようにもなりたいです。また、Twitterでは『ザコ絵師ちゃん日記』という4コマ漫画も公開してるので見ていただけると嬉しいです」
取材協力:さりい・B(@danny_2011rs)