「逃げる」って、そんなにダメなこと!?少なくとも私は逃げたから今ここにいる/うつ逃げ【作者に聞いた】



うつ病は、今まで固執していた考えを見直すいいきっかけになった
なおにゃんさんは子供の頃から、「逃げるな」「逃げちゃダメ」と聞かされていたそう。休職が決まった時に「情けない」「逃げるようで恥ずかしい」などと感じていた背景には、この幼い頃からの刷り込みが影響していたのだろうか。
「個人的には、刷り込みが影響しているように思います。両親はとても真面目で教育熱心な人だったので、私自身、根性論のようなものをすごく聞かされて育ちました。だからこそ、頑張らなかったり、逃げたりする自分はすごくダメなことをしていると自分を追い詰めて、責めてしまったりしたことも。でも、うつ病になってからは、それだけが『正しさ』ではないと思うようになり、今まで固執していた考えを見直すいいきっかけになったと思っています」
サイゴン川を眺めながら、「もしも人生を大きな川だと思ったら逃げることは単なる方向転換に過ぎなくて、逃げることでちゃんと前に進んでいるんじゃないんだろうか」と感じた今回のエピソードは、「うつ逃げ」の根幹を成しているように感じる。
「およそ10年前の出来事ですが、いつかこのことを何らかの形で描くだろうなと思っていたので、当時、自分なりに考えていたことをそのまま思い出して描きました。でも、サイゴン川の写真をあまり撮っていなくて、漫画を描く上で資料不足だったのが個人的にちょっと悔やまれました(笑)」
またベトナム旅行中に驚いたこととして、大群のバイクが通る道路が描かれている。しかもこの道路には信号機がないとのことだが、ラッシュ時は絶え間なくバイクが走っている状態なのだろうか?






「そうなんです…!信号機はあるにはあるのですが、自分が渡らないといけないメインの通りには全然なくて。現地の人はタイミングを見ながらスーッと渡っていて衝撃でした。いつも信号機のある歩道を渡っている日本人からすると、『絶対に無理!』となる道路です。これから初めてベトナムに行かれる人は、現地の動画を事前に見て、道路を渡るイメージをしておいた方がいいかもしれません…(笑)」
信号が渡れず30分間茫然と立ちすくむ彼女のもとに、突如現れた謎の人物。果たして無事向こう側に行くことはできるのだろうか!?「うつ逃げ」を今後も楽しみにしてほしい。
取材・文=石川知京