旬の食材を使った丁寧な食卓が眼福!夫婦の食卓を描いた漫画「盛りつけ上手な円山さん」が話題【作者に聞いた】
寒い時季の定番料理といえば、鍋。具材を何にするのか、スープはどんなものにするのか、締めはご飯にするのか麺にするのか…鍋料理はバリエーションが豊かなだけあって、想像するだけでも楽しいが、ある漫画で描かれた夫婦が選んだのは“獅子頭(しーずーとう)”と呼ばれる大きな肉団子と白菜がたっぷり入った中国風の鍋。食材の調達から調理、食べる過程を丹念に描いた漫画は、読者の食欲をかきたて、Twitterで1.5万いいねの反響を呼んだ。


描いたのは漫画家の蟻子さん。作品は「盛りつけ上手な円山さん」としてWebメディア「MATOGROSSO(マトグロッソ)」で連載中だ。在宅ワーカーの夫婦2人で旬の食材を使った料理を作り、食卓を囲む。漫画としてはそれだけのことなのだが、2人が食事をしているところを見るとお腹が空いて自分も同じレシピに挑戦したくなってくる。そんな魅力を持つ「盛りつけ上手な円山さん」の誕生きっかけや、制作のこだわりなどを蟻子さんに聞いた。
メニュー選びから食べるまで。2人で作る食卓はきっと一番楽しい
「盛りつけ上手な円山さん」は編集担当からの依頼で制作がスタートしたのだそう。しかし、そのコンセプトは依頼時からは少し変化しているのだとか。
「依頼をいただいた時点では『夫が作った料理を夫婦が食べる』というコンセプトでした。内容を詰めていく時に、夫が1人で作っているより、夫婦2人一緒に作ってできあがった食卓のほうがおいしく感じられると思って、2人で一緒に料理をする話になっていきました。メニュー決めも2人で考えたほうがアイデアが広がりますし、5月のエピソードで描いた『かつおの卵黄漬け丼』では、妻のねりが翌朝にアレンジしているんですけど、そういうのも2人いるからこその広がりだと思っています」
「盛りつけ上手な円山さん」の最大の魅力はなんといっても、おいしそうな料理の絵だが、蟻子さんにとって“ご飯”は特別思い入れの強いテーマではなかったのだそう。
「企画をいただいた当時、Twitterでドラマの感想絵をアップしていたんですけど、その時に食卓の絵をちらっと描いたことがあったんです。それを担当さんがご覧になってご依頼をくださいました。もともとご飯の絵を描くことが取り立てて好きで…ということはなかったんです。ですが、デビュー作ではアイスクリームが出てくる話を描いていたり、今回もこうやってご飯の漫画を描くようになって、自分の中で“ご飯”というテーマは腐れ縁のような感じですね、描き続けることで愛着が湧いてきました。漫画内で登場する料理やレシピは私が考えているんですが、料理についても特別やるということはなくて、人並みです」
人並みと話す蟻子さんだが、過去ダイエットをしたことがあり、約2年で20キロほど体重を落とした経験を持つ。その時の経験が「盛りつけ上手な円山さん」でも生きていると話す。
「ダイエットを経て食べ物観が変わったんです。野菜をいっぱい食べるようになったので、それまで野菜をただ“なんとなく”食べていたのが、自分は白菜が好きなんだとか、春菊ってこう料理すると好みになるんだとか、そういうのがわかってきました。食材への目線とか、旬の食材の選び方の部分は『円山さん』に反映されているかもしれません」


見せ場というべき料理が出来上がったシーンの構図も、ダイエットで磨かれたもののようだ。
「ダイエットのために食事の写真を記録する習慣があって、そうすると段々『この角度がいいな』と写真としてこだわる部分が出てきたんです。そういう経験の積み重ねがご飯の見せ方の構図を考える時に役立っていると思います」
タイトルが“盛りつけ上手”なのも印象的だが、これにはどんな思いがこめられているのだろうか。
「実はタイトルは担当さんが考えてくださったものなんです。タイトルよりも先に数話描いていて、タイトルに付けられそうなキーワード…献立とか、料理上手とか…そういったものをたくさん出して、それで付けてくださったタイトルなんです。なので、盛りつけのハウツーを期待されると申し訳ないというのはあるのですが。ただ、毎話、食卓を大きく見せてはいるので、そこを“盛りつけ”と思っていただけたらと思います(笑)」