旬の食材を使った丁寧な食卓が眼福!夫婦の食卓を描いた漫画「盛りつけ上手な円山さん」が話題【作者に聞いた】

料理に集中してもらうために。擬音語の使いどころにも工夫

タイトルにある通り、主人公夫婦の名字は“円山”であることはわかるのだが、夫婦はお互いを名前で呼び合うことはほとんどなく、2人とも在宅仕事をしているとはあるが、仕事の詳細についてなど、細かい個人情報については描かれていない。

「キャラ漫画ではないので、読者の方に感情移入してもらうためにもキャラクターの匿名性は意識しました。漫画の中で一番料理に注目して欲しいというのがあって、それ以外の要素は極力省いていった感じです。ただ、設定としてはいろいろと決めてはあります」

1日ご飯のことをばかりしている“在宅の宿命”におののく夫・サビヲ。対して、妻・ねりは達観した様子。もしかしたら、ねりのほうが在宅仕事歴が長いのかもしれない?「盛りつけ上手な円山さん 5月 かつおの卵黄漬け丼」より(C)蟻子/イースト・プレス

今後、エピソードとして2人の設定について言及する可能性があるか聞くと「出てこないと思います(笑)」とのこと。あくまでも主役は“料理”という思いがあるからだそう。料理に注目を向けるために、ほかにもこだわりのポイントがあるそう。

「盛りつけ上手な円山さん 11月 白菜の獅子頭スープ」07(C)蟻子/イースト・プレス

「料理中のシーンにあまり擬音を入れないようにしています。ジュワ~とか描いてしまうと、絵を描くのを怠けてしまうので。ジュワ~と描かなくてもジュワ~を感じられるように頑張って描いているので、円山さんたちにも料理に集中してもらいたいし、読者の方にも伝わったらうれしいです。会話パートになると書き文字多いですけどね。“食材が料理になる”。その過程を見せたいというコンセプトがはっきりしている漫画なので、そのベストな方法を探っている感じです」

フルカラー連載なこともあり、作画には時間がかかっているのではないかと聞くと、フルカラーなこと自体は労力にさほど影響していないのだとか。

「料理の過程で、どのシーンを作画にするのかという部分に苦心していますね。工程のつなぎをどう表現するのかとか、絵にしてみたら『塩入れ忘れた!』と途中の工程が抜けてしまったり…。『盛りつけ上手な円山さん』に登場させる料理は毎月考えているわけではなく、最初に1年分ガチッと決めたんです。月ごとに食材とか煮る・揚げる・炒めるなどの調理方法のバランスを見て考えたんですけど、いざ描くにあたって何個かアドリブでメニューを変えたりもしています」

その苦労の甲斐があるのだろう。読者の中には、漫画に触発されて、同じレシピを作ってみたと報告してくれる人も多いのだとか。

「漫画のレシピで作ってみたと料理の写真をアップしてくださるのはうれしいことです。獅子頭は絵よりも素敵!という写真を読者さんからたくさんいただきました。漫画に登場させているレシピは自分でも作っているんですけど、私もまた食べてみたくなりましたね。私は漫画として一つの例しか提示できないんですけど、盛りつけをこうしてみたとか、味付けをアレンジしてみたとか、漫画から発展した形を見せてもらえるのが楽しいです」

最後に蟻子さんに今後の目標も聞いた。

「ずっと漫画を描いていたいです。料理漫画だけではなく、キャラクターをしっかり描く話も手掛けてみたいです。毎日漫画を描いていられるように、力をつけて今後も頑張っていきたいです」とのこと。

4月のエピソードから連載がスタートした「盛りつけ上手な円山さん」。1年分のレシピが集まる2023年3月のタイミングで単行本の発売も決まった。旬の食材を取り入れた丁寧な食卓。温かな時間を円山さんたちと楽しむのもいいかもしれない。

取材・文=西連寺くらら

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