「遺産相続」は“大事”だけど“特別”じゃない…夫を亡くした妻の“相続100日体験”がリアル【作者に聞いた】
――イラストレーターが社内に在籍されているとのことですが、ストーリーも社内で作られているのですか?
「物語は、相続の専門家ではない広報が編み出しています。相続の知識が全くなかった彼女ですが、所内で相続の話を耳にしたり相続の記事をたくさん目にしたりすることで自然と相続の知識が増えていき、そこで感じた『相続手続きってこんなに大変なのか!』という印象がこの漫画のベースにあります。
物語が始まったときのことを今振り返ると、相続が発生した11月1日から『もう2カ月も経過している』と感じるかもしれませんが、実はまだ相続手続きは終わっていません。このリアルな感覚を届けるために、連載はTwitterで始めました。一方、振り返りやTwitterユーザー以外にも楽しんでもらえるように、1週間ごとの物語をWEBで公開もしています」

――連載スタートを「11月1日」に選んだのは理由があるのでしょうか?
「発端を言えば、企画が2022年の9月、準備に1カ月強をかけ、11月1日から連載を始めた、というのが正直なところです。ただ、連載中に年末年始を挟みたかったので、11月1日以降に遅らせてはならない、という意識で準備を進めました。物語上の年末年始では、家族が集まり相続の話を少しすることになりましたが、それは同時にリアルな世界でも年末年始であるため、この漫画をきっかけに家族で相続の話をしてもらえればという想いもありました」
――作中では、相続と直接かかわらない「家族を亡くした女性の日常」に着目した話も多いのが印象的です。
「これも広報が当初より意識していた視点ではありますが、この漫画のベースはやはり『よくある相続』なのです。『相続手続きはこうするといいよ』という正解を教えてくれる解説本は世の中にたくさんありますが、多くの人がたどってしまう『よくある相続』は、決して解説本通りにはならないと考えています。
それは、多くの人が相続について知らなかったり、勘違いしていたりするからです。相続手続きを実際に代行している我々のような専門家ではない広報の視点があるからこそ、主人公は先走ったり、うっかりしたり、それがより現実的な物語になり共感を呼ぶのではないかと考えました。だからこそ、主人公が進む道を軌道修正したりアドバイスをしたりするために、ツイートにて専門家によるひとことメモを入れるようにしました」

――最後に、本企画に興味を持った読者へのメッセージをお願いいたします。
「物語の100日は、実際には単なる区切りにすぎません。ですので、100日目に何かが起こるという特定のイベントを期待するのではなく、相続が発生してからの『100日間』をまるまる追いかけていることを楽しみに見てほしいと思っています。100日目に到達したとき、その100日間を振り返ってどう感じるのか、それがこの漫画の狙いであり、読者の皆様に委ねているところです。
相続の100日間が、『あっという間』と感じるのか、『すごく長かった』と感じるのか、『自分が実際に体験した相続手続きよりも進み具合が遅い』と感じるのか、感じ方は自由です。この漫画とともに歩んだ相続の100日間の流れや重み、歳月について、何かしら感じてもらえれば幸いです。物語では、いよいよ相続手続きが本格化します。『ひとさまの相続手続きをちょっと垣間見る』感じで、最後まで楽しんでもらえるとうれしいです」
取材協力:G1行政書士法人 / 遺産相続手続まごころ代行センター