老紳士が“チェスが弱いロボット”を雇ったら…結末が美しい短編に反響多数「鳥肌立った」「最高のオチ」【作者に聞いた】
――今回のエピソードはどんなところから着想を得たのでしょうか?
「最初に思いついたのは、列車の中でおじいさんと古いロボットがチェスをしている場面と、『ロボットのくせに弱いね』という台詞です。そこから二人のやりとりがどう続くのかを、コマを割りながら考えていきました。
ラスト直前まではすぐに描けたのですが、どういう風に漫画が終わるのかだけわからず、いくつかエンディングのパターンを描きました。どれもしっくりこないなと思っている時に、冒頭のチェスが絡んでくるといいなと思いつき、今のような終わり方になりました」
――他の話と比べて、この話では人物の表情がほとんど動かないよう描かれているようにも見えました。
「ロボットとおじいさんの掛け合いで、あまりおじいさんに表情では演技をさせない方がいいと思ったのかもしれません。やりとりを描く中で自然とそういう風になりました」

――本作は「ミライのアイデア」で連載中の『不思議ヶ丘の人々』の一篇です。この連載がはじまった経緯を教えてください。
「Twitterでフォローしていた『ミライのアイデア』の編集者の方にメールで漫画の売り込みをしまして、お返事をいただき、企画案をいただいたのがきっかけです。『今世の中で起こっているトピックをフィクションの世界で描く』というコンセプトで、それに対していくつかアイデアのやりとりをさせていただき、『不思議ヶ丘の人々』という企画になりました」
――各話が「不思議ヶ丘」という場でどこか繋がっている感覚になれる作品です。オムニバス形式とした狙いはどんなところですか?
「もともと毎回1話完結の掌編漫画というイメージで始まった企画でした。それぞれの物語がどこかでつながっているような雰囲気にしたいなと思って『不思議ヶ丘の人々』とタイトルをつけました」
――これまでの作品と比べて、本連載でアプローチを変えたり意識している点はありますか?
「Twitterで描いていた『物語断片集』という掌編漫画に雰囲気は近いのですが、“今世の中で起こっているトピックをフィクションの世界で描く”というコンセプトのおかげで、これまで描いていた漫画よりも一本芯の通った作品になっているような気がします。1話ずつお話を描いていく中で『不思議ヶ丘の人々』の雰囲気が少しずつ出来上がってきているので、それを意識しながら描いています」

――今後この連載でやってみたいことや、創作活動全体としての目標があれば教えてください。
「『不思議ヶ丘の人々』に関しては、今の雰囲気を大事にしつつ、少しずつチャレンジを重ねて世界観を広げていけたらと思っています。いつか本にできたら嬉しいです。
また、ダ・ヴィンチWebで連載中の『鬼姫神社通り商店街』のような全く違う世界観の漫画にも挑戦しています。こちらも読んでいただけたら嬉しいです。いろんなテイストの作品をお届けできるよう、今後も楽しみながら漫画を描いていきたいです」

取材協力:ミヤギトオル(@mitume333)