誰とも話すことなく退職。休職中に見つけた夢に向かって「やるしかない」と突き進む/うつ逃げ【作者に聞く】












退職当日は、すごく気まずくて恥ずかしかった
「絵本作家になりたい」ではなく「絵本作家になろう」と決め、休職中の会社をついに辞めることに。退職日の様子について、詳しく聞いてみた。
「漫画ではあっさりと描きましたが、実はいろんな感情がありました…!(笑)一番はやっぱり、『めちゃくちゃ恥ずかしい』という気持ちです。ずっと休職していたのに退職日に突然現れたことが、本当に気まずくて…。みんなが、腫れ物として自分を見ているような気持ちになり、この場から早く消え去りたいと思っていました。また、誰にも挨拶できずに辞めてしまったので、すごく申し訳なかったし、今でも後悔しています。でも、その時の自分はそれでいっぱいいっぱいだったし、仕方がなかったのかな?とも思います」
これまで本格的に絵を描いたことがなかったなおにゃんさん。絵の描き方はどのように学んだのだろう。
「自分の場合、いわゆる芸術的なすごい絵は描けないので、とにかく相手に『伝わる絵』を描こうと意識しました。特に子供さんに読んでもらう絵本なので、別に芸術的な絵を描く必要はないし、『りんご』が『りんご』だと分かるなら、それで問題ないんじゃないかなと。下手でもいいから伝わる絵を描こうと思いました。むしろ小難しさを排除して、わかりやすい太い黒の線で囲ってはっきりとした色を塗るという、原始的な絵を描こうと思いました。結局伝わればオールオッケーだし、逆に『伝える』ことが一番難しいので、伝えようという気持ちで、今も一生懸命絵を描いています」
自分なりに絵を描いた絵本の企画が通り、2014年にはついに念願の絵本を出版。見本を初めて手にした当時の気持ちを教えてくれた。
「とても嬉しかったです。表紙がピンク色のパフェの絵本だったので、すごく可愛くて部屋に飾りたい気持ちになりました」
休職期間が終わり、ついに自らの手で夢を叶えたなおにゃんさん。果たして彼女が今、思うこととは何なのだろう。今後の「うつ逃げ」も楽しみにしてほしい。
取材・文=石川知京