【漫画】旧友が預けた「桜の盆栽」、託した真相に涙…。鬱屈した日々が盆栽で変わる「さくらの咲くころ」が胸に響く
――幼馴染との突然の別れ、その喪失を埋めるように残された盆栽へ向き合う姿が印象的です。本作はどんなことを思って制作された作品でしょうか。
「『生きるとはなにか?』という問いを物語のテーマにして構成していきました。夢を再燃させてもう一度頑張ろう!という展開ではなく、自分なりの幸せを見つけてポジティブに生きていけると、人生まんざらでもないよねという思いを込めて描きました」
――盆栽がキーアイテムになるのも新鮮に感じました。
「実は盆栽に関しては全く知識がなくて1次審査に通ったときに『大変だ!』と本やネットや動画でめちゃくちゃ勉強しました…。面白かったですがここが一番大変だったかもしれません。
取材では東京・上野の『
上野グリーンクラブ
』にうかがい、お話を聞いたり、許可を得て資料写真も撮らせていただいたり、充実した盆栽の作画ができたかなと思います。頑張って描いたので愛でていただけるとうれしいです」

――ノミネート後、プロの編集者と本編制作を進められたとうかがっています。制作中、特に印象に残っていることはなんですか?
「自分だけで漫画を作っていくと、たとえば私の場合はセリフ回しが長くなってしまったりと、描いている最中は自分では気づけない“ムダな部分”がどうしても出てきてしまいます。
それを俯瞰的視点で分かりやすく適切なアドバイスをくださる編集さんは『プロだなぁ…』と何度も思いました。しかも私の意図もしっかりくみ取ってくださった上でのアドバイスで『デキる…!』と唸りました。初ネームから100%以上の仕上がりになったのは編集さんのおかげです。
担当してくださった編集さんは“ほめて伸ばす”タイプの方のようで、いただく言葉も非常に温かく、やる気が出ました。親身になって漫画をともに作ってもらえるのは力強いことだなあ……、と実感しました」
――作品の応募時からの変化や、原稿を仕上げる中で特に力を注いだ点はありますか?
「描きたかったことは、応募時からぶれずに仕上げることができました。原稿で特に力を注いだポイントは、22から24ページにかけて、主人公が貴友の死を知ってからのリアクションです。元々このシーンはなかったのですが、編集さんのアドバイスで追加されたものです。その際主人公は泣かせない、と決めていたので『主人公を泣かせず、読んでいる人を泣かす』にはどうすりゃ良いか……とめっちゃ悩みました」

――最後に、これからの抱負をお聞かせください。
「ここずっと、ネガティブな雰囲気が日本全体に漂っていると感じます。特にコロナ禍は良い話を全く聞かなかった印象があって。元々自分も『不安』で右往左往してしまうタイプなのですが『これは良くない』とふと思ったんですよね。
漫画を描くにあたって“ポジティブ”な結末にしよう、というのが今後の目標です。読んでくださった方にも『楽しかった』『ワクワクした』など、明るい印象を与えられるような作品を作って行けたらなあと思います」
取材協力:斉藤ロジョコ / クニエ