イソウカイって何⁉︎同人誌売ってたら謎の客が来て広報漫画を依頼された件について、作者の永田礼路さんに聞いた

漫画家の永田礼路( @nagatarj )さんが描く「医総会マンガ」がTwitterで2023年4月現在4.8万件のいいねを獲得、またpixivでは2023年2月の月例賞優秀賞を受賞した。広報漫画なのに。ウォーカープラスでは、今話題の「医総会マンガ」について制作秘話を永田さんにインタビュー、「医総会」の魅力についてたっぷり語ってもらった。そもそもイソウカイって何なのか。その正体に迫る。

同人誌売ってたら謎の客が来た件 1/2永田礼路(@nagatarj)


すべてのはじまりは2022年11月27日開催のコミティア142から。コミティアというのは、同人誌即売会のこと。よく耳にする「コミケ」と異なるのは、コミティアでは一次創作、つまり作者のオリジナル作品のみを取り扱う点だ。永田礼路さんはプロの漫画家として、以前より自身の作品をコミティアでも販売している。この日も永田さんは、新刊「(クレイジーカニ漫画)ピンノ太郎の鬼退治」や、現在連載中の大作「螺旋じかけの海」などの既刊を携え参加していた。

そこに、とある「お客様」が現れる。同人マナー完璧なその紳士にすいっと差し出された名刺を見ると、なんと!医学会のガチ目の偉い人。だった。漫画家であると同時に実は医師でもある永田さんの背筋が伸びる。「お願いが……」その偉い先生は永田先生をじっと見つめると、一言。「学会の広報にご協力を」
「は?」

同人誌売ってたら謎の客が来た件 2/2永田礼路(@nagatarj)


医総会とは日本医学会総会のこと。医学と医療の国内最大のイベントだ

医総会の正式名称は日本医学会総会。全国の医師が集まって勉強会をする『学術集会』と、一般向けに最新の情報を紹介する『博覧会』が併催される医学と医療の国内最大のイベントのこと。

前述の通り、永田さんは漫画家であり医師でもある。お医者さんなのでもちろん学会に所属している。ところがしかし、お医者さんの学会というのは専門ごとに、例えば日本眼科学会、日本小児科学会といったように分科会という名でそれぞれ存在し、その数は142にものぼる。つまり、学会というのはたくさんあるのだ。基本的に、医師は自身の専門に関連する学会に加入し、自分が所属している学会以外のことはあまりよく知らないのだそう。

日本医学会というのは、医学全体を対象とした医学系で最も大きい学会のこと。つまり、医学系学会のいわばラスボス、といったところだろうか。
その日本医学会が、4年に1度開催している総会が2023年、つまり今年行われる。医師向けの専門的な学術集会だけでなく、一般の方が参加できるイベントもいろいろと企画されている、まさに医者万博。

なんと142もあるお医者さんの学会。日本医学会はそのトップにあたる永田礼路(@nagatarj)

一般向けの博覧会は、2023年4月15日(土)から23日(日)まで丸の内、有楽町エリアで開催されるリアル博覧会と、2022年11月1日からオープンしているオンライン博覧会の2本立てによるビッグイベント。医師が集まる学術集会は、4月21日(金)から23日(日)まで東京国際フォーラムで開催。第31回日本医学会総会が正式名称。
それがまさに「イソウカイ」の正体なのだ。

いじって、いじって、いじり倒す!ディスり広報爆誕

そんなわけで、コミティアにて偉い人にスカウトされ、第31回日本医学会総会 博覧会の広報漫画を執筆することとなった永田礼路さん。まずは医総会のホームページをチェックしてみた。しかし、初手でいきなり大きな壁にぶち当たる。なんと、コンテンツが多い上に、マニアックすぎて一般向けにはなかなか宣伝が……難しかったのだ!

マニア度高すぎるコンテンツをどう一般の方に宣伝しよう、永田さんは不安を抱えたまま医総会の先生方とのオンライン会議の日を迎える。いざ、会議本番。と、そこにいたのはTwitter界の有名人「ツイ廃の先生」だった。ヤンデル先生ご登場。驚きを隠さない永田さんに、先生は奥の手を解放した。「いじるのもディスるのも、アリで」「まじで?」
かくてディスり広報は爆誕することとなる。

えらい人いじり倒し権をゲットした永田さんはまるで水を得た魚。本領を発揮し、心置きなくいじって宣伝!そうして誕生した「医総会マンガ」は永田さんの華麗ないじりスキルにより、多くの人の興味を引いた。「医総会」と聞いてもなんだか難しそうなイメージしかなかったが、漫画を読むとだんだんおもしろくなってくる。永田さんのいじりスキルがまた素晴らしい。とっても偉い先生方がかわいらしく見えてきてしまうのが不思議で、しかも漫画で紹介されているコンテンツを実際に見てみたくなるのだ。ついついオンライン博覧会のURLをクリックして、プラ●製脳みそを探してしまったりして。

「偉いお医者さん」のトークを覗いてみよう!の件 1/3永田礼路(@nagatarj)

プ●ダ製クリスタル脳みそをご紹介くださった順天堂大学医学部長、脳神経内科教授の服部先生の回「見て・触れて・バーチャルで知るー医学のあゆみ」

三枚噺(さんまいばなし)はオンライン博覧会のコーナー提供:第31回日本医学会総会2023東京博覧会



医総会ってそもそもどんなイベントなの?

第31回日本医学会総会 博覧会は東京駅周辺の丸の内、有楽町エリアで開催されるリアルイベントと、インターネットで日本全国どこからでも閲覧できるオンラインイベントがある。

第31回日本医学会総会2023東京 博覧会ホームページ提供:第31回日本医学会総会2023東京博覧会


まずは医総会について、永田さんに聞いてみた。

――第31回日本医学会総会、略して「医総会」。お医者さんだけでなく一般の方向けにも展開されていますが、一言で言うとどんなイベントなのでしょうか。

医総会マンガの中でも喩えましたが、「医者万博」な感じです。お医者さん向けの勉強会の他に、一般の人向けに医療に触れてもらったり、健康意識を高めてもらうための機会を作るため、医学系各分野が総出で出し物をするイベントです。今回からは並行してオンライン博覧会も開催されています。

――この漫画を読んで「医総会」に興味を持った一般の読者は、どんなふうに楽しむことができるイベントなのでしょうか。

2023年4月15日(土)から23日(日)の会期中は、博覧会という形で東京駅エリア一帯でたくさん催し物がありますので、ぜひ現地を訪れていただきたいです。丸の内仲通り中心に街ぐるみでお祭り感もあり、出店やストリート出し物もあります。丸ビル・マルキューブや東京国際フォーラムなどの会場では、他では体験できない医療系イベントやステージがたくさんありますので、面白く役立ちそうなものがきっと見つかると思います。子供向けのイベントも多いです!

現地に行くのが難しい遠方の方にはオンライン博覧会があります。現地の雰囲気を感じていただいたり、オンライン特設の医療系コンテンツを堪能していただいて、たくさんの方に楽しんでいただければと思います。

「お礼に2月のコミティアで売り子を」爆買神の先生からのありがたいお申し出も……丁重にお断りいたしました!永田礼路さんインタビュー

――「医総会マンガ」を描いたり、取材される中での裏話、おもしろいエピソードなどがあれば教えてください。

医総会マンガは本当にそのまま描いているので、大体漫画の通りなのですが……(笑)。
面白いエピソードとして1つお話しするなら、爆買神の先生(11月のコミティアで声をかけていただいた先生)から「お礼に2月のコミティアで売り子をしましょうか」と打診いただいたことでしょうか……。
さすがに畏れ多すぎるので丁重にお断りいたしました(笑)。休日は休んでてください!
※売り子とは、同人誌即売会で販売のお手伝いをする人のこと。作家の友人や知人にお願いするケースが多い。

――「医総会マンガ」を描かれる上で一番苦労するのはどんなところでしょうか。

方向性がわからないまま、かつ前例のないまま手探りで毎回描いているとこですかね……。学会イベントを一般向けに漫画で広報するというのは多分例がないと思うので、どういう雰囲気や流れにしたらいいのか毎回考えながら描いています。情報量が多くなってしまうので、なるべく文字が多いなりに読みやすくするよう工夫しています。あとは個人的な好みとしてですが、せっかく読んでもらうなら、なるべく漫画として面白く読めるものになるように心掛けています。苦労したおかげか、毎回たくさんの方に見ていただけるようになりました。多少お役に立てているようでよかったです(笑)。

――ぜひ、永田先生にも三枚噺をお願いします!

三枚噺のお題はこちら。
 1 偏愛するもの
 2 医学の歴史で美しいと思うもの
 3 博覧会の一押し

医総会マンガでも紹介していた三枚噺コーナー。お題はこの3つ。永田礼路(@nagatarj)

自分に来ると思いませんでしたがお答えします(笑)。

1 偏愛するもの
iPadです!大きいサイズのiPadを家でも出先でもいつも持ち歩いていて、これで漫画を描いています。タブレット1つでどこでも描けるのは本当に便利です。デジタルで漫画が描けなかったら多分描いていないと思います……。

2 医学の歴史で美しいと思うもの
医学の歴史というと少し違うかと思いますが、漫画描きの端くれとして趣味で出させていただくなら「ブラックジャック」です。説明不用の医師免許を持つ漫画の神様の名作ですね。当時はお医者さんからデタラメを描くな、などとクレームもきたようですが、この漫画を読んで医学の進路を志した人も多いのではないでしょうか。私も中学校の先生に全巻借りて読んだ(なぜか期末テスト前に紙袋で全巻渡された……)この漫画が、きっかけの1つとして間違いなくあると思います。フィクションである絵物語が実在の人間の人生に多く影響を与えるという点が、美しくもあり怖くもあるなと思います。不朽の名作です。

3 博覧会の一押し
オンライン博覧会のバーチャル医学史展示をお勧めしておきます。広報漫画でも2回に分けてご紹介しましたが、なかなか見に行けない順天堂の医学教育資料館の内容がそのまま見られますので、幕末明治頃の歴史や昔の医術に興味のある方はぜひ覗いてみてください。解体新書や江戸の解剖記録も見られます。永田のように歴史が苦手な方は、医総会マンガの9回目を読んでいただいてから見ていただくと、より面白く見られると思いますのでぜひ参考にしてください。

――続きを楽しみに待っている読者のみなさんに何かメッセージがあればお願いいたします。

4年に1回という医学系の大型イベントなので、現地やオンラインで是非医総会博覧会のコンテンツに触れていただきたいです。漫画の通り、公式サイトが見づらかったり、いろいろわかりづらい点もあるかもしれませんが、いいコンテンツがたくさんありますので、見どころを頑張ってお伝えしていきたいと思います。広報漫画は会期前まで続く予定ですので、お楽しみに!

普段は「螺旋じかけの海」という生物系SFを描いています。商業誌で出していた漫画の続きを個人で制作しているものです。9月に出す5巻で話が一区切りになる予定です。生物学や生命倫理系の話を扱ったりもしているので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです!他にも短編集やラブコメなども出しています。こちらもどうぞよろしく!


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