「辛かったけど楽しかった」愛猫の闘病と別れの日々を描いた漫画が出来上がった理由は【作者に聞いた】

闘病日記だけど「ハッピーエンドにしたい」という強い思い

会社勤めをしながら漫画執筆に励んでいたねこゆうこさん。創作活動は大体夜中の静かな時間帯だったそうで「ちゃーにゃんの気配を感じられるような気がした」とのこと。本作で描かれているのは、ちゃーにゃんが亡くなったあと、いわゆる“ペットロス”の状態に陥ってしまったこと、そこから新しい猫を迎えるまでだ。執筆当時から、全体像は考えていたのだろうか?

「世界一幸せな飼い主にしてくれた猫」104(C)ねこゆうこ/KADOKAWA

「世界一幸せな飼い主にしてくれた猫」105(C)ねこゆうこ/KADOKAWA

「おおまかな全体像はありました。最初に決めたのはハッピーエンドにしたいということです。死んだところをラストにはしないように、後になって読み返しても幸せな日々だったんだと思えるように描きたいと思いました。でもどう描けばそうなるか、最初はわかっていなくって、行き当たりばったりでしたね。描いてアップしてもやっぱり消してみたりとか。ブログでは2020年5月に完結していて、2022年2月に自費で同人誌にもしているのですが、同人誌にすることも最初は決めていませんでした。そのため、コマはバラバラでしたし解像度も低いままで、あとから直すのが大変でした。なので、まず文章でおおまかな出来事を箇条書きにして、買って便利だったものの写真を撮ったり、獣医さんに言われたことのメモを整理したり、漫画ではないところから考えていきました」

漫画執筆が軌道にのったのは、保護猫のカムイとコノハを新しい猫として迎え入れ、「心に余裕ができたことで、はっきりとハッピーエンドにできるラストが見えた」からだそう。

そして、本作執筆にあたってのこだわりを聞くと「なるべく、あったことをそのまま描こうと思いました」とのこと。

「もちろん漫画なので、読みやすいように固有名詞やセリフや細かいエピソードの省略など、多少は変えているのですが、そのときの自分の気持ちはなるべく正直に描いておこうと思って描いています」

ちゃーにゃんが亡くなってからは、それまで楽しめていたアニメや漫画へのポジティブな感情も「『でも、猫、死んじゃったのに』という気持ちでかき消されていくようだった」というねこゆうこさん。本作を描き上げたときになって「ようやくなにかに許されるような、不思議な気持ち」になったそう。

“家族の死”という大きな喪失。それを共に過ごせたことの喜びに変えていくためにも、ねこゆうこさんにとって漫画執筆が大きな役割を果たしたのだろう。そして、「ハッピーエンドにしたい」という思いがあったように、作品はただ悲しいだけではなく、ちゃーにゃんへの愛に満ちあふれている。それが犬や猫といった人ではない家族を持つ人からの共感を得た理由に違いない。

取材・文=西連寺くらら

  1. 1
  2. 2

この記事の画像一覧(全105枚)

Fandomplus特集

マンガ特集

マンガを読んで「推し」を見つけよう

ゲーム特集

eスポーツを「もっと知る」「体験する」

ホビー特集

「ホビー」のトレンドをチェック

注目情報