愛猫の闘病と別れ、その後を描いた漫画「世界一幸せな飼い主にしてくれた猫」。飼い主の覚悟と思いとは?【作者に聞いた】

「飼い主さんがその猫ちゃんのために考えたことが一番」

そもそも、ちゃーにゃんはどんな猫だったのだろうか。ねこゆうこさんにちゃーにゃんとの一番幸せに感じている思い出を聞いた。

「帰宅するとご飯の催促をされて、足元ウロウロして、歩きにくくなるのが好きでした。ソファにいるちゃーにゃんにマグロを見せると、目を見開いてにゃおーんにゃおーんと私の手までよじ登ってきそうな勢いでかけよってくるのが好きでした。ちゃーにゃんはソファの上でよくくつろいでいました。私はソファの下の絨毯の上に座って、顔の横にちゃーにゃんがいるのが好きでした。テレビを見ながら、時折ちゃーにゃんの後頭部に頭をうずめてふがふがすると、三角の耳で頬をぺしぺしされるのが好きでした。休日の夕暮れ、昼寝をしている旦那さんの足元で、同じような格好をして眠る2人を眺めるのが一番好きでした」

何気ない日々が、ちゃーにゃんによっていかに幸せに満ちたものになっていたのかがわかる答えだ。現在、ねこゆうこさん夫妻はカムイとコノハという保護猫を迎えて暮らしている。新しい猫を迎えることでちゃーにゃんへの気持ちに変化は起きたりしたのだろうか?

「カムイとコノハがウチに来てくれた当時は、ちゃーにゃんを思い出すことに悲しみが伴っていて、2匹をなでながら泣いてしまうことも多くありました。猫のご飯をあげながら、食べてくれることに泣いたり、食べられなかったことを思い出しては泣いたり、泣いてばかりでどうしようもなかったです。でも、カムイもコノハも最初はとても人見知りだったのですが、私が泣いてると、遠巻きに見ながらそろそろと近寄ってきてくれることがありました。ゆっくりゆっくりカムイもコノハも私も旦那さんも、新しい当たり前になじんでいきました。今はちゃーにゃんを思い出すことに、悲しみよりも懐かしさがあふれてきたと思います」

「世界一幸せな飼い主にしてくれた猫」56(C)ねこゆうこ/KADOKAWA

「世界一幸せな飼い主にしてくれた猫」57(C)ねこゆうこ/KADOKAWA

「忘れたくない」「同じ病気の猫ちゃんの助けになれたら」という思いで描き始めた漫画には、さまざまな反応が寄せられた。特に、ちゃーにゃんと同じように積極的な治療を選ばなかった人からの反応が印象的だったそう。

「手術でも、治療でも、それ以外でも、飼い主さんがその猫ちゃんのために考えて考えて決めたことなら、なんであろうとその猫ちゃんにとって一番最良だと思います。それでも、ちゃーにゃんと同じように積極的な治療、つまり手術をしなかった飼い主さんのなかには、果たしてこれでよかったのか、とまったく考えない人はいないと思います。読者の方から手術をしなかったことを、改めてこれでよかったと思うことができた、とおっしゃってくださった方がいてそれが印象的でした。うれしかった反応はたくさんありますが、なかでも同じように看病している飼い主様に、ちゃーにゃんのお話が励ましになったと言ってもらえたことです。何度も繰り返し読んでくださったり、思いを共感してくださったり、私もたくさんのブログにあの看病の日々を励ましてもらえていたので、ちゃーにゃんのお話もその一つになれてよかった、描いてよかったと思いました」

最後に、別れの思い出をまだ辛く思っている人に「あなたのところで暮らせて、旅立てて、絶対にその子は幸せでしたよ」との言葉をもらった。

猫に限らず、どんな生き物ともいつかは別れることになる。どんなお別れの仕方を選ぶか覚悟を決めないといけないことも。ねこゆうこさんの作品は、そんな覚悟を決めた人たちと痛みを知っている人たちに寄り添ってくれるだろう。

取材・文=西連寺くらら

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