休職中、散歩をはじめて見つけた忘れられない景色。「暗い毎日だからこそ、見える光がある」と思うと心が軽くなった【作者に聞く】








水面に光が溶け込んだ夜の隅田川を眺めていると、「この暗い毎日だからこそ見える光があるのかもしれない」と思えました。隅田川を見たことは何度もありましたが、確かに、今まで見ていた隅田川とは違って見えました。
多分理由は二つあって、一つは単純に昼の隅田川を見る機会はたくさんあったけど、夜の隅田川を見る機会はあまりなかったということです。浅草の夜の光とライトアップされた橋の光が川に反射しているのを見ると、脳がぐらぐらするような感じになって、とても色っぽくて感動しました。
もう一つはメンタル的な話になります。うつで休職してしまい、「自分は何もない人間だ」と毎日どん底な気分だったのですが、そういう絶望している時に見る景色って、異常なほど美しいんです。もしかすると、大病を患った方が「桜ってこんなに綺麗だったんだ」と感動した話と、少し似ているのかもしれません。あの時見た夜の隅田川が今でも忘れられないし、自分の心の支えになっているので、絶望にも意味があったんだと思います。
「朝散歩」は、朝起きてから1時間以内に30分ほど歩くと、セロトニンが活性化されうつにいいと聞いたので実践していました。できれば午前中にちゃんと起きて散歩するのが理想的ではありますが、自分は朝がそこまで得意ではなかったし、「続ける」ことに意義を感じていたので、お昼に起きた時は午後に散歩したり、漫画に描いたように夜に散歩したりすることもたくさんありました。でも、毎日続けていると、不規則な生活が改善されるし、続けることで自己肯定感も上がるしで、少しずつ体調もよくなっていったように思います。
げっそりやつれていた前回のうさぎと比べて、今回は少しずつ元気に、そして前向きになっているように、振り返ってみると、このころから徐々に、うつは回復に向かっていたのだろうと思います。朝散歩を続けたことと、季節が変わり暖かくなって、一番ひどかった冬季うつが改善されたことで、身体も回復していったように思います。
暗い気持ちで寝てばかりの日々から、「この日々も大切にしよう」と前向きな気持ちが芽生えたなおにゃんさん。彼女のこれからを見守りたい。
取材・文=石川知京