SNSでも反響があった人事部長からの“ありがたい言葉”とは?「このまま遠くに行きたい」と思うきっかけに【作者に聞く】







うつに効果があるとされる朝散歩を毎日のように続けるなか、元気があるときはちょっぴり遠出もできるようになりました。知らない街で知らない家々を眺めていると、不思議とホッとしました。
知らないところで人それぞれの生活があるけれど、他人にはそれを認識できないわけで。辛い状況にある時は、つい自分を悲劇のヒロインにしてしまいがちですが、私の辛さなんて本来誰にも気づかれないものだし、海の中の一滴に過ぎないというか、なんだかどうでもいいもののように思えて、少しだけ気が楽になりました。
心が徐々に軽くなりだしたある日、うつで休職する際に人事部長から言われた言葉を思い出しました。「休職中は旅行とか行ったらどうかな?気晴らしになると思うよ」という一言に、「うつで休職するなんて、会社のお荷物でしかない」と感じていたわたしは、とても驚いたと同時に感動しました。
このエピソードを以前SNSで発信した際はフォロワーからたくさんのコメントが寄せられ、ネット記事にもなりました。
最初はこんなことを書くと、怒られるんじゃないかと思ってました。でも、意外にもすごく好評で、『こんな人事部長がいたらよかったのに』と言って下さる方が多かったです。会社の人間関係が原因でうつになってしまった方から、特に反響が大きかったように思います。
そして、人事部長のありがたい言葉を思い出すと同時に、「このまま遠くに行きたい」「逃げまくった先には何があるんだろう。それを知りたい」という、強い衝動に駆られました。まずは日本から逃げてみようと準備を始めました。
基本的に私は、ふにゃふにゃしていてだらしがないので、その分できることはきちんとやろうと思っています。実はこの漫画も9年前に『いつか絶対このことを描こう』と、会社のトイレの中で決めたものです。9年間思い続ける執念深さみたいなものは、あるかもしれませんね(笑)。
仕事から逃げ、会社から逃げ、ついには日本から逃げることを決意したなおにゃんさん。時には逃げることで人生が変わることを教えてくれる漫画「うつ逃げ」の今後に、期待してほしい。
取材・文=石川知京