美容院を飛び出してヘアカット!近年ますます注目集まる訪問美容とは?「『生涯綺麗』を叶えたい」【現役美容師にインタビュー】
身なりを整えると自然と心が明るくなる。いつか自分が利用するときのために、訪問美容を知ってほしい
――最近では、高齢者や病気の方、障害のあるお子さん以外にも利用を検討される方が増えているそうですね。
家族の介護や看病で外に出にくい方や、健康だけどケガをしてしまったという方も、法律で利用が可能になりました。あとは、つわりの時期の妊婦さん。目が離せないお子さんを持つ育児中のお母さんなどは、一度の訪問で親子いっぺんに切らせてもらうこともあります。山間部にお住まいで近隣に美容院がないという方も、対応が可能な場合があります。


――そういったさまざまなケースで利用できることをまだ知らない人は多いのではないでしょうか?どんな方も、いろんなライフステージの中で一度はお世話になる機会がありそうです。
そうなんです。脚にギブスをしていて動けなくて、その期間だけ……というのも可能ですし、本当に、ライフステージのいろんな状況に対応できるのが訪問美容なのかなと。赤ちゃんのいるママはカラーリングの置き時間を授乳タイムに充てることができるし、抱っこしたままでシャンプーも可能。「美容院では断られて…」というご相談もよく受けます。
――とはいえ自宅に十分なスペースがないと言って、利用を躊躇する人もいるのではと思います。その点はいかがですか?
2畳ほどのスペースがあればどこでも大丈夫です。お部屋以外に、玄関、脱衣所、廊下、キッチンの前など、指定される場所は本当にさまざま。家に他人を入れることに抵抗があるならカーポートでもOKです。雨の日もいけますし、意外と指定されますね。あとは“いらっしゃるなら掃除しなきゃ”って思われる方も多いと思うんですけど、私たち訪問美容師はこういうサービスを利用される方々の状況を理解したうえで行くので。気を遣わずにまずはご連絡をいただければうれしいです。皆さん、家が美容院になるなんて思ってもみないと思うんです。でも今は、寝たきりの方でも施術可能な訪問美容師さんが全国的に増えていますし、“美容院が来る”という新しい体験をしてもらえたらと思います。


――今は介護している親のために。そしていずれは自分も……と考える世代の利用も今後増えそうです。
実際、すでに多いです。自分が親の年代になったときにこういうサービスがあるんだという発見をしていただきたいですね。医療や介護と違って生きるうえで絶対に必要なものではないかもしれないけれど、身なりや衛生を保つことってメンタルにすごく影響があると思うんです。自然と気持ちが明るくなったり、外に出ようというきっかけになったり。あるおばあちゃんは、私が訪問する日に「今から来てくれるから綺麗にしなきゃ」ってパウダーや口紅を塗ったりするらしいんです。別のご年配の男性は、「今から切るんだから」とご家族にツッコまれながらもクシで髪を整えて待ってくれていたり。「人が来る」というよい意味の緊張感や「綺麗になる」という楽しみを、これからも多くの方に提供していけたらいいなと思います。


気持ちの切り替えになったり、新しい自分に出会えたり、人生を豊かにしてくれるヘアカット。その施術を自宅で受けられる訪問美容は、医療や介護と異なり生きるうえで必須のものではなくとも、生活するうえでは欠かせない大切なサービスだ。美容院に行きたくても行けない人や、いざ自分がそうなった時は是非、この記事や訪問美容師の情報発信を参考にしてみてほしい。
取材・文=川倉由起子