「逝くんじゃない」太平洋戦争の直前に芽吹いた恋。小さな恋の物語は現代まで命を紡いで…!【作者に聞く】
太平洋戦争の開戦直前、女学生の松乃と、海軍の戦闘機パイロットの虎次は出会う。お互い惹かれながらも、時は戦時中の大変な時期。手紙のやりとりにも検閲が入ってままならぬ中、少しずつ距離を縮め、想いを通わせていく。これは戦争の悲しい話ではなく、そんな時代にもしっかりと芽吹いた小さな恋の物語である。

本作「切なに刹那く」を描いたのは、普段は会社員として勤める傍ら、兼業漫画化として「コミックDAYS」で「波うららかに、めおと日和」を連載している西香はち(@24hachi1)さん。同人活動やpixivでは、24号というペンネームで活動をしている。ピュアな男女がモタモタしている感じを描くのが好きで、そこに軍服や自衛隊の制服という要素が加わるとさらに筆が乗るという。本作は「戦時中の物語は重たかったり悲しかったりするので読めない」という話を耳にし、そういう人たちがなるべく読みやすく、この時代の物語を届けられるよう、工夫をして描いたものだという。

ある日、主人公・松乃の家に、父を訪ねて軍人の虎次が訪問する。松乃と目も合わせず、言葉数も少ない虎次に対し、松乃は苦手意識を持つ。しかし、それは虎次なりの松乃に対する配慮だった。彼の額には大きな傷があり、若い娘には気味が悪いだろうと見せないように距離をとっていたのだった。「自分のためだった」と知り、一気に好感度が増す松乃。

帰り際、松乃は虎次に向かって、傷を隠さないでください、と告げる。「戦って生き残った証なんですから」と。その言葉を聞き、松乃に向かって笑顔を見せる虎次だった。帰りの駅までの道すがら虎次が「先生」と松乃の父に呼びかけると開口一番に「娘はやらんぞ」と言われてしまうのだが、2人の間に小さな小さな温かいものが芽吹いた瞬間だった。日本軍が真珠湾を攻撃したのは、それから数カ月後のことだった――。

少しずつ少しずつ心に芽吹いた気持ちを大切に育てていく2人。でも、戦争は容赦なく2人を引き離していく。遠い空の下で松乃が見上げる空が青くあり続けるためなら、自分は死んでもいいと思う虎次。一方、松乃も虎次が無事に帰ってくるのなら一刻も早く戦争に負けてしまいたいと、決して口には出せない願いを心に抱いていた。どうすることもできない戦争という渦のなか、2人の小さな恋の行方はどうなってしまうのか…?ピュアすぎる展開に心洗われる本作について、作者である西香はち(@24hachi1)さんに話を伺ってみた。