「逝くんじゃない」太平洋戦争の直前に芽吹いた恋。小さな恋の物語は現代まで命を紡いで…!【作者に聞く】
――今回紹介した本編以外にもシリーズを描かれているんですよね。
はい。最初に描いたのは、海軍パイロットの虎次と松乃だったんですが、虎次の同期の子の話とか、それとは別に陸軍さんの話もあります。戦時中の恋の話ということで、全部ひっくるめて「切なに刹那く」のシリーズものと位置づけています。
――本作品は今後ブラッシュアップする予定と聞きましたが…?
そうなんです。描いた当時は、海軍のことも当時の生活風景についても、まともに調べずに描いてしまったので、軍服や階級のことはもちろん、舞台背景もきちんと調べた上で描き直したいと思っています。あと、絵も大分変わってしまったので、今の絵に変えたいなと!

――本シリーズの新作の予定などについて教えてください。
新作の予定は立っていないのですが、シベリア抑留された方との恋愛話を描きたいなぁとはぼんやりと思っています。
――現在は「コミックDAYS」にて「波うららかに、めおと日和」を連載中ですね。
はい。「波うららかに、めおと日和」は、戦前の昭和11年が舞台です。帝国海軍士官の瀧昌と、その彼に顔も知らぬまま嫁いだなつ美の物語を描いています。お互い不慣れで、でも気持ちを通わせようと奮闘する様子や、海軍という仕事柄、離れ離れになる切なさ、そして戦前の徐々にヒリついていく空気を感じつつも、どこかのんびりとした当時の雰囲気を味わってもらえればと思っています。今後もみなさまに、“瀧昌となつ美を見守りたい”と思ってもらえるような展開にしたいと思っておりますので、よかったら読んでみてくださいね。

戦時中には多くの命がなくなり、流さなくてもよい涙が流れ、たくさんの悲しい物語が生まれた。しかし、戦時中であっても小さな恋の物語や、家族の絆、友情…やさしく温かい物語も同じくらい生まれていたのではないだろうか。筆者も祖母から、戦時中の話や戦争で亡くなった身近な大切な人の話などを聞かされて育った。しかしそれらの悲しい話の中で、一粒のキラリと輝く恋の話がある。祖母の兄とその婚約者の純粋な恋の話は、今は亡き祖母が亡くなる直前まで誇らしげに何度も聞かせてくれた話で、今も心に残っている。戦後78年の今夏、「切なに刹那く」を読んで、当時を生きていた人たちに思いを馳せるのもいいかもしれない。
取材協力:西香はち(@24hachi1)