60歳独り身レズビアン。自分らしく生きる主人公を描く漫画に「いろんな人を肯定する作品」「誰も描けなかったジャンル」と反響【作者に聞く】
時代背景とともに人物像を丁寧に描く。海外からも多くの反響が
第1話は、幸が今までの人生を振り返っていくストーリー。LGBTQ+という言葉が浸透してきた現代とは違い、幸が生きてきたのは、レズビアン、そして女性という立場でも、固定観念が強く社会に根付いていた時代であった。AKIKOさんが作品を描くときに大切にしたことや、こだわりについて聞いた。
「ストーリー作りでこだわったのは、主人公である幸さんの生きてきた時代背景ですね。私より少し年上の設定なので、彼女が多感な時期を過ごした昭和後期から平成初期がどんな時代だったのか、当時の日本の女性観やレズビアンコミュニティの様子なども年表にして、人物像をふくらませていきました。作画でのこだわりは、幸さんの皮膚のたるみやシワの描写です。彼女が60年間がんばって生きてきた証なので、大切に愛しさを込めながら線を引きました」

作品を読んだ読者からは、「いろんな人を肯定する作品だと思いました」「誰も描いていない、描けなかったジャンル」などの声が寄せられている。また、読者は国内にとどまらず、作品は英語版でも出版されている。
「SNSで初めて作品の告知をしたときに、海外の方々からの反応が予想以上に多くて驚きました。『これは私のこと?』『未来の私だ…!』『英語版はないの?』など。それを見てすぐに英語版の準備にとりかかりました」

今後の展開については、「幸さんのその後を語りつつ、彼女を通していろいろなタイプの“ひとりみさん”が登場する予定です」と教えてくれた。最後に、AKIKOさんに今後の創作活動での展望を聞いた。
「しばらく商業媒体での活動はお休み予定です。この『ひとりみです』シリーズと、もうひとつ『バイなのに倍モテないッ』というこれまたニッチな個人出版シリーズに集中するつもりです。どちらもビジネスとしては需要が少なすぎるので書籍化等はないと思いますが(笑)。でもだからこそ、今はその少数の人たちに向けて作品を届けたい。そんな自分の心に従って、創作活動を続けていこうと思います」

漫画「ひとりみです」は、現在第2話が準備中だ。AKIKOさんの描く60歳、独り身、レズビアン、そして等身大のひとりの女性として生きる幸の物語。続きを心待ちにしたい。
取材・文=松原明子