苦しそうな父、救急車が来るまでにできることはある?焦る作者を夫が落ち着いてサポート/父が全裸で倒れてた。#3【作者に聞く】
焦りと不安を感じるキクチさんに安心を与えてくれた夫
119番に電話し、聞かれた通りに父の状態を伝えていく。救急隊員とのやり取りや携帯電話の着信拒否設定が解除されるなど、実際に体験した人にしかわからない情報が細かく描写されている。
「救急隊の方との電話の中で『いまでも便は出ているか、全身はどんな状態か』と問われました。私は緊急事態とは言え、ふとんをめくりあげて父の全裸の下半身を見る勇気がありませんでした。なのでわかりませんと答えました。母のときもそうでしたが、老いた親の下半身や性器を見るのは、私には結構メンタルのダメージがあるんです。確認すべきだったかなと思いつつ、いま考えてもやっぱり無理かもと思っています」






普段ならあっという間に感じられる時間も、救急車を待っている状況では長く感じられるものだろう。なんとか心を落ち着かせようとしながらも、平常心を保てないでいるキクチさんの様子がリアルだ。
「救急車を待っている間は父にずっと声をかけていました。『もうすぐ来るからね』と言って励ましながら『“もうすぐ”って言ってから10分も経っちゃったんだけど!?』と心の中で自分にツッコんでいました。焦りはありつつもどこか冷静で、夫に『玄関前にいて救急隊の人が来たら案内して』と指示していました。救急車が来てくれるという安心感で、少しずつ心が落ち着いたのかもしれません」
そんななか、どっしりと構えて要所要所で的確なサポートをしてくれた夫の存在は心強かったのではないだろうか。
「夫は父がすぐに戻ってくることを信じていて、だからこそ『掃除をする』という選択肢を取ってくれました。一方の私はそれどころじゃないし、この状況に絶望していて『すぐ戻る』なんて想像もつきませんでした。だからこそ、夫の示した行動のおかげで『そうだよね、きっとすぐ戻れるよね!』と少しポジティブになれました。普段はほわほわと不思議なオーラをまとった夫なのですが、毎回、ピンチのときの夫の行動力には頭が上がりません」
タイトルの通り全裸で倒れている父を発見することとなった、「父が全裸で倒れてた」。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。