アラサーなのに子ども用ではなく大人用オムツばかり買う自分…そんな経験も漫画にして伝えたい!/父が全裸で倒れてた。#5【作者に聞く】
父の即入院が決まり、寝食の暇なく対応に追われることに
血液検査に加えて皮膚科・眼科の診察も経た結果、非常に危険な状態であることが当直医の口から説明される。疲労困憊の体で、さらに「状態の悪さは“重”」「数字だけで見たらいつどうなってもおかしくない」といった容赦ない現実を突きつけられるのは、精神的にもキツかっただろう。
「正直『そんなにヤバイ状態で生活していたのか』とショックを受けました。倒れる直前に体調が急激に悪化したのかもしれませんが、とはいえ『やっぱりもっと早くに病院に連れて行くべきだった』『私がもっと早くに駆けつけてあげられたら』と後悔の気持ちが大きかったです。それと同時に、『亡くなった場合はどうしていこうか』と最悪の事態が起こったときの対応も考えていました。この時は悲しさを感じる余裕が無かった気がします」






入院が決まり、看護師さんに「オムツを買ってきてほしい」と頼まれたキクチさん。精神的に追い込まれた状況でも、オムツを買っている時にふと冷静になって虚しさを感じたり、助成金が出るかもしれないからとレシートを取っておく姿はある意味リアルだ。
「オムツを買いながら『またこの感じか…』と自分の人生に落胆していました。周りの同年代はこんなこと経験している人がいないのに、私はもう2回目。すごく虚しかったです。でも考えてみれば、親の介護は遅かれ早かれこれはみんな経験すること。私はそれが少し早いだけ。せっかく2年前に母の看取りで色々学んだんだから、それを活かして後悔しないように対応しよう、そしてその経験を伝えていこう!と考えることにしました」
父が倒れているのを発見してから約6時間、ご飯も食べられず寝ることもできず、さらに入院手続きのためにまた次の日のお昼には病院に来なければならない。ここから先、たった一人の家族として父を支えていくことにつて不安もよぎったのではないだろうか。
「母の介護と看取りで、無理をすると身体的にも精神的にも潰れることを経験しました。だからこそ、父に何かあったときは『絶対に無理をしない、頼れるサービスは使う』と決めていました。ですが、まさか『生きて帰って来れる場合』と『亡くなる場合』の2パターンを同時に考えるとは思いもしませんでした。そしてどちらの場合になっても、このさき私がやるべきことはたくさんあり、それを考えるだけでもが未来が真っ黒に塗りつぶされていく感覚がありました」
非常に危険な状態であることがわかり、ICUへの入院が決まって一旦帰宅するところまでが描かれた「父が全裸で倒れてた」。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。