再び容体が悪化しICUに戻ることになった父から思わぬ言葉を投げかけられ…/父が全裸で倒れてた。#13【作者に聞く】

本心ではないとわかっていても……突き刺さる父の言葉


一般病棟に戻ってからは1週間、気分の浮き沈みが激しかった父親。結局、容体が再度悪化してしまいICUへ戻ることとなるが、一度希望の光が見えたからこそICUへの逆戻りは精神的にもつらいものがあっただろう。

「父は『俺なんて生きてる価値ない』『こんな身体で…』とネガティブになる父に『なぁに言ってんのよ~!』と叱咤激励(?)すると、『なんでそんな強い口調で喋るんだよ!お母さんみたいになるな!!』とキッとした顔で言われることがありました。私の母はキッパリ言うタイプだったのですが、父はその口調が苦手でした。

『弱ってるのにキツいこと言っちゃったかな…』とちょっと反省して、このやりとりを医師に話したら『それ、せん妄ですよ~』と言われたんです。いや、こんな普通の会話がせん妄な訳ないじゃん!って医師の言葉を無視して、自分を責めてしまって…この時期はそれが辛かったです」

 作=キクチ

 作=キクチ

 作=キクチ

 作=キクチ

 作=キクチ

 作=キクチ

 作=キクチ


作者がICUに戻った父を見舞いにいくと、ベッドに拘束された状態で声を荒げているという緊迫した状況がリアルに描かれている。病院では身体拘束をされることがあると知識としてわかっていても、実際に父親が拘束されているのを目の当たりにした時の衝撃は計り知れない。

「入院時の同意書の中で、拘束具をつける可能性については口頭で丁寧に説明いただいたので、驚きはありませんでした。それよりも、拘束具をつけなくてはいけないくらい暴れる父の姿に対しての衝撃の方が大きかったです。

ベッドの柵に片足をかけて(足はフリーな状態だったので)這い出ようとしていたり、拘束された腕の紐をめいっぱい引っ張ったり、そんな筋肉どこにあったの!?というくらい全力で暴れていました。ベッドの上でガタガタと揺れながら大声で叫ばれて、まさに別人という印象でした」

さらに、身体拘束以上にショッキングなことが続く。せん妄の影響か、父親から「死にかけたのはお前のせいだ」「お前だれ?」という言葉をかけられてしまうのだ。意識が混濁しているせいだとわかっていても、言葉の刃が作者に突き刺さる。

「頭の中でせん妄だとわかっているのに、看護師さんに改めてせん妄かどうか確認したのは『せん妄だから気にしなくて良い』という確信が欲しかったからです。でも、たとえば飲酒をして意識が朦朧とすると、その人の本心が表れたりするじゃないですか。せん妄もそれと同じで、実は父の心の奥底ではそういうことを思っているんじゃないかって深刻に捉えてしまいました。

温厚で優しい娘思いの父が、そんなこと思うはずないとわかっていても、発された言葉を一度はそのまま受け止めてしまいます。受け止めずに流す技術が、この時の私にはまだ備わっていませんでした」

快復の兆しが見えたかと思った前回から急転直下、かなりヘビーな展開を迎えた今回のエピソード。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。

  1. 1
  2. 2

この記事の画像一覧(全158枚)

Fandomplus特集

マンガ特集

マンガを読んで「推し」を見つけよう

ゲーム特集

eスポーツを「もっと知る」「体験する」

ホビー特集

「ホビー」のトレンドをチェック

注目情報