父の病は悪性腫瘍か白血病!?原因究明のためには手術が必要だが、全身麻酔をすると自発呼吸が戻らないリスクも…/父が全裸で倒れてた。【作者に聞く】
全身麻酔にはリスクがあるものの手術をしないと病気の原因がわからないというジレンマ
ICUに戻り、また延命措置についての意思確認。そして主治医から呼び出されたキクチさんは、父親の全身状態が悪すぎて原因追究ができないことや、現状でわかることから悪性腫瘍か白血病の可能性が高いと告げられる。
「あんなに頭を悩ませて、ストレスを感じながら検討した“延命措置”も、父のせん妄による暴言のせいで『悩んだことが馬鹿みたい』と思ってしまいました。そしてそんな中で未だに病の原因は不明。正直、良い方向に進んではいないし状況はずっと停滞していて、なのに自分の心身だけが容赦無く削られ、消耗することに疲れ切っていました」






CTの結果、左脚のそけい部のリンパに腫れがあるとわかった。父親に自覚症状があった可能性も高いが、本人からそんなことを聞いた覚えもない。脳腫瘍が手遅れの状態で見つかって母を看取った経験がある作者からしたら、「早く言ってくれていたら」と思う気持ちもあっただろう。とはいえ、リンパを切り取って検体に出せば原因がわかるかもしれないという新たな希望の光も見えた。
「そけい部にある腫瘍がゴルフボール大と聞いて、疑問が浮かびました。それは『なぜ父は病院へ行かなかったんだ?』ということ。腫瘍自体に痛みがないことで、大丈夫だろうと過信したのかもしれませんがさすがに病院に行く大きさだと思いました。
また、ここに至るまで巨大腫瘍をスルーしていた病院側にも『?』が浮かびました。もしかしたら、考えられる要因を順々に潰していった結果、このタイミングになってしまったということなのかもしれません。とはいえ母の脳腫瘍発覚も、病院で定期的にがんの経過観察をしていたのに、脳だけは検査をせず手遅れになったという過去があります。やはり自発的に検査を要望しなくては、自分自身を病から守ることができないと強く感じました」
延命措置の意思確認に続き、全身麻酔の同意書を求められた作者。全身麻酔をして検体を取り出さないことには原因がわからないため、もはや同意する以外の選択肢はない状況にも思えるが、せめて「1人で決められるから意見が割れなくて良い」とポジティブに捉える姿が描かれている。
「『もう延命措置なんてどうでもいい』と思ったのに、いざ命の選択を迫られると深刻に考えてしまいました。今思えば、“どうでもいい”というのは『私以外の誰かが決めてくれ』という心の叫びが変換されたのかもしれません。あんな暴言を吐かれたんだから、私が決めなくても良いよね? 誰か決めてよ、もう一人で考えるのは疲れた……。でも現実に戻れば、やっぱり私しか決められる人はいない。母が生きていたら、この痛みを分け合うことができたのかもしれませんね」
たった一人の残された家族として、また命にかかわる重要な選択を迫られることとなった今回のエピソード。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。