父にリンパ腫の可能性が浮上したものの抗がん剤投与も危険な状態……今後の治療方針は?【作者に聞く】
治療しなくても悪化、治療しても効くかわからない……もはや選択肢がない父の状況
父のせん妄との向き合い方として、少しの間面会を休み距離を取ることを選んだキクチさん。たった一人の家族ということもあり、しばらく会いに行かないことにも罪悪感があったかもしれないが、まだせん妄の症状が見られる父と落ち着いて会話している様子を見ると、正しい選択だったようにも思える。
「私の性格に『完璧主義・無駄に強い責任感を持つ』という傾向があり、父のお見舞いも『私が毎日お見舞いに行ってお父さんを元気づけなきゃ…!』と思っていました。ですがよくよく考えたら、せん妄状態(つまり認知機能が低下している状態)で会いに行ったところで娘が来てくれて嬉しいとか、そういう感情も感じていないのでは…?と気づきました。であれば、自分を犠牲にしてまで毎日会う必要はなく、無理のない範囲で面会することがお互いにも良いのだろうと判断しました。
後の話で、私がいない日にひどいせん妄で、看護師さんに手をあげてしまったとか…(即座に防御されたとのこと)。申し訳ない気持ちでいっぱいですが、もし私が父から暴力をされていたら、本当に心が折れていたと思います」





父の状態は、これまでに肝臓・腎臓・胃など広範囲に渡ってよくない状態であることが示唆されてきたが、ここに来て新たな担当医師からリンパ腫=血液のガンである可能性が出てきたことを説明される。
「この先生は、まず格好からデニム+白衣ということで勝手に『天才キャラ』という第一印象を持っていました(笑)。よくフィクションの漫画でも、気の抜けた格好なのに実は本気出すと強い、みたいなことがあるじゃないですか。そのような印象です。しかも、今回の漫画では真面目なシーンなので淡々とした語り口調で描いていますが、実際は『がんっぽいんだよね〜。でもちょっとまだ検査してみないとわからなくて〜。』とフランクな話し方なのです。
医療をわからない家族に目線を合わせて、わかりやすく、時には図解を用いながら説明してくれて『この先生はすごく信頼できそう!』と直感で思ったのを覚えています」
今の父は免疫が暴れていて容体が悪化し続けていると同時に、リンパ腫であることに懸けて抗がん剤を投与するのも危険という、あまりにも希望がない状況。抗がん剤を少量投与してみて様子を見るが、それでも悪化したら人工呼吸器を外せなくなる……そんな説明を受けても、もはや動揺を見せない作者の姿が印象的だ。
「正直、『がんの可能性がある』と言われたときは、『母に続いてお父さんもか~…でもがんなら治療の余地がある』と前向きでした。その後、治療をするにしてもリスクがあることを説明されたときは危機的状況だと感じましたが、母の看取りを経験したことで、どれだけ医療にしがみついたって人はいつか死ぬもので、治療してダメだったとしてもそれは仕方のないことだと考えました。
これは命を諦めているという考えではなく、“生死”とは尊いものであり、あがくのではなく受け入れていこうという価値観を持つようになったからです」
原因不明だった父の病気を究明できそうなところまできた今回のエピソード。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。