僕たちだけ歳をとっていく…。結婚の意志がない恋人は、自分との将来を必要としていない?【著者に聞く】



――はる君から結婚情報誌を渡されて、驚くゆり。「やっぱりまだ結婚とか考えてないよね?」という言葉に、はる君と話し合わねば…と強く思います。こういった、2人の価値観のすり合わせは非常に勇気が要ることかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
なかきはらさん:めちゃくちゃ勇気いりますよね!たぶん、そう言われてゆりは「結婚したくないって言ったじゃん!」っていうイラッとした気持ちと、「やっぱり、はる君結婚したかったんだ…」という相反する気持ちで、どうしたらいいのかわからなくなります。それがトリガーになって、自分の「結婚したくない気持ちの根本」と向き合うことになっていきます。
――ゆりと結婚観について話し、やはり結婚はしたくないと思っているんだ、と実感したはる君。「一緒にいたいけど、このままでいたいってことは将来とか老後とか考えていないのかな」とぐるぐると考えてしまいます。「周りはみんな家庭を持って、僕たちだけ変わらず歳をとっていくってこと…?」というセリフは、結構重いものがあるなと感じたのですが、その点はいかがでしょうか?
なかきはらさん:30歳過ぎると急に現実的に考え出す人が出てくる気がします。男の人の方が多いというか、女性の方がその辺は早いのかもしれません。それまで、「結婚?なにそれ、おいしいの?」状態だったのに、周りが結婚しはじめて未来のことを考え始める。はる君はゆりちゃんに拒絶されて、不安が噴出したんでしょうね。でもゆりちゃんは家庭の問題もあって、ずっと結婚について考えていた。だからチグハグしちゃうんでしょうね。
――はる君は、この時点では、やはり人生の過程には、結婚というライフイベントがあって、その先があるというイメージなのでしょうか。
なかきはらさん:そうですね。はる君は、「人生というバスに乗るには、結婚というチケットが必要だ」と思っていた人。でも、ゆりは、「人生はバスじゃなくていい。歩いて行ってもいいじゃん」って言うタイプ。どちらが正しいというよりは、「バスに乗る人」「歩く人」が出会っちゃった物語なんだと思います。そこから一緒に旅を続けられるか、どこまでなら歩調を合わせられるか、それを探していくラストになりました。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
なかきはらさん:この漫画は、「結婚=ハッピーエンド」が常識みたいになってる社会で、「いや、ちょっと待ってくれ」と思った人の物語です。
好きな人と、同じ未来を望めないこと。ひとりで生きる不安と、ふたりで生きる不自由。その狭間で揺れる気持ちは、決して“わがまま”じゃない。
「ちゃんと迷って、ちゃんと悩んで、それでも進む」そんな人を、少しでも肯定できたらうれしいです。
両親の不仲が原因で結婚願望の無いゆりと、結婚をあたりまえにあるものと考えているはる君。結婚に対しての温度感が違う2人は、この先どうなっていくのだろうか。目が離せない。
取材協力:なかきはらあきこ(@nakakihara_hibi)
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