リンパ腫の父にやっと抗がん剤投与を始められたものの、効いていない!?残り2つの作戦に希望を託す【作者に聞く】
“3本の矢”が用意された父の治療方針のうち1本目が折れてしまい…
入院中の父から「あまり無理しないでちゃんと休むんだよ」と言われ、思わず「いや こっちのセリフ(笑)」というツッコミが出たキクチさん。綺麗ごとばかりではない親の介護も、ただ肉親だからという理由ではなく“この人のために何かをしたい”という純粋な気持ちがあるから頑張れるという気づきは、介護をする側の心の支えになるかもしれない。
「よく『親は、子供が元気でいること、幸せでいることを何よりも願っている』なんてことを聞きますが、私の両親は昔からそれを体現していました。私が電車通学中に体調不良になったとき、わざわざ駅まで迎えに来て薬を買ってきてくれたり…そして今、自分が病気でつらい状況でも私の身体を第一に考えてくれています。
『親だから』というのを抜きにしても、この状況でも私のことを心配してくれるのは、一人の人間として本当に尊敬しています。正直、私は未熟者でどうしても自分のことを優先してしまいます。それでも、この両親の元に育った私は、“大切な人の助けになる”という姿勢を大事にしていきたいと思っています」
それにしても、70代にして病床で「プロジェクター時計」を欲しがる作者の父は、まさに“ガジェット好きネットサーファーマキシマリスト”の表現がぴったりだ。そして最初は乗り気でなかったものの、結局は父のために色々と調べて「せっかくだからデザインかっこいいやつ」とプロジェクター時計を選ぶ作者の姿にも、クスリと笑える。病状だけ見ればまだ予断を許さない状況だが、ほっこりするやり取りが描かれた。
「父は昔からガジェット関連が大好きで、『別に必要ないけど、あるとちょっと便利になるグッズ』をすぐに買ってしまう節があります。例えば、冬用に電気で温まるムートンブーツとか、ベッドで寝たまま見られるスマホスタンドとか。そのたびに『また買ったの?!』とよく注意していますが、同時に『そんなものが世の中にあるのか』と父の着眼点と検索力に感心してしまいます。
プロジェクター時計も、探してみるとたくさん商品があり、『元工業デザイナーの父に贈るものだし、どうせならかっこいいものを渡したいな』と、結局私もネットサーフィンに夢中になってしまいました(笑)」






そんな中、医師からは「抗がん剤が効いていない」という衝撃の言葉が。しかし幸いにもまだ転移している様子などは見られず、治療方針としてもあと2パターンあるようだ。次の治療がうまくいかなかった場合またICUに戻る可能性もあることを示唆されるが、この時はどのような心境だったのだろうか。
「抗がん剤が効いていないと聞いて、うろたえました。でも主治医は『想定の範囲内』というような反応で、そんなに焦ることではないのかもと心を落ち着かせることができました。経験が豊富な主治医の頭の中には、薬が効かないことは珍しいことではなく、そのために複数の治療パターンを事前に用意しているのは当たり前…というところまで描いているように感じられました。必要以上に患者やその家族を不安にさせず、でも説明は丁寧にしてくださる淡々とした姿勢のおかげで、今回の経過を冷静に前向きにとらえることができました」
キクチ親子のほっこりするやり取りが描かれた直後に、先行きが不安な展開となった今回のエピソード。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。