松本穂香、コンプレックスは「ほとんどすべて」 悔しさに泣いたオーディションの思い出

東京ウォーカー(全国版)

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若手女優の松本穂香が、池袋を舞台にした青春ファンタジーアニメ映画『君は彼方』(11月27日(金)公開)で、アニメ映画初の主演を飾る。松本演じる主人公は、一見明るく活発だが自分に自信がなく、諦めがちな女子高生・澪(みお)。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」への出演後、ここ2年で本作含め6作もの映画で主演を任され、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍する松本だが、意外にも澪との共通点は多く、コンプレックスは「ほとんどすべて」、「壁があると、最初は諦めてしまいたくなる」という。

主人公の澪を感情豊かに演じた松本穂香撮影=友野雄


声の演技は「別人を演じているという感覚がある」

――アニメ映画『きみと、波にのれたら』(2019年公開)に続き、2度目の声の演技への挑戦となりましたが、いかがでしたか。

松本穂香が演じる主人公の澪と、瀬戸利樹が演じる幼馴染の新(あらた)(C)「君は彼方」製作委員会


【松本穂香】思いきり演じられる楽しさがありました。普段の映画やドラマのお芝居では、“ナチュラル”みたいなものが良しとされているかと思うのですが、アニメは実写に比べて(人物の)表情だけでは足りなかったりするので、声の演技で感情を出すとちょうどよくなるんです。その点は舞台に近いのかなと思います。

ただ、今回は前回とは監督も異なるので、また違う演出を受けました。収録前に “立ち”で動きをつけたリハーサルがあり、(瀬名快伸)監督が1対1で私の相手役をやってくださったんです。(声の演技なのに、実写の)普段のお芝居と同じようにやるというのには驚きましたし、声の出し方もこれまでと変えてみたりして、新鮮な経験がたくさんできました。

【写真】活躍を続ける松本穂香の撮りおろしカット9枚撮影=友野雄


――後半にいくにつれて、感情を爆発させるようなシーンもありましたが、難しさは感じましたか。

【松本穂香】監督の作品にかける熱意を伝えてくださった上での収録だったので、私も生半可な気持ちではできないなと思い、期待に応えられるよう全力でやらせていただきました。監督が途中で「画なんて気にしなくていいんだよ!」と画(映像)を切ったときなどは、周りの方々もすごい(緊迫した)空気だったんじゃないかなと思います(笑)。どのシーンも何回も録っていますが、監督は基本的にNGという言い方はしないので、「それもいいね、じゃあ違う方向でもやってみようか」と、一緒に良いところを探りながら作ってくださいました。

――最近ではラジオのお仕事もされていますが、声のお仕事のやりがいについて教えてください。

【松本穂香】ナレーションのお仕事をいただいたり、ラジオを始めさせていただいたりと、声のお仕事がすごく増えてきていて、褒めていただく機会も増えました。普段のお芝居はどうしても見た目は自分だし、役柄も“等身大”ということが多いのですが、声のお仕事では「全く別人を演じている」という感覚があって、そこがすごく楽しいなと思っています。またいろいろな作品に出演させていただけたらうれしいです。

「自分の口から言葉を伝える大切さ」を忘れないでほしい

――映画の中で、個人的に心に残ったシーンはありますか。

【松本穂香】遅刻しそうになって走っていたり、幼なじみ3人が電車に揺られていたりという、日常のシーンが好きです。監督が「こういう作品は日常がすごく大事」と仰っていて、私もこの作品を通して初めて、「日常がしっかり描けているからこそ最後がより盛り上がり、尊いものになっていく」ということを発見できました。

小倉唯が演じる共通の親友・円佳と3人で電車に揺られる(C)「君は彼方」製作委員会


――本作では池袋が舞台になっていて、実在のスポットを背景にした印象的なシーンもありました。池袋という街への印象や思い出があれば教えてください。

【松本穂香】上京してきてからいろいろな映画やドラマを観るようになり、「池袋ウエストゲートパーク」が好きになって池袋に行ってみたら、すごく特別な場所に思えたんです。作品の持つ力はすごいなと改めて感じました。この映画を観た誰かにとっても、もしかしたら池袋がそういう場所になるかもしれないし、それってすごいことだなと思います。

マンガとアニメーションの地・豊島区、池袋の全面バックアップで描かれる舞台(C)「君は彼方」製作委員会


――今、主人公たちと同年代の高校生に向けたメッセージはありますか。

【松本穂香】この映画の話をするときにはどうしても、「伝えることが大切だと思います」と言ってしまっています。今はスマホなどでポチポチっと簡単に気持ちを伝えられる時代ではありますが、相手を目の前にして自分の口から言葉を伝える大切さというのはあると思うので、(自分の気持ちは)勇気を出して(直接)伝えてほしいです。おそらく男性の方に多い気がするのですが、まずは誰かを誘ってこの映画を観にいってほしいですね(笑)。

同じ事務所の子が残る中、その場で帰されたオーディション

――松本さんの演じた主人公の澪は、努力するのが苦手で、諦めることが癖になっている女の子でした。夢を追いかけて上京した松本さんの目には、澪の姿はどう映りましたか。

【松本穂香】私も自分にあまり自信がなくて、壁があると最初は「できないよ」と諦めてしまいたくなるタイプなので、近しいところ、共通しているところは多いのかなと思います。澪のネガティブなところは、きっと誰の中にもあるものなんだろうなと思いながら演じていました。

主人公の澪を感情豊かに演じた松本穂香撮影=友野雄


――これまでの経験の中で、澪のように挫けそうになったというエピソードはありますか。

【松本穂香】同じ事務所の女の子も受けに来ていたオーディションで、その子は残ったけど私はその場で帰されてしまったというときは、やっぱり泣きましたね。悔しくて。でもそこで終わりじゃないので、母親に話を聞いてもらったりして、次に向けて気持ちを切り替えていったんじゃないかなと思います。

――デビューから5年が経ちましたが、これまでの役者人生の中で、これがターニングポイントだったなと思う作品はありますか。

【松本穂香】たくさんの方に知っていただいたきっかけとして、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」はすごく大きかったなと思います。今もいろいろな場所で言っていただく機会があるので、それだけ愛される作品に出られたということは、(その後のお仕事に関わる)大きなきっかけになっていると思います。

主人公の澪を感情豊かに演じた松本穂香撮影=友野雄


芝居は「その人そのもの」。選ばれ続ける理由は「人と人との繋がり」

――昨年から今年にかけ、主演された映画作品4作が立て続けに公開されました。映画の主演という特別な存在に選ばれ続ける理由はなんだと思われますか。

【松本穂香】運がいいんだなというのもありますが、ご縁によるものが大きいと思っています。最初に主演に選んでいただいた映画『おいしい家族』は、監督のふくだももこさんにとっても初の長編映画だったのですが、2作目も私の主演で撮ってくださいました。私のお芝居がどうこうというより、結局は人と人との繋がりなんだなというのはすごく感じますね。

主人公の澪を感情豊かに演じた松本穂香撮影=友野雄


――「また一緒に仕事がしたい」と思ってもらうために、意識していることはありますか。

【松本穂香】自分では理解が追い付かない演出をされても、「それはできないです」とは言わず、「やってみます」というスタイルでいるようにしています。監督のことを一番に信じてやらなきゃいけないなと思っていますし、どっぷり監督の世界に浸かった方が、(作品も)きっと面白いものになるのかなと思っています。

――女優としてここがコンプレックスというか、自分にはまだ足りていないんじゃないかなと思うところはありますか。

【松本穂香】ほとんど(すべて)それだと思います。少しでも不安な要素があったりすると全然動けなくなってしまいますし、お芝居(の現場)で憧れている方とご一緒させてもらったりすると、ガチガチに緊張してしまいます。「ずっと憧れていたので、今すごく緊張しています」と口に出してみたり、いろいろな工夫をして、なんとか頑張っています。

――同世代の中で、「ライバルかも」と意識されている方がいれば教えてください。

【松本穂香】「ライバルなんて滅相もない」という感覚です。同年代の人はみなさん上手で素敵な方ばかりで、私よりもっと上のところにいるという風に感じています。共演させていただいた方や、仲良くさせてもらっている奈緒さんとかもそうですし、(芝居を見ると)「何してるんだろう自分」みたいに、すごく刺激をもらっています。

主人公の澪を感情豊かに演じた松本穂香撮影=友野雄


――今、ラジオ番組でゲストの方への取材という体験をされていると思います。自分と同じ俳優の方を取材する中で改めて思った、俳優というお仕事の面白さはなんですか。

【松本穂香】やっぱり、お芝居というものは結局人柄で、その人そのものなんだなと感じています。ベテランで今も活躍されている方は、素敵な方ばかりなので。最近(のゲストの中)でいえば、遠藤憲一さんや石坂浩二さん、玉木宏さんは、私が今悩んでいることはすべて経験し尽くされている方たちで、「大丈夫だよ」「今でも反省するよ」など、すごく温かい言葉をかけてくださいましたし、いろいろと吸収させていただきました。

――「『あの人と仕事がしたい』と言っていたら本当に叶ったことがある」というお話をうかがいました。今後やりたいお仕事はなんですか。

【松本穂香】たくさんのお仕事をやらせていただいているのですが、(それ以外では)たまにある“本人役”をやってみたいです。自分が周りからどういう風に見られているかというのがわかると思うので(笑)。あとは、ただただ日常を描いているような、ほのぼのとした作品にも出てみたいですね。

取材・文=今井優佳

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