しょご先生に聞いた日本の「性教育」のどこがダメ?
東京ウォーカー(全国版)
オーストラリア在住で、YouTubeで性教育について発信を続けているしょご先生。2月から
ニコニコチャンネル「しょご先生 日本一わかりやすいリアル性教育」
を開設している。そんなしょご先生には、日本の性教育がどう見えているのか。問題点や疑問点、改善点について聞いた。

日本は性教育が遅れていると言われて久しい。昭和の時代から、その状況はあまり変わっていない。もちろん、数十年前に比べれば状況は変わっているが、それでも性の知識を教えてくれるのは学校や親よりも、不確かなネットの情報やAVだったりするのが現状だ。
「日本で性の話をする機会は少しずつですが増えてきていると思います。ですが、大抵の場合、女性が発信者になっていて、女性向けの話が主流です。本来、性については男性とか女性とか関係なく、同じ立ち位置で話す必要があります。現状、女性が発信する性の話は、どこかに『男性の理解がない』『男性はわかっていない』というニュアンスが含まれていることもあって、男性がその話の場に入りにくい印象があります。もちろん、男女に関係なく発信しているケースもあると思いますが、YouTubeやSNS上で見ると少ない気がします」(しょご先生)
もう1つ気になるのが、はっきりした答えを導かないケース。個人差があったり、ケースバイケースという問題もあるが、「質問した人は“答え”が欲しいわけだから、『人によって~』とか、『いろいろな場合がある』などといった回答は、“答え”になっていないと思うんです。
例えば、以前『素股でも妊娠しますか?』という質問がありました。これに対して、答えはするか、しないか。もちろん、やり方によりますが、『場合による』では“答え”としては不十分。『妊娠する』という“断定”が答え。そして、『ただし…』と付け加えて注意点や妊娠しないやり方、どうしたら妊娠する可能性があるかをきちんと伝えるべき。回答そのものが、『場合による』では、質問した人は混乱してしまいます。それは性教育でもないし、問題解決にもなっていない。そんな議論をする場さえないのは、日本の性教育の問題点ともいえます」(しょご先生)

正しい知識を得られていない状況は、昔ながらの男性優位の性差別にも由来しているという。「本当に考えられないですが、例えば女性が嫌がることを『嫌よ嫌よも好きのうち』というように勝手な解釈をしたり、避妊についても“安全日”だとか、外に出すことが避妊の1つのように思われているフシがいまだにあります」としょご先生。
昔の日本では女性の意見が男性と同じようには扱われていなかったり、日本では海外の人のようにYES・NOをはっきりいわない風潮があったり、性についてはよりその傾向が強い。こうした間違った認識は、きちんとした性教育の場で得るものではなく、昔ならAVや漫画などが情報源だったりする。
そして、さらに厄介なのは、その認識のまま大人になっても、正しい知識を新たに得る機会もなく、自分の知っていることを否定されたがらないので、アップデートされることがないという。「海外では、思ったことははっきり言うのが普通ですし、女性がNOと言っているのに性行為に及んだ場合、犯罪となるのも当然。日本のように『同意の上だったと思った』などという言い訳は通用しません」(しょご先生)

日本とオーストラリアの性教育で大きく異なる点は保護者の関与だ。日本では親が子供に教えることではないという風潮がある。性=恥ずかしい、もしくはエロティックなことという認識があり、親が子供に話すべき話題ではないと思っている家庭も未だに多い。
子供が小さいと、「小さい子に聞かせるべきではない」となり、思春期になるとそもそも親子の会話が減る中で、あえて性の話はしない。そうしているうちに、親子で性の話をする機会のないまま子供は成人してしまう。「オーストラリアでは、保護者がする性教育が基盤になっていて、学校は補助的な役割。さらに、例えばスポーツのクラブチームなどのコミュニティでも性について話をします」としょご先生。性教育に関わる人がそもそも違う現状がある。
「オーストラリアはもちろん、海外だと子供の前でも夫婦がハグやキスをするのは当たり前。こうしたコミュニケーションは恥ずかしいことではないし、夫婦、愛し合う者同士として当然というのを、子供は頭で理解するのではなく、日常生活の中で体験しています。いきなり性行為や避妊の話をするのではなく、こうしたコミュニケーションやスキンシップから親子の性教育が始まっているのです」(しょご先生)
また、日本では性教育は学校に頼りがちだが、実は学校で教えている内容は十分ではない。日本の学校では保健体育の時間の限られた時間の中で、あまり具体的な話をしていないのが現状だ。しょご先生によれば、オーストラリアでは普通の授業の中でも性について話題にすることもあるという。
「僕は数学を教えていますが、例題を出すときにお父さんとお母さんのいる家庭と、お父さんが2人いる家庭という設定にしたり。日常的に当たり前のこととして話の中にあれば、あえて意識をすることはなくなります」(しょご先生)

日本と海外の差に肩を落としてもしょうがない。今からでも、いつからでも正しい知識を得られる場所を提供したい。その思いが今日のしょご先生の活動につながっている。しょご先生は、大人になってからでも気軽に正しい知識をアップデートしてもらえるように、YouTubeやニコニコ動画ではエンタメ性やキャラをうまく活用して、“聞いてもらえる”工夫もしてる。
また、女性が男性のこと、男性が女性のことを話しても、共感されにくいので、基本的には男性のことしか発信していない。しょご先生いわく、「異性に言われると、どこか責められていたり、『どうせ体験していないのに本当には理解できない』と思われたりします。具体的な話ができるのは同姓の強み。そして、発信の場をYouTubeにすることで異性はもとより、誰の目も気にせず、自分の好きなタイミングで見ることができるのもメリットだと思います」(しょご先生)
ネットやSNSでは、とかくコメント欄での発言が匿名であることが問題になることが多い。だが、性の問題についてはこの匿名に意味がある。一人で抱えていた不安や疑問、誰に相談していいかわからなかったことを匿名だからこそ聞くことができる。「YouTubeを通して、いつでも聞いて欲しいし、聞かれたことにはきちんと断言した答えを提供します。知識もアップデートして欲しいですね」(しょご先生)
ニコニコチャンネル「しょご先生 日本一わかりやすいリアル性教育」
では月額550円で、月2回の生配信を行っている。チャンネル会員になると、会員限定パートを含む生放送全編を見ることができる。
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
文=岡部礼子
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